解決策と新たな謎
「君の偽物のスキルを解除するため、私は洗脳解除の魔法を創り出した。それを利用する」
クレシオはこの神都で洗脳解除の魔法を開発したらしい。
本人は軽々しく告げたが、並々ならぬ努力があったのだろう。俺はそのことを何となくだが感じ取り、口には出さなかったが敬服した。
その魔法というのは、洗脳にかけられた対象を魔法陣に入れることで真価を発揮するという。
ここまで聞いてなんだが、果たして俺は必要なのだろうか。ひょっとするとクレシオ一人で解決できるのではないだろうか。
そんなことを思っていると、クレシオは言葉を続けた。
「だが、この魔法陣が問題だ」
今回、洗脳を受けているのは騎士団のほぼ全ての団員だ。すなわちその膨大な数の人々を魔法陣に入れる必要があると、クレシオは言った。
「待て、全員一斉に解除するつもりなのか?一人一人解除すればいいんじゃないか?」
「後々説明しようと思っていたが、この魔法は一時的なものだ。完全に解除出来るわけではない。つまり、一時的に洗脳が解けている隙に、スキルの持ち主を叩く必要がある」
「なら、最初から偽物を気絶なりさせればいいんじゃないのか?」
洗脳している本人を倒せばその洗脳は解ける、というのはお決まりの展開だと思うのだが。
「仮にそれをした結果、洗脳されているものたちの精神に異常をきたすかもしれない」
「そんなことは・・・」
「無いとは言い切れないだろう?」
慎重すぎる、そうも思うが同時に納得した。
相手は精神操作、もしくは記憶改竄を行なっている。それを強引に解除した時、一体どんな影響が出るか分からない。
「話を戻そう。騎士団全員の洗脳を解除するためには、自ずと巨大な魔法陣が必要になる。加えて、騎士団全員を一箇所に集める必要がある」
確かに条件が厳しいな。
騎士団全てを一箇所にまとめ、その全員が入るほど大きな魔法陣を用意する必要がある、というのは骨が折れる話だ。
例えば王都を襲撃するというのはどうだ。襲撃することで騎士団が一箇所に集まるのを促す。
いや、無理だな。俺一人の襲撃で騎士団全員が動くとは思えない。それ以前に無関係の人々を巻き込むのは良くない。
「それともう一つ、この魔法に要する魔力は膨大だ。故に私の力で君の偽物を倒すことは不可能だろう。だからその役目を君に担ってもらいたい」
「それは分かった。だけどまずは騎士団と魔法陣の問題を解決してからだ」
それから約一時間。考え耽っていたが、適当な案は思い浮かばなかった。
「だめだ、分からん」
「少し休憩しよう」
クレシオの言葉に従い、俺は一度思考をやめた。
「ここに来るまでの話を聞いてもいいかな」
「いきなりなんだ?」
「ただの好奇心さ」
「そこまで大したものじゃ無いぞ」
俺はそう前置きをして話し始めた。
ニエ村と王都での出来事。そして神都に向けて出発した直前、自分の両親のアンデッドに遭遇したこと。
それを俺はクレシオに伝えた。
言いながら、サンタナ領を出てからそれほど時間が経っていないことを実感させられる。短期間で随分と濃い経験をしたものだ。
するとクレシオは顎に手をやって考え込んでいた。
そして隣に座るコユキが声を発した。
「それは不思議な話だな。あんでっど、という名は知らんが、お前の話を聞く限り動く死人ということであろう?そんな魔物、聞いたこともないぞ」
「何?」
そんな魔物聞いたこともない?
だが俺は見た。死んだ両親が、さながらゾンビのように徘徊している姿を。
あれば夢でも何でもない。紛れもなく現実だ。
「嘘だよな?」
「いや、私も聞いたことがない」
だとしたら、俺が見たあれは何だったんだ?
クレシオは続けた。
「だが心当たりはある。しかし、あれは禁忌のはず・・・」
「教えてくれ、その心当たりというのを」
俺は嫌な予感を感じながらも、クレシオに尋ねた。
「この世界には禁忌とされている魔法がある。それは生と死の境界を曖昧にする、いわば命を超越した魔法。その名を死霊魔術」
クレシオは冷や汗を流しながら答えた。
「ちょっと待て。魔法と言うのなら、それを俺の死んだ両親にかけた奴がいるってことか?」
「まあ、そうであろうな」
コユキの言葉に俺は困惑した。
いったいどこの誰がそんなことをしたのか、それが分からなかった。
それと同時に俺の中に怒りが込み上げてくる。
両親の死体を弄んだ何者かが憎い。
何の目的でそんなことをしたのか。縛り上げ、問い詰め、後悔するまで痛めつけてやりたい。
そんな激情を感じ取ったのか、クレシオは心配するように発言した。
「アルマ君、今は・・・」
「ああ、分かってる。エルを元に戻すのが先だ」
クレシオの言葉に、怒りで震える声で答えた。
そうだ、今はエルのことに集中しろ。
ようやく掴んだエルを元に戻す手がかりを他のことに執着して手放すわけにはいかない。
俺は深呼吸をし、何とか心を落ち着けた。
「ん?今の時期はあれだな」
不穏な空気が漂う中、コユキが声を出した。
「王都で催しがあったな。確か・・・」
「建都記念祭か」
「確かそんな名前だったな。せっかく神殿を出たのだ。一度は行ってみたいのう」
俺とコユキのやりとりを聞いていたクレシオはハッとした。
「それだ!」
クレシオは声を張り上げた。




