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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
三章 神都
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コユキの力

「おいアルマ、起きんか」


 体を揺さぶられていることに気づき、俺は目を覚ました。

 重い瞼を何とか開くと、コユキが俺の顔を覗き込んでいた。


「ようやく起きたか。早う支度せんか」

「分かってるよ」


 コユキに急かされるように身支度を済ませ、部屋を出る。

 廊下を進み、居間に行くとそこにはクレシオが居た。


「朝食だ。食べるといい」

「うむ、クレシオよ。大義である」


 朝から元気なコユキとは対照的に、俺は寝不足気味だった。


 昨夜、クレシオとの話し合いが長引き、結果真夜中まで続いた。その頃にはすでに宿屋の受付も閉まっており、泊まるところがないということでクレシオの家に泊めて貰ったのだ。


「コユキは早く寝たから元気なのは分かるが、お前は何でそんな元気なんだ・・・」

「はっはっは。これでも騎士団で魔法部隊の隊長を務めていたんだ。夜ふかしなんてしょっちゅうだったから慣れている」


 朝食が並べられたテーブルに向かいながらそんなやりとりを交わす。

 食卓にはパンと牛乳、そしてスープ。

 コユキは席に着くやいなや、パンにかじりつく。

 俺はスプーンを手に持ち、軽く手を合わせてから食事を始めた。


「今日王都に向かう、ということでいいね」


 食事を進める俺たちにクレシオが声をかける。


「あ〜、それなんだが」


 クレシアの言葉に曖昧な様子で俺は反応した。

 というのも、俺には懸念点・・・というほどでもないがはっきりさせておきたいことがあった。


「コユキ、お前本当に着いてくるのか?」


 それはコユキのことだ。

 俺は神都にいるうちはコユキに付きまとわれるだろうし、それを甘んじて受け入れていた。


 だが、ここからは王都に向かうのだ。それもコユキとは全くの無関係の要件で。

 もちろん、コユキが記念祭に行きたがってるのは知っている。昨日散々はしゃいでたからな。記念祭に行くことは別にいい。


 しかし、そのことと俺たちに着いてくるか、という話は別だ。こいつが正式に仲間になるか、というのをここで決めなくてはならない。


「今回の件にお前は全くの無関係だ。それに・・・戦えるのか?お前って」

「ふぁみをふほうふふふぁ!」

「パンを飲み込んでからしゃべってくれ」


 言葉通りにコユキはパンを牛乳で流し込む。

 そして、仕切り直した。


「神を愚弄するか!」


 こちらは神というよりただの子供という認識だ。

 見た目も行動も全てが幼稚。たまに的を得たことを言うが

その後はしゃぐ。うん、思い返してみても子供だ。


「お前、今失礼なことを考えているだろう?」

「ああ、正解だ」


 俺の返事に腹を立てたコユキは睨みつけてきた。


「ちょっと待て。神と・・・そう言ったのか?」


 俺たちの会話を聞いていたクレシオはその顔に驚きの表情を浮かべている。

 そういえば説明してなかったな。


「その通り、妾は神だ。さあ崇めよ!」

「まあ半分だけどな。俺がデュオクスの元に行った時にな、連れて行ってくれと頼まれたんだ」

「なるほど。・・・だとすれば強力な味方ということだ」


 コユキについて話していると、クレシオはそんなことを言い出した。


「味方って、協力させるのか?コユキを?」

「ああ、これほど心強い味方はいないだろう」


 クレシアは一人で納得してしまったようだ。

 コユキも得意げな顔をしている。

 なんだか、自然と着いてくる流れになってしまったのかもしれない。


* * * * *


 朝食をすませた俺たち三人は荷物整理をしたのち、馬車乗り場へ向かった。


「建都記念祭、どんなものなのか。今から心が躍るな!」


 コユキはこのとおりハイテンションだ。

 何かを話すたび、思わず目を瞑ってしまいそうなほど眩しい笑顔でいちいちこちらを見てくる。正直鬱陶しい。


「本当に大丈夫か?」

「なんだ、まだ言っとるのか?大丈夫に決まっておろう、なあクレシオ?」

「そうだとも。きっと滞りなく目的を達成できるに違いない」


 三人のうち俺だけが悶々としていた。


 やがて馬車乗り場に近づくと、なにやら騒然としている。御者と思われる者たちが集まり、話し合っているようだった。

 様子が気になった俺は御者に話を聞いた。


「馬車を利用したいんだが、何かあったのか?」


 俺の質問に御者は肩を落とす。


「すまんな、兄ちゃん。どうやら下山する途中にワイバーンがいるらしい。そいつがいるせいで馬車を動かせねえんだ」


 一人の御者が状況を説明してくれた。

 しかし、俺にはワイバーンとやらの強さがわからないためどれほどの事態なのか理解できない。

 そのため、隣にいたクレシオに話を聞くことにした。


「なあ、ワイバーンって強いのか?」

「強い。普通、冒険者が束になって討伐する。でないと一方的に屠られるだけだからね」


 一対一で戦うような相手じゃないということか。

 だったらギルドにでも頼んで、ただちに討伐隊を組めばいいのでは?

 いや、強いと分かっている相手に自分から突っ込んでいくような奴はいないか。リスクを犯さずやり過ごせるならそれが一番いいからな。


「ワイバーンだ!ワイバーンが上がってきたぞ!」


 ワイバーンが浮上してきたらしく、下の様子を見ていた御者の一人が声を上げた。


 どうやら神はリスクをやり過ごすことを許さないらしい。どうなってるんだ、デュオクス。


「とりあえず逃げたほうがいいだろうな」

「ああ、危険は避けたい」

「いや、ここは妾に任せよ」


 俺とクレシオが逃げる算段を整えようとしていたところに、コユキが口を挟んできた。


「なに言ってるんだ、早く逃げるぞ」

「お前こそ何を言っている?ここで妾がワイバーンを倒して見せればお前の煮えきらぬ態度も変わるだろう?」


 確かに、コユキを連れて行くことの一番の心配は戦えるかどうかだ。しかし、それを見せるのだったらワイバーンでなくてもできる。


 と、そこに暴風が吹いた。ワイバーンが翼が吹かせたものだ。

 気づけば、空にはワイバーンが佇んでいた。

 ワイバーンはその視線を真っ直ぐに俺たちに向ける。

 俺とクレシオは暴風の中、立っているのもやっとだった。

 そしてワイバーンの強さをひしひしと感じた。


 そんな中、何事もないようにコユキは立っている。

 白い髪を風に靡かせ、ワイバーンと対峙していた。


「『凍れ』」


 襲いくる強風の中、コユキは冷たい声音で口にする。

 すると、たちまち風は止み、同時にあたりが冷気に包まれる。


 次第にワイバーンの翼は霜が降りたようになり、飛行することが不可能になったのか、ワイバーンは地に落ちた。

 やがて霜はワイバーンの全身に広がり、ついにはその命を凍りつかせた。

 ワイバーンは死の寸前まで暴れるでもなく、まるで眠るかのように絶命した。いや、暴れることが出来ずなすすべなく死んだ、と言ったほうが正しい。


「ふぅ。見たか、アルマよ。これが妾の力!崇めよ!」


 一難去ったその場に、コユキの声が響き渡った。

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