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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
五章 王都騎士団
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決闘

 騎士団本部、その裏手にある鍛錬場。

 ノアに決闘を申し込まれた俺は、あれよあれよという間にそこに連れてこられた。


「アルマさん、これを」


 ノアは木剣を投げて渡す。

 それを片手で受け取ると、ノアは俺から距離を取った。


「アルー、がんばってー」

「アルマよ、妾を退屈させるなよ」


 外野から声をかけられる。

 それに答えることなく木剣を眺める。俺は未だにこの状況を理解しきっていない。

 幼馴染の部下とはいえ、初対面。そんな男に決闘を申し込まれる。ノアが騎士でもなければ、俺は彼を面倒な奴と認識してその場から離れただろう。

 何が狙いで決闘を申し込んだのか、聞いてみるか。


「ノア、なんで決闘を?」

「エルリアル様の言ったとおり、貴方に興味があります」

「なら話し合いで十分だろ」

「剣は口ほどにものを言う、というやつです」


 剣ではなく目だ。


 だが納得した。

 俺も剣を扱う身。彼の言うことには理解が及ぶ。

 剣を交えれば相手の力量や性格が分かる。それは俺も知っている。


「審判はエルリアル様、お願いできますか?」

「まっかせて!」


 そのやりとりに何も言わず俺は構える。それに合わせてノアも構えた。


「始め!」


 エルの声に、俺とノアは同時に距離を詰める。

 俺の間合いにノアは入っていない。

 しかし、ノアは違った。俺の間合いの外から彼は突きを繰り出した。


「ぐっ!」


 思わず声が漏れる。

 咄嗟に防ぐも、ノアの剣は止まらない。

 彼は首、みぞおち、脇腹、脚と攻撃をバラつかせることで防御を誘発させる。一つ防げば次が繰り出され、それを防いでもまた次が来る。加えて繰り出される全てが洗練されている。

 俺は防戦一方となり、一向に攻撃に転ずることができない。


 今まで経験したことがなかった戦闘スタイルだ。


 だが、余裕はあった。

 ダグラスの剛を極めた剣や、ギルダの強力ながら繊細な剣技や、ディールの一切の油断も許されない刃と比較すれば、ノアの剣は見劣りしてしまう。


 この三人の中でノアと近いのは、手数が多いと言う意味でディールだ。しかし、明らかな違いがある。


 それは速さ。ディールと戦った時、俺は致命傷に至らない攻撃を防がなかった。全てを防ごうとすればこちらの防御が一瞬にして瓦解するからだ。

 対して、ノアの攻撃は全て防ぐので手一杯。それほどの速さ。逆に言えばそれくらい遅い。

 それが決定的で致命的な違い。

 

 今は防御に徹するしかないが、攻撃を逃れる手はある。最も簡単なものは間合いから出ること。

 だが、俺はその方法を取らない。ディールのことを思い返すと同時に一つ試したいことが出来たからだ。


 突きを防ぎながらその時を待つ。


 そしてついに繰り出された、体ではなく剣を狙った攻撃。目的は俺の剣を弾くこと。


 それをわざと雑に防ぐことで、俺の手から剣が離れる。

 木剣が宙を舞う。

 その光景は誰が見ても俺の敗北を示していた。ノア自身の顔にも、自らの勝利を確信する表情が見て取れた。


 そこで俺は跳んだ。

 中空で体を逆さにし、視界に木剣を収める。

 俺はオーバーヘッドの形をとり、剣を足で捉えた。


 エルの驚く声が聞こえる。視界の端にノアの驚愕した顔が見える。コユキの様子は分からないが、おそらく平然と見ているだろう。

 

 捉えた剣を蹴り放つ。


 だが、


「あ!」


 俺は声を出した。それは失敗を感じ取ったが故に出た声。

 明らかに剣の重心を捉えられていない。

 剣は前には飛ばず、少し右にそれて落下した。


 俺が地面に着地したと同時に結果が告げられる。


「勝者!ノア・エイリン!」


 正当な判定だ。

 剣を蹴る、そこまではよかった。だがそんなこの方法を取るならば勝負を決める必要がある。

 そこで失敗しては、後の俺は隙だらけ。剣、槍、矢、魔法ぶっ込み放題。絶好の的。

 敗北は当然だ。


 しかし、自分で挑戦してみて再認識する。

 ディールのあの身のこなしは凡人には到底不可能だ。


 もちろん、今回の経験を糧に何度も修練すれば実戦で使うことができるだろう。だが、おそらくディールはあれを即興でやってのけた。化け物だ。

 分かっていたが、やはり『申し子』スキルは優秀が過ぎる。


 決闘の内容を思い返していると、エルが俺の元へ駆け寄ってきた。その後ろをコユキが着いてくる。

 エルは興奮気味に話し始め、それを呆れた様子でコユキが聞いている。

 そんなエルに俺は何をしようとしたのかを説明する。

 俺たち三人の輪に、ノアは加わらなかった。


 彼は結果に納得がいかない、そんな顔をしていた。

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