帝都へ
今日は三ヶ月に渡る王都での捜索に別れを告げ、帝都に向かう日だ。
毎日単調な作業を繰り返し、最後は宿のベッドでため息を吐く。そんな三ヶ月は灰色だったと言えるだろう。
この行動が無駄ではないと知っていながら結果が伴わない虚無感は徐々に俺の精神を蝕んでいった。
だからといって、死霊術師の居場所を掴むことに諦めがつくわけがなかった。俺の最愛の人たちが死してなお利用されたことに憤慨するのは当然だ。
とはいえやはり苦しいのも事実。
辞めるわけにはいかない、辞めたくてもやめられない。そんな思いは自らの首を絞めるばかり。息苦しい日々だった。
それも今日まで。
帝都でどれだけの成果を得られるか、それは行ってみなければわからない。
しかし、新天地に赴くこの高揚感はなんとも言い難い。
早々に身支度と荷物整理を済ませ、宿の外へ。
長く滞在し続けたこの宿ともお別れだ。少し寂しいが仕方ない。それにこれからも何度か世話になるだろう。
そんな思いを振り切って馬車乗り場まで向かう。
今日は寝覚めも良かった。浴びる朝日が気持ちいい。
「帝都ガラニス。そして死霊術師。待ってろよ」
そんな独り言を放つ俺の横にはコユキが居た。コユキの表情はよく分からないものになっている。
嬉しいのか、悲しいのか。楽しいのか、退屈なのか。それともその全てか。とにかくよく分からない。
「どうしたんだ、コユキ」
俺が聞くと、コユキはゆっくりと視線をこちらに向けた。
そして同じくゆっくりと口を開く。
「新たな地へ行ける事に文句はない。むしろ喜んでおる。だがな」
そこで言葉を切り、一度ため息を吐く。
そして続けた。
「三ヶ月馬車の上?先が思いやられる・・・」
もう一度ため息。
その言葉を聞き合点がいった。
コユキは三ヶ月、それどころか一ヶ月程度で王都に飽きていた。だから帝都に行くが楽しみで仕方ない。
だがコユキはとにかく楽しいことを好み、退屈を嫌う。
帝都に向かうために三ヶ月の旅をすることに不満を抱いているのだろう。きっと退屈になると、そう考えているのだ。
つまり、今のコユキには哀楽が同居している状態と言っていいだろう。微妙な表情もそれによるものだったのか。
「そんな顔するな」
そんなコユキに俺は声をかけた。
「お前、俺と居れば退屈が苦じゃないんだろ?」
「それとこれとは違う!苦ではないが、楽しくないものは楽しくないのだ!」
逆効果だったようだ。哀楽に怒が加わってしまった。
「だが、お前について行くと決めたからの・・・。仕方ない・・・」
肩を落とすコユキ。
そんな会話を繰り広げているうちに、馬車乗り場へと到着した。
「きっと退屈しないと思うぞ。俺もこんな長い旅路は初めてだ、でも楽しみでワクワクしてる。そんな場合じゃない、ってのは分かってるんだけどな」
サンタナ領を出た時はこんな気持ちは無かった。
澱んだ暗い気持ちを抱えていたはずだ。今だってそれは変わらない。俺を突き動かす原動力は復讐心だ。
それでも楽しみと思える。そんな余裕、無かったはずなのに。
「ならば妾を退屈させるでないぞ、アルマ」
偉そうな態度をとるコユキと共に、俺は馬車に乗り込んだ。




