進展
死霊術師捜索に進展があったのは、騎士団と協力を始めてから三ヶ月が経過した時だった。
俺とコユキが泊まる宿にクレシオがやって来たのだ。
「久しぶりだね」
本当に久しぶりに会ったクレシオは、神都にいた時と比べて清潔感が増していた。逆に疲労は溜まりまくってるっぽいな。
俺たちの部屋を訪れたクレシオは、俺の顔を見るや否や本題に入った。
「君たちに、帝都へ向かってもらいたい」
「いきなりだな。ギルダは来てないのか」
「団長は本部を離れられない。多忙を極めているんだ。だから私が言伝を頼まれた」
「やっと他の場所に行けるのか!?よし行こう!」
「待て待て待て」
早速出発しようとするコユキを引き止め、クレシオの話を聞くよう促す。
その様子をクレシオは朗らかに眺めていた。
「まったく、君たちと闘技大会であれこれしたのが遠い昔のようだ」
「そうだな」
神都に赴き、コユキとクレシオに出会い。
クレシオの協力を得て、エル含む騎士団員達を救出。
そんな思い出は、最近の味気ない日々によって薄まりつつあった。魔物狩りと捜索を並行して行い、宿に戻って次の日を迎える。自分達が標的に近づいているか、それが気がかりで仕方がなかった。
だが、それも今日まで。
こうしてギルダからの指示があったのだから、少しは標的に近づけるとそう思いたい。
「で、どうして帝都なんだ?」
「王都から帝都までは三ヶ月。仮に死霊術師が帝都に向かったとあらば、既に到着している頃だ」
「神都に行かなくても良いのか?」
話を俺の傍で聞いていたコユキが質問する。
たしかにそれならば最も近い神都に行くよう指示を出さないことに多少違和感を覚える。
「神都は比較的友好的な場所だから。私が元騎士団と知ってもデュオクス様が迎え入れてくれたのもその証だ」
「それでいくと、帝都とは仲が良くないと?」
「その通り。だからこそ君に頼みたい」
どういう経緯で仲が悪くなったのか、というのは置いておこう。今回のこととは無関係だし、情勢に関与して面倒に巻き込まれるのはごめん被りたい。
「神都には誰が?」
「エルリアルと他数人。一ヶ月前に既に出発した」
エルの姿を見かけないと思っていたらそういうことか。
「アルマは本部を訪れる度、エルリアルを探していたからのう」
コユキがにやにやとこちらを見てくる。
ムカつくな。
「分かった。いつ出発すればいい」
「明日の早朝に頼みたい」
なら、早急に準備を済ませなければ。
「ああ、それと。知らされてるだろうけど助っ人が一人居るから。帝都で合流してくれ」
「すでに帝都にいるのか?」
「斥候としてね。ただ、帝都内部では派手な動きはできないからあくまで表面的な情報しか得られてないだろう。深い部分の情報を君が手に入れることを期待している」
助っ人も騎士団員だろうからな。一人だったら旅行客だとか理由付けして滞在できるだろうが、逆に言えば滞在することが精一杯だろう。
「それでは、私はこれで」
「なんか飲んでけよ」
「仕事の合間を縫ってきたんだ。早く戻らないと」
苦労してんな、クレシオ。
そんなクレシオに伝言を頼むほど忙しいギルダは正気を保てているのだろうか。
クレシオは俺たちに軽く会釈をして部屋を立ち去った。
「あいつもあんなに頑張ってんだから、俺たちも頑張らないとな」
「妾がいれば百人力だ。安心して頼れ」
「そうだな。ピンチになったらまた助けてくれ」
それにしても初めての帝都。
観光目的ではないが、心が躍るな。




