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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
一章 ニエ村
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決着

「『英雄』・・・・!」

「おう、俺が『英雄』だけど。よくわかったなぁ」


 『英雄』というのは二つ名だろうか。

 目の前の男は不敵な笑みを浮かべ、軽い口調で肉屋に言葉をかける。


「そのツンツン頭、お前以外にいるわけないだろうが!」

「髪型ね・・・そんな変かな?」


 男は、その特徴的な髪型をした茶髪を片手でいじくる。

 その様子にはわずかな悲哀が垣間見えた。


「はぁ、まあいいや。で、これからどうする?」


 切り替えた男は肉屋に向けて発言する。

 当の肉屋の顔は引きつっていた。


「ボクの輝かしい未来のために、逃してくれたらありがたいんだけど?」

「冗談。俺から逃げたら、それこそお前に輝かしい未来は来ねえだろ?」


 男と肉屋の腹の探り合い。

 だが、肉屋には全くと言っていいほど余裕はない。対して男の方には余裕が透けて見える。


「お前が言う、輝かしい未来は俺を倒さないと絶対に来ないぞ?」

「それこそ冗談だろ?『英雄』に勝つなんて」

「その冗談を成し遂げて見せろ。ほら、万が一、いや億が一に賭けて俺に向かってこい!」


 男はそう言って両手を大きく広げた。

 肉屋は依然、バツが悪そうな顔をしている。


 しかし、何かを諦めたように息を吐き、短剣を握りしめた。


 俺は次の光景に肝を抜かれた。

 それは肉屋の目に比類なき速度によるものではない。

 その速度に対応し、そしてそれよりも速い剣さばきで短剣を止めた男によるものだ。


 しかし、肉屋はそれだけでは終わらない。

 阻まれた短剣を手放し、素早く屈んだ。

 その後ろからはもう一本の短剣が飛んできた。


 驚くことに肉屋は隠し持っていた三本目の短剣を投擲し、それよりも速く肉薄したのだ。

 つまり自らの攻撃は囮、その背後に迫る短剣こそが本命。

 本命が男の眼前に差し迫る。

 その切っ先が男の頭に辿り着こうとしたその時、短剣は砕けた。


 男は肉屋の攻撃だけではなく、その後ろの短剣にも対応していた。

 俺には、その様子を目で捉えることは敵わなかった。


「俺の番だな」


 そう言うと、男の手に握られた剣の刀身が光を帯びる。

 次第に、男を中心に風が渦巻き始める。


「どうした?逃げないのか?」


 男はその場から微動だにしない肉屋に声をかける。


「逃げたところで無駄だろ。お前のそれは絶対不可避の・・・」

「そうか、なら食らえ。『クラウソラス』」


 男が剣を振り下ろす瞬間。その一瞬は世界から音が掻き消された。

 思わず息を吞んでしまうような所作から放たれたのは光の斬撃。

 それは、そよ風のように穏やかで雷のように強大な一太刀。


 肉屋の体は空間ごと切り捨てられる。

 その傷は大きく深い。しかし、血が流れることは無かった。

 先ほどまで生気に溢れていた肉屋は、力なく静かに崩れ落ちた。


 そうして、肉屋との戦いは唐突に幕を閉じた。

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