不死の大群
俺は神都に向かう馬車の中で揺られていた。
馬車の中で誰かが話すことはなく、車輪が地面を踏み締める音だけが流れていた。
そんな中、俺は純白のローブの男がなぜだか気にかかった。
男の容姿は雪のように白く冷たい、そんな印象を受けた。そんな容姿はこの馬車の中、いやこの世界において明らかに異様であり、人の目を引くことは当たり前だ。
加えて、その穏やかな表情の裏には計り知れない何かが隠されているような、そんな気がした。
「いかがしました?」
思わず凝視しすぎたらしい。男から声をかけられてしまった。
「悪い。その、なんというか目を引かれてしまって」
「ああ。この容姿ですか」
触れていいものなのか分からなかったため、多少濁して言ったのだが、男は自ら容姿のことを口に出した。
「そのローブ、聖職者とかそんな感じか?」
「ええ。どうです?貴方も教えを受けませんか?」
「悪いけど、今はやることがある」
エルと本当の再会を果たすため、俺は神都に向かうのだ。
聖職者の教えだの懺悔だのしている暇はない。
何より俺は仏教徒だ。
「それは残念です。ですが、それが貴方の『愛』ですか・・・」
愛?よく分からんがこの男の宗派とかが関係しているんだろう。俺には知る由も無いが。
すると、いきなり馬車が止まった。
「どうした?」
俺は御者に尋ねた。
「魔物が遠くにいるんです。このまま行くと鉢合わせになってしまう」
「魔物、分かった。俺が殺してくる」
馬車を降りようとする俺の背中に、御者の声がかけられるが、それを無視して俺は魔物の元へと向かった。
爛れた肌に、虚ろな目。おそらくアンデッドだろう。おそらくその数は五十程度。
アンデッドがいるという情報はダグラスからは聞かなかったが、だが魔物であることは変わらないだろう。
「『ヒュルング』」
俺は刀身に風の刃を纏わせ、その剣を薙いだ。
アンデッドの数体は風に切り裂かれ、その場に崩れ落ちる。
しかし、未だ四十以上のアンデッドが残っている。
どうにも魔法剣では効率が悪い。先ほどと同じように魔法剣を使っていては、殺し切る前にこちらが魔力切れを起こしてしまう。
魔法を使うよりも自ら切り込みに行ったほうがいいと考えた俺はアンデッドの大群に向けて歩を進め、その歩みを止めた。
俺はその光景に目を見開いた。
爛れた不死の軍勢の中、俺の見知った顔があったからだ。
それは俺が会いたくても会えない、最愛の人。
エルダイン・エンブリットとアンナ・エンブリット。つまり俺の両親。
彼らが変わり果てた姿で、それでもなお俺の両親と分かる姿でそこに立っていたのだ。




