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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
四章 建都記念祭
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二度目の祭

 偽物との戦闘から約二時間後、気絶していた騎士団の面々は意識を取り戻した。とはいっても、全員が目覚めたわけではない。未だに目を覚まさない者もいる。エルもその一人だ。


「本当にすまなかった!」


 そして現在、俺は閑古鳥が鳴く闘技場でギルダの謝罪を受けている。


「いや、大会に乱入したのは俺だ。あんたが記憶をいじられてたとか関係なく、俺は悪事を働いたんだから、それをあんたが止めようとするのは当たり前のことだろ。謝られるようなことじゃない」


 ギルダは、騎士団としてふさわしい仕事をしたのだ。そのことについて謝られても、俺も反応に困ってしまう。


「ああ、確かにそうかも知れない。だが謝らなければ気が済まんのだ。君を傷つけたこと、なにより団員揃って誰とも知らぬ輩にいいように利用されたことを」


 それはそうだな。

 様子を見るに、記憶改竄の餌食になったのはスキルのおかげで事なきを得たクレシオを除く、全ての団員。これは騎士団側の責任として今後問われることになるだろう。


「いやいや、団長。貴方や他のメンバーには記憶改竄に対抗する術がなかった。それでは仕方がありません」


 クレシアはギルダや他の団員をフォローした。


 確かにそれは間違ってはいないのだが、民衆は納得しないだろう。世間で騎士団に対する信頼が下落するのは必然だ。それは俺には関係の無い事、今後騎士団が直面すべき壁だ。


「クレシオ、今回の件が解決したのはお前や、この子供たちのおかげなのだろう?本当にありがとう」


 ギルダは深々と頭を下げた。

 子供たちというのは俺たちコユキのことだろうか。前世の記憶を持つ俺や、人間より遥かに生きているコユキからすれば少しむず痒い。

 と思っていたが、コユキは無反応だ。それよりもなんだか落ち着かない様子。


「アルマ、コユキ。何度も言うが本当にありがとう。ここの後片付けは俺たち騎士団で済ませる。倒れている団員達を然るべき場所に運んでやらねばならないからな」

「だったら、手伝うぞ」

「それには及ばん。君たちの手を煩わせるわけにはいかない」


 団長としての、せめてものプライドとかそういうやつだろうか。

 とは言っても、エルのことが心配だしな。俺も手伝ってやりたいが・・・。


「アルマ君、彼女の事は私に任せてくれ」


 俺の考えをクレシオは読み取ったようだ。

 クレシオは俺の肩を掴み、真っ直ぐに俺を見つめてきた。


「分かった分かった。分かったからそれやめろ」


 直視され続けるのは流石にキツい。


 俺の返答に満足そうに頷いたクレシオは走り出した。

 クレシオを目で追うと、先にいたのは倒れているエル。

 それを見て、俺も駆け寄ろうとしたがその直前で立ち止まった。


「クレシオが任せろと言ったのだ。ここはじっとしておれ」


 俺のその様子を見たコユキは諭すように言った。


「それよりも!記念祭を回ろうぞ!」


 いきなり興奮したように声を出すコユキ。


「いや、そんな場合か?」

「何を言う!妾がここに来たのは記念祭を堪能するため、それを忘れたわけではあるまいな!」


 とは言っても今は夕暮れ時。

 記念祭っていつまでやってるんだ?


「ほれ、早く行かなければ終わってしまう!行くぞ!」


 俺はコユキに連れられ、闘技場を後にした。


* * * * *


「この肉は美味いの!アルマも食うか?」

「いや、お前が食え。俺はいらん」

「ふむ、楽しまなければ損だぞ?」


 コユキは露天に並ぶ商品、主に食べ物を片っ端から口にていた。


 俺自身、この祭は二度目だが新鮮な感じで露天を回っている。十年前の記憶じゃ補完出来ない部分もあるものだ。


 楽しむコユキを他所に、俺は行き交う人々を観察する。

 やはり、人間ばかり。コユキのような獣人やエルフは存在しないのだろうか。


 コユキに質問しようとするが、その顔を見てやめた。並ぶ露天に目移りばかりして、それどころでは無さそうだった。

 これについてはまた今度だな。


「それにしても、なんでディールに勝てたんだ?」


 コユキの後を追いながら、一人で呟く。


 ニエ村の時はディールには勝てなかった。

 なんとか拳を入れる事は出来たが、それは剣で対応しきるのは無理だったからやむを得ず拳を使ったまでの事。

 ニエ村の事からそれほど時間は経っていないはず。それにその間俺は特に鍛錬らしいものはしていない。


 加えて確かにあのディールは、偽物の言っていた通りニエ村の時よりも強かった、と思う。


 となるとおそらく、俺がディールに勝てた要因はスキル。

 『戦闘能力向上』のおかげか?

 ニエ村から王都、神都、再び王都と辿った道のりで何度かこのスキルが発動しているのは確認した。


 だとすれば、俺が強くなったのはこのスキルのおかげと見ていいだろう。

 今までこのスキルが役に立っている実感が無かったが、ようやく有用性を身をもって理解出来た。


 俺は自分の両手を眺め、握り拳を作った。


「俺、強くなってんだな」

「何をしておるのだ!?こっちに来んか!」


 コユキの声に前を向くと、いつの間にか距離ができていた。

 空は夕暮れに染まり、夜が顔を覗かせている。しかし街を行く人々の顔は明るいままだ。

 祭の終わりはまだまだ先らしい。

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