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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
四章 建都記念祭
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一難去って

 俺は困惑した。

 死んだはずの人間が、どうしてか目の前には立っている。


「何でこいつが・・・!?」


 ディールの背後で、偽物が薄ら笑いを浮かべている。


 俺は一度ディールから距離を離した。

 それを見た偽物は饒舌に話し始める。


「手の内は見せたくなかったんだがな、こうなっちゃ仕方がない。その短剣使いはな、『申し子』持ちなんだ。良い拾い物だったぜ」


 嬉々として語る偽物。

 だが、ディールが『短剣の申し子』の持ち主だった事は知っている。

 俺が知りたいのはそうじゃない。


「こいつは死んだはずだ。どうしてここにいる」


 死んだ人間が俺の前に立ちはだかっている事。


 必然、両親がアンデッドとして現れた時を連想する。

 あの出来事に、この男が絡んでいるかもしれない。


「ああ?よく知ってんな、こいつお前の知り合いか?」

「答えろ。こいつがここにいるのは死霊術を使ったからじゃないのか?」


 精一杯の威圧と共に、疑問をぶつける。

 俺の発言に偽物は満足そうに笑った。その後、またも饒舌に話し始めた。


「そこまで知られてちゃ仕方ねえな!そうだ、こいつは死霊術で生きた屍となった。だが安心しな、生きてた時とその強さは変わらねえどころか、一回り強くなってんぜ」


 悪びれる事なく、むしろ心底楽しそうに語る。


「アルマ君!洗脳解除はもう二分ともたない!早く勝負を決めろ!」


 クレシオが残り時間が少ないことを伝える。


 それを聞いた俺の怒りは既に限界まで来ていたが、最後に一つ質問した。


「お前、今から十年前にサンタナ領から王都へ向かう道中で死んだ夫婦も、同じように利用したのか?」

「言っとくが、死霊術使ったのは俺じゃ・・・っとこれは漏らしちゃいけねえな。だが、そんな奴は知らねえ。そんな曖昧なこと言われても思い当たる節は一切ねえ」


 様子を見るに本当に知らないようだ。


「だが、死んだ場所から考えれば利用されても不思議じゃねえ。いや、あいつなら利用するだろうな」

「・・・」

「まさか、それってお前の親か?ハハハハ!ご愁傷様ァ!」


 俺はディールの背後にいる男へ肉薄した。


「バカが!『申し子』持ちに勝てる訳・・・」


 偽物が何か言うのと同時に、ディールが短剣を俺の首元めがけて振るう。


 その切っ先が俺の首筋に到達する寸前、身を翻して短剣を躱し、勢いを殺さずディールを切り裂いた。

 崩れ落ちるディールの先、顔を歪ませた男を視界に収め、もう一度加速する。


「ま、待て!俺はまだ死にたくな・・・!」


 偽物の体を袈裟斬りにする。

 かなり深く入り、偽物は苦悶の表情を浮かべる。


「ガッ・・アァ・・・!!!」


 その場で倒れる偽物。

 傷口から流れる血が、足元を赤く染めた。

 

「おい、お前のスキルはまだ続いてるのか?」


 地面に伏す偽物に俺は問いかける。


「・・・もう・・切・・・れてる」


 偽物はなんとか体を起こし、精一杯の声で答えた。

 この偽物の言葉を信じるなら、効果は既に切れているらしい。


「だから・・・見逃してくれ」


 こいつはどうしても死にたくないらしい。

 しかし、こいつの言うことが本当かは分からない。

 それに本当だったとしても、俺はこいつを見逃すつもりは毛頭ない。


 俺は、偽物の足の甲に剣を突きさした。

 偽物は声は出さないものの、その顔をさらに歪める。口の端から唾液が垂れた。


 剣を抜き、今度は切っ先を首筋に当てる。

 それに偽物の顔は青ざめる。血という血が全て顔から抜けたかのような、そんな血色。


 ひとつ息を吸い、俺は剣を握る左手に力を込め、それを振り抜こうとした。

 その時だった。


「よさんか、既に終わっている」


 コユキの小さな手が俺の手を抑えた。

 見ると、偽物は白目を剥き出し、泡を吹いていた。

 いつの間にか気絶したようだ。


「ありがとう。君のおかげでうまくいった」


 そして、クレシオも駆け寄ってきた。

 その顔は晴れ晴れとしている。


 先ほどまでのコユキとしのぎを削っていたギルダを含めた騎士たちは倒れたまま動く気配を見せない。

 だが死んでいるわけではなく、気を失っているだけのようだ。


 闘技場を囲む氷の壁は徐々に溶けていき、やがて完全に消滅した。それを見た観衆は我先に逃げ出そうとする。


 どうやら全て終わったようだ。

 こうして、俺の怒りは冷めないまま、俺たち三人の作戦は完了した。死体を利用する何者か、という新たな謎を深く俺に刻みつけて。

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