立案、残るは実行
俺はクレシオの声に肩を跳ね上げた。
若干困惑しているコユキを、クレシオは明るい表情で見つめていた。
「それだよ!建都記念祭だ!」
クレシオは頷きながら、口にした。
「待て待て、俺にはまだよく分かっていない」
「妾もさっぱりだ」
「建都記念祭のあの催しを知らないのか?」
あの催しとは、どの催しのことだろう。
俺は一度しか記念祭に足を運んだことがない。それも半分は迷子になった記憶だ。だから、建都記念祭の内容について詳しく知らない。
コユキは言わずもがなだろう。
「記念祭では騎士団による闘技大会が行われる」
その闘技大会というのは、騎士団の最強を決める大会らしい。各部隊長に推薦された団員が大会に参加し、トーナメント形式で進められる。その大会で優勝した者には栄誉が与えられるとのこと。
「栄誉って・・・それだけか?」
おそらくクレシオが話したいこととは無関係のことだろうが、俺は質問した。
優勝した褒賞が形に残るものではないというのは、なんというか残念すぎる。
「優勝すれば強者としての称号を得られるんだ。優勝者の名は売れ、あわよくば二つ名を獲得することだって夢じゃない」
なるほど、二つ名獲得のチャンスだというのなら理解できる。
二つ名は強力ではあるが、獲得までは険しい道のりであることは疑いようもない。それを大会に優勝すれば獲得できるやもしれない。となれば騎士たちが躍起になるのも分かる。
「分かった。話を遮って悪かった。続けてくれ」
俺の言葉に従い、クレシオは話を続けた。
その大会は王都にある闘技場で行われるという。確かに、思い返してみればそんな感じの建物があったような、なかったような。
とにかく、重要なのは大会が行われている間、その闘技場に騎士団員が全て集まるというのだ。
「それなら騎士団全員を集めるという前提は解決だ」
クレシオはそう締めくくる。
「魔法陣はどうする?」
「その点は心配しないでくれ。私の方で何とかする。だが準備に手間取るのは理解してほしい」
「それは承知している」
何せ闘技場が入るほど大きな魔法陣が必要となるのだ。時間がかからないわけがない。
「その闘技大会とやら、妾も見たいのう」
「ああ、問題ない。団員以外に一般人も入ることができる」
「本当か!?やったな、アルマ!」
「ちょっと待て、洗脳解除の魔法は一般人に影響を与えないのか?」
興奮しているコユキを無視して、質問した。
洗脳を強引に解くことによる影響を危惧することを、先ほどクレシオに教えられたばかりだ。この可能性を考えないわけにはいかないだろう。
「大丈夫、洗脳とは無関係の人々には影響はない」
「なぜ言い切れる?」
「人を募って試させて貰った」
「な!?それ、万が一影響があったらどうするつもりだったんだ・・・」
「もちろんそのことを説明した。その上で承諾してくれた人で試したのさ」
ならこいつ自身がやれば・・・。
いや、こいつには状態異常が効かないんだった。自分で試して影響がないと判断しても、クレシオ以外の人は違うかもしれない。それを考慮したのだろう。
前世でも治験のバイトがあったからな。そんな感じのやつだろう。
魔法陣開発に何の貢献もできていない俺が、とやかく言うことはできない。こいつの魔法あっての、この作戦なのだから。
「ともかく、これならばいける。記念祭は十日後。王都には記念祭の前日までには着いておきたい」
「なら、明日にでも出たほうがいいな」
「記念祭、妾も楽しみだ!」
方針は決まり、後は実行するのみとなった。




