幕間 『英雄のスペック』
ユウリと共に王都に向かう道中、王都行きの馬車を捕まえて相乗りさせてもらった。
これはその馬車の中での会話。
「なあ、ユウリ。お前は二つ名持ちでいいんだよな?」
俺はユウリに質問していた。
彼の二つ名、『英雄』。その効果が気になっていた。
「ああ。『英雄』なんて騒々しい物だけどな」
二つ名の獲得には明確な指標は無い。
しかし、それを実現するまでの道のりは果てしないものだ。
それも『英雄』なんて二つ名を得るには、俺の想像を遥かに凌ぐ苦労があったことだろう。
「どんな効果があるんだ?」
「そうだな。まず最初に『窮地の察知』。お前を助けることが出来たのもそのおかげだな」
人のピンチに駆けつける、というのはまさに英雄の在り方だろう。
ヒーローはピンチに駆けつけるのがお約束だ。
ユウリは続けて語る。
「後は、『羨望の的』。人々の憧れの的となる」
「英雄っぽくはあるけど、実戦的じゃないな」
「焦るなよ。後は『忘却』。人々の嫌な記憶を忘れさせる。まあ、これはあまり使わないな」
なぜ使わないのか、それが気になった俺はユウリに質問した。
すると、彼は答えた。
『忘却』を使わない理由の根本には、ユウリの考え方がある。
彼に『忘却』を用いて嫌な記憶を消してほしいと頼み込む者は何人もいたそうだ。
ある人は村を襲われた記憶を、ある人は家族を亡くした記憶を消してほしいと言った。
しかし、彼はそれに応じなかった。
大事なものを失った記憶を忘れてのうのうと生きていくことは愚かだと、彼は語った。
悲しみと共に進み続けることにこそ、彼は意味を見出している。
「その人たちの中で、最後は最悪の結果に終わったかもしれない。だけど、それまでの幸せな記憶を蔑ろにして、嫌な記憶だったなんて言うのは悲しすぎる」
ユウリの言葉は俺に刺さった。
俺のサンタナ領での記憶には両親の死と、エルとの別れが強烈に刻み込まれている。
その二つがサンタナ領での記憶を仄暗いものにしていた。
しかし、それ以前に幸福だった時間だってあった。
だが、悲しい記憶だけに目を向けていたが故に、輝かしい記憶を見ていなかった。
俺はそのことに気付かされた。
そんな物思いに耽る俺を気にせず、ユウリは話し続ける。
「次は『全武器・全魔法の申し子』」
考え耽っていた俺は突如耳に飛び込んできたその言葉に、開いた口が塞がらなくなった。
しかし、そんなものは序の口と言わんばかりにユウリは続ける。
「後は『不屈』。敵意を持つ者に絶対に負けない」
俺は開いた口はそのままに、目を限界まで見開いた。
負けない。単純で、強すぎる能力。
ユウリは絶対に勝てるわけじゃないのが難点だのと言っていたが、負けないというだけで壊れてる。
「極めつけは『クラウソラス』!距離を無視して対象を空間ごと斬ることが出来る、絶対不可避の光の剣!」
俺は一周回って落ち着いた。
そして冷静に言い放った。
「ふざけんな」




