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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
一章 ニエ村
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英雄

 全身につけられた傷、左手は使用不能、それら全ての傷から流れる血液。

 誰がどう見ても、今の俺は満身創痍。


 そんな俺の前には、地面に伏す肉屋。


 勝敗は決したのだろうか。

 願わくば、倒れたまま立ち上がらないで欲しい

 これ以上の戦闘は、俺には不可能だ。


「・・キャハ・・キャハハハハァ!!!」


 俺の願いは届かず、うつ伏せになったまま、肉屋は肩を震わせて笑う。

 その声は生気に満ちており、未だ戦闘は続いていることを示唆していた。


「久しぶりだ!こんなに楽しいのは!」


 笑う膝を手で抑えて肉屋は立ち上がる。

 その顔を、鼻と口から流れる血が赤黒く染めている。


「諦めろ・・。お前は・・・丸腰だろう?」


 絶え絶えな息をしながら、なんとか声を出す。

 それは、今の俺が肉屋に対してできる精一杯の虚勢だった。

 だが肉屋は俺の言葉に不満がない顔をする。


「はあ!?まさか短剣を一本しか持ってねぇとでも思ってんのか!?」


 そう言って肉屋は腰からもう一本の短剣を取り出す。

 もちろんこの状況は想定していた。しかし、実際に直面すると、その絶望は色濃く心を染め上げる。


「さあ!もっとやろう!ここまでヤる気にさせたんだ!てめぇだけ気持ちよくなるなんざ、あっちゃいけねぇよなぁ!?」


 肉屋は再び、俺に肉薄する。

 しかし、俺にはそれに対処する術はもう無い。


 全身が重力に逆らうことを拒否している。

 両目が肉屋の動きを捉えることを忌避している。

 心臓が血を送り出す動作をやめたがっている。


 あぁ、今度こそ負けた。


 これまでで最も研ぎ澄まされた肉屋の刃は、今度こそ俺の首を取ろうとした。

 その瞬間、何者かが俺と肉屋の間へ割り込み、迫り来る凶刃を叩き落とした。


 突如現れたそいつの顔を見た肉屋は、すかさず距離を取った。


「『英雄』・・・!」


 まるで恨み言を吐くように声を出す肉屋。

 いま『英雄』と称された者は、その口に笑みを浮かべて、返事をする。


「待たせて悪い、けど多めに見てくれ。ヒーローは遅れてやってくるのが相場だからな。」

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