神との邂逅
今は昼頃だろうか。
俺が馬車で目を覚ましたのがおそらく早朝だったことを考えると、山を登るのに五時間以上かかっていることになるな。
そんなことを考えながら歩いていると、神殿が目前に迫っていた。
そして神殿の前にはユウリが言っていたように門番が二人居る。あいつらにこの手紙を見せればいいのか。
門番二人に近づき、声をかけた。
「悪い、話を聞いてもらってもいいか?」
「む?ああ、構わんぞ」
俺は二人いた門番のうち、髭を蓄えた壮年の門番に話しかけた。
彼は意外に友好的な反応を見せた。
神殿に近づくことすら咎められるかも、なんて考えていたが杞憂だったらしい。
「これ、見てもらっていいか?」
俺は手紙を門番に手渡した。
「手紙?この封蝋・・・おい!」
封蝋を確認した門番はもう一人いた門番に声をかけ、二人でも話し合っていた。
数秒でその話し合いを終えると、壮年の男は俺の方に向き直った。
「これはユウリ様からの手紙だな。デュオクス様に謁見したいのだろう?」
デュオクス・・・というのは神の名前だろうか。
だとすればこの質問には頷くべきだな。
「そうだ。通らせてくれるか?」
「ああ、構わんぞ。くれぐれも失礼のないようにな」
なんというか、ラフだな。
もっと堅苦しいものかと思ったがそうではないらしい。
「それじゃ」
そう言って神殿へと続く階段を登り出した。
俺がデュオクスに聞きたいのは一つ。
エルの身に起きたことの真相。それだけだ。
どうして俺を忘れていたのか。
どうして俺ではない男をアルマだと認識しているのか。
そのことにあの男がどう関係しているのか。
あの男は全くの無関係で他の別の事柄が間接的に絡んでいる、という可能性もあるが。
そこまで考えて、俺はその考えを捨てた。
あの男が無関係なはずが無い。
俺をアルマだと知っていたこと。その上で俺を嘲笑うかのような態度をとったこと。そんな男が無関係であるというのは無理がある。
そこまで考えると、俺の中でより深まる疑問があった。
それはソフィアのことだ。
チャンスがあれば、これもデュオクスに聞いてみようか。
いや、神といえどそこまで知っているのか?
ユウリは神は大抵のことは知っていると言っていたが、全てを知っているとは言わなかった。
心配しても仕方ない。聞くだけ聞いてみるか。
それにしても神殿までの道を誰も同伴しないのはどうなんだろう。警備が甘いのでは?
そんなことを考えている内に、長い階段を登り終えようとしていた。
すると、俺の視界にその男が入った。
玉座に肘をついて座る紫の髪をオールバックにした男。
その佇まいには神々しさがうかがえた。
男の瞳は俺を見据え、その視線に俺は僅かな畏怖を覚えた。
「よく来たな!アルマ・エンブリット!私がデュオクスだ!」
神殿に男の快活な声が響き渡った。




