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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
三章 神都
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愛憎

 俺は手に持っていた剣を地面に落とした。

 受け入れ難い現実を前に、全身が弛緩したのだ。


「おや、あれは死なずの者達ですか」


 そんな呆然とする俺の後ろから声がした。

 同じ馬車に乗っていた聖職者の男だ。

 男は顎に手をやり、興味深そうにアンデッド達を眺めている。

 そのアンデッド達はこちらに襲い掛かるそぶりも見せず、近辺を徘徊している。


「なぜここにいる」

「何か役に立つことがあるかと思いまして」


 聖職者とは戦闘向きではないのではないか。

 そんな疑問が浮かんだが、俺はそれを口にはしなかった。

 むしろ、役に立ってもらおうと考えた。


「なら、俺の悩みを聞いてくれよ。そういうの慣れてるだろ?」

「ええ、役職柄そういったものには慣れています。しかし、

このような場所ですることなのでしょうか?」


 もっともな質問だ。

 だが、この場だからこそしなければならない。


「俺にはな、世界で一番愛してる人たちがいたんだ。その人っていうのが両親なんだが」

「ふむ」


 男は平坦な声で相槌を打った。


「二人は俺の秘密を知っても、俺を子供だと言ってくれたんだ。赤の他人が聞けば気味悪く思うような秘密だぜ?俺はそんな懐の深い両親が大好きだった。でも、そんな二人は死んでしまった」


 そう、死んだのだ。

 だから二度と会うことは叶わないはずだった。


「そんな両親がさ・・・・あの魔物の群れの中にいるんだよ。・・・俺はどうすればいい?」


 縋るように、声を震わせた。

 多分、どうするかは俺が一人で決めなければいけないこと。決して人に委ねるものではない。

 それでも、俺は踏みとどまってしまう。悩んでしまう。

 だから誰かの言葉が欲しいと、そう思った。


「それは私が決めることではない・・・というのは言うまでもないようですね」

 

 俺を一瞥した男はそう言った。


「ではひとつ。貴方は貴方がしたいようにすればいい。そこに『愛』があるのなら、世界中が貴方を非難しても私だけは称賛しましょう」


 男が浮かべた表情は、何よりも温かく、そして優しかった。


 その言葉に俺は地面に落ちた剣を拾い上げ、鞘に収めた。

 そして変わり果てた両親に向き直る。


「お父さん、お母さん。俺そんな二人でも会えて嬉しいよ。見ててくれ、きっとエルを取り返してみせる。そして俺たちが過ごしたサンタナ領に帰るんだ」


 視界の隅に男が見える。

 その表情は読み取れないが、どこか落胆したように見えた。

 そんな男を傍目に俺は続けて口にした。


「『メガヒューラ』」


 言いながらアンデッド達に手のひらを向ける。

 手のひらから荒ぶる風が放たれた。

 俺は全ての魔力を振り絞り、そこにいたアンデッド達を切り刻んだ。


 やがて俺の魔力は底をつき、立つのがやっとという状態になる。

 先ほどまでは立っていたアンデッド達は切り刻まれ、塵に等しくなっていた。


「・・・貴方・・・何故?」


 疲労困憊の俺に男が話しかけてきた。

 俺は膝に手をつき、男の質問に答えた。


「俺は姿が変わっても両親を愛してる。そして両親をかたどった偽物を俺は殺した。それだけだ」


 あれは間違いなく俺の両親だった。同時にそうではなかったとも言える。

 だから俺はアンデッドとなった両親をせめて全力で葬った。

 愛してるから同じ姿の偽物は愛しい、そして憎い。

 酷い矛盾だが確かに俺はそう思った。


 男は恍惚とした表情を浮かべた後、俺を馬車まで運んでくれた。

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