秘密の目的
「ふぅ。見たか、アルマよ。これが妾の力!崇めよ!」
俺は言葉を失っていた。
周囲を冷気で満たし、ワイバーンを凍りつかせたコユキの魔力の強大さ。
あの瞬間、目の前にいたのは俺の知っているコユキではなく、神としてのコユキだった。
そんな俺とは対照的に、周りにいた行商人や一般人は大喜びした。歓喜に飲まれた人々は、コユキの元へ駆け寄り言葉を尽くして褒め称えた。
押し寄せる人々の中心で、コユキはしたり顔を浮かべている。偉そうに胸を張り、称賛の言葉を一身に受け止めていた。
「彼女、頼りになりそうだ」
隣にいたクレシオがそんなことを言った。
「・・・そうだな。頼りになりすぎて困るくらいだ」
これを見せられて、まだ同行を反対する奴はいないだろう。
人混みの中から抜け出したコユキがこちらに走ってきた。
中心からコユキが居なくなっても、群衆は喜びを分かち合っている。
「どうだアルマ?これで文句はあるまい?」
「ああ、こっちからお願いしたいくらいだ」
「もっと褒めよ!」
俺はコユキを誉め殺し、おまけで頭を撫でてやった。
おかげでコユキはご満悦。以降口角が上がりっぱなしだった。
そのやりとりの直後、男がこちらに歩いてきた。
それはさっき話しかけた御者だった。
「兄ちゃん、その嬢ちゃんの仲間かい?馬車を使いたいんだろう?だったら俺のに乗ってきな」
「本当か?是非お願いしたい」
「おうよ!お代はいらねえぜ!」
コユキの活躍のおかげで、無料で馬車を利用することが可能になった。
* * * * *
俺、コユキ、クレシオの三人は馬車に乗り、王都へと向かった。
乗客は俺たちだけの貸切状態だった。
「あの魔法はなんだい?水魔法を応用したのかい?それとも全く新しい魔法?」
クレシオはコユキの魔法に興味津々の様子だ。
そんな質問攻めを受けるコユキは俺の膝の上に乗っていた。
「おい、降りろ」
「馬車の座席は硬いからの。直接座っては痛くてかなわん」
「お前が俺の上に乗ることで、俺の負担が多くなるんだが?」
「文句を言うな。誰のおかげでこの馬車に乗れていると思っておる。ほれ、分かったら頭を撫でろ」
コユキは頭を撫でられるのが気に入ったらしい。
さっきのコユキはどこへやら、すっかり子どもモードだ。いや、ペットかもしれない。
「どうなんだい?どんな魔法なんだ?」
クレシオは質問をし続けている。目を見開き、なぜか息が上がっていた。
コユキはその様子に若干引いている。
騎士団の魔法部隊の隊長を務め、洗脳解除の魔法を創るほどの男だ。魔法に対する好奇心は尽きることはないのだろう。
だが、血眼で質問してこられては普通に怖い。
俺もコユキと同じく引いている。
「あ、あれは妾のスキル。魔法とは違う」
「そうか。だが氷の魔法。実現することは夢ではないかもしれない・・・」
コユキの答えに一瞬肩を落としたクレシオだったが、瞬時に立て直し今はどうやって氷魔法を実現するかを考え始めた。一人でブツブツと何かを呟いている。あの様子ではおそらく俺たちの声は届かないだろう。
馬車に乗ってからやかましかったクレシオが静まり、馬車の中に静寂が訪れた。
そんな静寂を切り裂くように、俺は発言した。
「なあ、コユキ」
「ん?どうしたのだ?」
「お前の目的ってなんなんだ?」
俺の唐突な質問にコユキは肩を飛び上がらせた。
デュオクスはこいつの目的は旅をしなければ達成できないと言っていた。
目的とは一体何なのか。ふとそれが気になった。
しかし、一向にコユキから答えは返ってこない。
「答えられないのか?」
「・・・・・すまん」
「いや、いい。話せるようになった時に話してくれ」
人の秘密に踏み入るのはやめたほうがいいだろう。それにこれから先、言えるようになるかもしれない。俺はそれを待つだけだ。
俺は口数が少なくなったコユキの頭を撫でた。




