雲海の上に
アンデッドを片づけた俺は馬車に戻り、眠りに落ちた。魔力が枯渇していたせいか、全身が重く感じられた。
眠るの間、男は興奮した様子で一人語りをしていた。おかげでなかなか寝付くことが出来なかった。
そうして目を覚まし、馬車から外を見るとそこには見覚えのない景色が広がっていた。
「俺、どのくらい寝てたんだ?」
俺は呟いた。
王都周辺は草原ばかりなのだが、今目の前にあるのは村、というより街だった。王都ほど背が高い建物は見当たらないが、民家と思われる白い建築物が建ち並んでいる。
「貴方が眠ってから、今日で一週間になります」
振り向くと、どこか気味の悪さを覚える笑顔を浮かべた聖職者の男がいた。
「俺、そんなに寝てたのか」
「魔力を使い果たした方は皆同じように長い間眠りにつくこととなります。ご存じではなかったので?」
ご存じも何も、こちらは今回が初の魔力枯渇だ。それに今まで枯渇させた人を見たことはない。存じ上げているわけがない。
「じゃあ、ここは神都か?」
「いえ、ここはまだ外縁です。ここから天を衝くあのナクレ山に登るのです」
男が指差した方を見ると、そこには山があった。その頂点は雲に隠れ見ることが出来ないほど高い山。
「あの山に神都があるのか?」
「ええ」
「登ったら息苦しくなったりしないのか?」
「?、ええそうですが。おかしなことを気にしますね」
つくづく常識の通用しない世界だ。
高所に行っても酸素が薄くならないのか?それともこの世界の人間は酸素を必要としていないのか?
いや、前世でも高所に住む人々はいた。人体的にも無理な話ではないのか。
まあ、体験しなければ分からないことだな。
俺の小さな懸念を他所に、馬車は進み続ける。
* * * * *
「着いた。ここが神都・・・」
目の前に広がるのは王都と負けず劣らずな都。
全ての建築物が白を基調にしており、それらが並び建つ景色は、目に神秘的に映る。
そして最も目を引くのはそんな建築物の下に引かれた絨毯かのような雲海だ。
「素晴らしい景色でしょう?」
「ああ、清々しい気持ちになる」
前世でも同級生がこぞって口にしていた、エモいというのはこう言った景色のためにあるのだな。
そんな柄じゃないことを思うほど、綺麗な景色だった。
「では私はここで」
「そうか。じゃあな」
「ええ。よろしければお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「アルマ・エンブリットだ。あんたは?」
「ヌール・ドグラズマと言います。それでは」
ヌールと名乗ったその男は会釈した後歩き出した。
それを見届けた俺は神殿に向けて足を踏み出した。




