再会
「「え?」」
思わずユウリの発した言葉にそんな反応をしてしまった。
ユウリはそんな俺と同じ反応をしていた。
「アルマ。お前、今の言葉・・・」
ユウリが目を見開いている。
いや、そうなるのも無理はない。
なぜならこの世界の人間は知りえない言葉を、目の前の人間が発したのだから。
そしてその言葉が重なったのだから。
「なあ、ユウリ・・。お前、日本人か?」
「お前こそ、アルマ・・・・・」
驚くべきことに、俺たちは同郷だった。
* * * * *
「それじゃあ改めて、俺はユウリ。本名は湖上悠里だ」
「俺はアルマ・エンブリット。本名は・・・アルマ・エンブリットだ」
「え?あ、まあそれならよろしく、アルマ」
俺たちは握手を交わした。
話を聞くと、ユウリは召喚者としてこの世界に来たのだと言う。
召喚者、とは俺にとっても思い入れの深い言葉だ。
「なあ、アルマ。本名でこの世界の名前を言うあたり、お前はこの世界を気に入ってるみたいだけどなんでだ?」
「別にこの世界を好きなんじゃない。前の世界が嫌いなだけだ」
確かにこの世界は好きだった。
両親が亡くなるまでは。
あの事があってからはこの世界を好ましく思っていないのは確かだが、明確に嫌いでもないという微妙な感覚だ。
ただ、前の世界は嫌いだ。これだけは断言できる。
その後、俺たち並べられた料理を平らげた。
とにかく腹を満たしたかった俺は、食事中に会話することは無かった。
そして、食べ終わってからユウリが喋り始めた。
「ん?あ、マズイ。俺用事があるんだ。」
「どこに行くんだ?」
「城だよ。悪いな、アルマ。今度会った時にもう少し話させてくれ。あ、あと知りたいことがあれば神都に来いよ」
そう言ってユウリは店から飛び出した。
どうやら彼は店を出る前に支払いを済ませたらしく、店を出る際に金を払わなくていいと言われた。
ユウリがいなくなり、俺は王都に一人となった。
彼は何やら城に用事があると言っていた。
『英雄』とは忙しないな。
俺も目的を達成するとしよう。
この王都でエルと再会を果たす。
「いやでも。騎士団ってどこにあるんだ?」
しまった。ユウリに聞いておくべきだった。
人に聞いて回るか?
いや、ダグラスが困ったらギルドに行けと言っていたな。
その教えに従うとしよう。
しかし、ギルドを探すのも骨が折れそうだ。
そう思っていたが、案外早く見つかった。
ギルドの外に明らかに冒険者という風貌の連中がたむろしていた。
俺はギルドに入るためにその連中の横を素通りしようとすると、腕を掴まれた。
俺を引き留めたのはモヒカン頭の男。
男は一体どこを守るんだと疑問に思ってしまうような装備を身に着けている。
「おい、坊ちゃん。てめえみてえな奴が入っていい場所じゃねえぞ」
「俺は冒険者だ。ギルドに用があるのは当然だろ?」
「冒険者?ギャハハハ!嘘は良くねえな」
絵にかいたようなチンピラ。
いや、こいつをチンピラと称してしまっては、本物のチンピラが可哀そうなくらいには残念な奴だ。
「嘘ではない」
「じゃあ証明できるものはあるのか?魔物の毛皮とかよお」
「そういったものは持ってないが、ミノタウロスくらいなら倒せる」
「ギャハハ!おい、聞いたか!?ミノタウロスだってよぉ!」
モヒカンの男は周りにいた仲間に呼びかける。
男の仲間は俺を囲み込むように群がってきた。
「ミノタウロスゥ?こいつが?倒したってぇ?」
「そうなんでちゅか~。すごいでちゅね~」
「へぇ~可愛い子じゃない。見栄を張っちゃうとこも可愛い」
俺を嘲笑するように群がる輩たち。
「おら!早く帰ってママのおっぱいでも吸ってな!」
「母は魔物に殺された。父も同様だ」
俺はモヒカンの一言に噛みつくように切り返した。
モヒカンは突然の強気な反応に少し驚いた様子を見せたが、その後すぐに声を荒げた。
「生意気なガキが!だったら大好きなパパとママに会わせてやるよ!」
その言葉は俺の気に触れた。
俺を殺すという発言をしたことに起こったわけではない。
父と母の死を軽んじられた気がしたからだ。
モヒカンの拳が振り下ろされる。
俺はそれを躱し、モヒカンの腕を右手で掴んだ。
「な!てめえ!離しやがれ!」
男の言葉に耳を貸さず、モヒカンの腕を握る右手に力を籠める。
加える力を段階的に強めていくと、それにあわせてモヒカンは苦悶に顔を歪める。
「お、おい!やめ、いっ、いてえ!やめろ!離せ・・っつってんだ・・い、いてぇ!」
「続けるか?」
俺の質問に首を横に振るモヒカン。
俺が右手を離すと、モヒカンは地面に崩れ落ちた。
モヒカンの仲間は一歩離れたところで身構えている。
彼らに目線を送ると、怯えた様子を見せた。
辺りを見回すと、人だかりができていた。
いつの間にか騒ぎが大きくなっていたようだ。
「おい!何の騒ぎだ!?」
人だかりの先から良く通る男の声がする。
大勢の群衆をかき分けて目の前に現れたのは、忘れもしない甲冑。王都騎士団だった。
「君がこの騒ぎを起こしたのか?」
「ああ」
「そうか。師団長!こちらの少年が騒ぎの中心らしいです」
甲冑の男が師団長と呼ぶその者の顔を見て俺は驚愕した。
「分かった。君はそこに倒れてる人たちを助けてあげて」
そこにいたのは俺の親友。
エルリアル・フォートレスだった。




