燻る小さな疑念
「『ヒュルング』」
刀身に風を纏わせ、剣を薙ぎ払う。
前方に刃の如き暴風が吹き荒れ、オーク達を八つ裂きにする。吹き出した血が巻き上げられ、視界を赤く染めた。
むせかえるような血の匂い。
赤い煙幕を前に、俺は剣を納める。
「アルマ、下がれ」
そんな俺に背後から声がかけられる。
その言葉に返事をする間も無く、血の霧の中から一体のオークが突貫してきた。
状況を理解した俺は素早く後退する。それと同時にあたりに冷気が立ち込めた。
たちまちオークの肉体に霜が降り、その動きを鈍くする。やがて全身を霜が襲い、そしてオークは絶命した。
「助かった、コユキ」
「まったく。お前は動きが遅い。後退するのが数秒遅ければその体に傷を負うところだったのだぞ?」
行動が遅いとコユキに怒られてしまった。
確かに反省すべきだな。オークを全て殺したと思い込んでいた。これからは慢心に気をつけよう。
死霊術師の捜索が始まって、早くも一ヶ月。その間、有力な情報は得られていない。
俺も魔物を殺して回りながら、王都郊外を探索しているが成果は得られていない。アンデッドすら出てこない。
「のう、本当に王都におるのか?」
コユキから鋭い質問が飛んでくる。
まだ一ヶ月、されど一ヶ月。意識しなければあっという間に過ぎ去る時間だが、一つの目的のために費やす時間としてはそれなりだ。
まあ、死霊術師は禁忌に手を出した者。そんな者がそう簡単にバレるような所を拠点にしないというのは当たり前だが、俺だって全霊をかけて奔走している。
にも関わらず尻尾を捕まえるどころか、尻尾を見る事すら出来ていない。
王都にいないという可能性も十分に考えられるだろう。
「お前は思っていることが顔に出やすいのう」
思考を続けていると、コユキが生意気な笑みを浮かべて俺を見つめてきた。
「そうだな。俺も、もしかしたらという気持ちがある。だがギルダから指示が出ない以上、俺たちはここから離れることはできない」
ネガティブに考えれば一ヶ月も経った。
しかし、ポジティブに考えればまだ一ヶ月。これからの調査で新たな情報を得られることもあるかもしれない。焦ることはない、まだまだこれからだ。
「コユキは暇なのか?」
「ん?妾はお前の仲間になった以上お前の判断に従うつもりだ。それにそこまで退屈してはおらん」
「意外だな、お前なら駄々をこねると思ったが」
「妾をなんだと思っておる・・・・・。お前といると不思議と退屈も苦ではないのだ。それだけお前に愛着が湧いたのだろうな。妾も意外だ」
コユキは恥ずかしげもなくそんなことを言った。目を細め、薄く笑みを浮かべる。
そこに子供らしさはなく、大人びた雰囲気を醸し出していた。
「そうか。なら今日も付き合えよ?」
「うむ、仕方がないの!」
そんなやりとりの後、俺たちは捜索を始めた。
そして。
結局、今日もめぼしい成果は得られなかった。
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拙い作品ですが、今後ともよろしくお願いします




