突然の申し込み
ユウリとの再会からさらに一週間。
ほとぼりが完全に覚めたわけでは無いが、それなりに落ち着いてきた。
そんなおりクレシオが俺とエルと会わせると言った。エルの元に溜まった仕事もひと段落したのだろう。
俺はそれを断るはずもなく、騎士団本部へ足を向けた。
「なあ、なんでお前も着いてくるんだ?」
「妾が居ては不満か?」
それにコユキが着いてきた。
「不満とかじゃなくてな、お前がこういうのに着いてくるとは思わなかっただけだ」
俺とエルはともかく、コユキとエルが会ってもコユキには楽しいことは無いと思うのだが。
「妾もエルリアルとやらが気になる。それだけのことだ。それに王都の街には飽きてきたからの」
ふうん、と適当に相槌を打っておいた。
そんな会話をしていると、エルのいる部屋へ到着した。
扉を開け、エルに挨拶をする。
「エル。おはよ・・・」
その瞬間、俺の体は一気に後退した。
コユキに服の端を掴まれ、そのまま後ろに引っ張られたのだ。
「コユキ!危ないだろ!」
なんとか転ばないように体勢を保ち、コユキに注意する。
しかし、コユキの視線は俺ではなく足元に向かっていた。
コユキの視線を追うと、そこにはエルが倒れていた。
「エル、何してんだ?」
「アルを驚かせようと思ったんだけど・・・ぐぅ」
なぜかエルはコユキを睨みつけた。コユキもそれに応じるように見下すような視線を送る。
「なあエル、入っていいか?」
床に突っ伏すエルに部屋に入っていいか聞くと、彼女は慌てて立ち上がった。
「うん!どうぞ!」
返答をもらい、俺とコユキは部屋へ入る。
中は一人用にしては大きく豪華なデスクと、いくつかの本棚が置かれていた。そしてエル以外にもう一人、金髪の男が部屋の隅に立っていた。
「なあ、エル。この人は?」
「まあまあ、座って座って」
「こやつ、話を聞かんな」
促されるまま、エルが持ち出した椅子の一つに座る。コユキはもう一つに座らず、座った俺の膝の上に乗った。
「む!ねえアル。さっきから思ってたけどその子誰なのさ!」
「こいつは仲間だ。お前を元に戻すのを手伝ってくれたんだ」
「それはありがとう!でもそこに乗る必要はないんじゃない!?」
「それは妾の勝手だ。アルマが何も言わんのだから良いであろう?」
「良くないよ!」
エルとコユキは相性が悪いみたいだ。
エルは不満そうにもう一つあった椅子に座った。
「まあいいや。とりあえずアル、私を助けてくれてありがとう。そしてごめんなさい」
落ち着きを瞬時に取り戻したエルは、俺に向かって頭を下げた。
「謝罪までする必要は無いと思うけど」
「ううん。アルじゃない人をアルだと思ってた。それはアルに謝らなきゃいけないと思った」
見ない間に随分と律儀になったというか、成長したな。
俺の記憶にあるエルは色んな意味で子供っぽい女の子だったのに。まあ、今でも子供っぽいところは残ってるけど。
「それでね、アル。あたしが居なくなった後の話、聞かせて?」
切り替えたエルはそうお願いしてきた。
「もちろん、俺にもエルの話を聞かせてくれ」
「うん!」
それから約三時間、俺とエルは喋り続けた。
俺からはサンタナ領での事、エルが居なくなった後のダグラスとスミシーの様子や、俺が積んだ鍛錬などについて話した。
エルからは騎士団での話。
入団して三年目で闘技大会を優勝するという快挙を成し遂げ、二つ名を獲得した事などを聞かせてもらった。
コユキは俺たちの話に相槌を打ち続けていた。
「あたしが居なくなってもパパとママは元気だったんだ。それなら良かった」
「エルが二つ名・・・やっぱり凄いな」
俺とエルの話はひと段落する。
そこで俺はエルに一つ質問した。
「エル、この人は誰なんだ?」
俺とエルが話している間、ずっと立ち尽くしていた男について聞く。
「この子はあたしの部下。去年入団したばっかりなんだけど、凄く強いよ」
「初めまして、ノア・エイリンです」
エルの言葉に続き、ノアは堅苦しい挨拶をする。
「アルマ・エンブリットだ。よろしく」
「そうだ!ノア君、アルを気にしてたよね?これを機に話したら?」
俺を気にしてた?
どういうことだ。面識は無いはずだけど。
「では、アルマ様」
「呼び捨てでいい」
「アルマ・・・さん、僕と決闘しましょう」
突然の決闘の申し込みに俺は返す言葉を失ってしまった。




