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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
一章 ニエ村
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質疑応答

「ったく、お前のおかげでめんどくせえことになっちまった」


 行商人の態度はこれまでの温和なものとは打って変わって、荒々しいものになっていた。


「お前は何者だ」

「ボクは行商人さ。いや、肉屋かな」


 肉屋?どういうことだ?

 しかしこの状況で戦うのはマズい。

 俺の武器は剣、対して相手は短剣。

 そしてここは屋内。断然、小回りが利く短剣の方が有利だ。

 まずは場所を変えるのが先決か?


「とりあえず、場所変えよ~ぜ」


 行商人、いや肉屋からそんな提案がされる。その提案にどんな裏があるのかは分からない。

 しかし、この提案は俺にとっては僥倖だ。

 そう考えた俺は肉屋の言葉に頷いた。


* * * * *


 場所は村の広場に移った。

 俺と肉屋は向かい合っていた。


「じゃあ、いくらでも質問していいぞ」

「いいのか?今後、俺に情報を明かしたことがお前の不利益に繋がるかもしれないぞ?」


 この行商人はただの肉屋では無い。それも裏社会とか、そんな部類のやつだ。それは握られた短剣と、鋭い視線から分かる。

 そんな奴が情報を他人に与えるというのは適切な行動ではない・・・はずだ。


「はぁ?なんでこれから殺す奴の今後なんざ考えなきゃいけねえの?」


 どうやら俺を生かす気はないらしい。

 まあ、それはそうだろう。だったら、できるだけ情報を引き出してやる。


「というか、ボクに攻撃されても驚いてないねぇ。もしかして、感づいてた?」


 俺の質問を待たずに、俺に質問してくる。


「驚いてるさ。ただ、お前のことは怪しいと思ってた」

「ふ~ん。じゃあ、その答え合わせと行こう!」


 肉屋は高らかに声を上げる。

 俺と肉屋による質疑応答が始まった。


 こいつの不審な点はいくつかある。


 ひとつは、馬車の荷台にあった大量の白い布。

 ユウナがそれについて聞いたとき商品を包むためのものだと言った。

 しかし、今日向かう取引先はこのニエ村だけだと言った。

 たった一つの村との取引に、あれほど大量の布は要るのだろうか。要るのだとしたら、このニエ村で引き取る商品というのは、よほど大きいものに違いない。


 ひとつは、魔物に襲われているこの村に向かうことに躊躇が無かったこと。

 俺が質問した時、ニエ村は大事な取引先だから、とそう言った。

 その時の俺はそれ以上の追及はしなかったが、普通の行商人ならば救援を呼びに行くはずだ。しかし、こいつは俺とユウナを乗せて村に向かった。

 そうしても構わない理由、もしくはそうしなければいけない理由があったに違いない。


 ひとつは、宴の時の行動。

 あの時、こいつは宴が開かれているところから離れた場所にいた。その後、その場を離れ、村の外周で地面をいじっていた。

 これに関しては疑り深くなっているだけかもしれない。しかし、不審に思った。


「お前は宴の時、何をしていた?」


 初めに、俺は宴の時の行動について質問した。


「あれか。その時は設置型の魔法をかけてた」


 設置型魔法。場所と範囲を決めて発動する魔法。

 主に罠に使われるものだが、それを仕掛けていたのか。


「どんな効果の魔法だ」

「魔力を吸い上げる魔法だ。範囲は村全体。今、村人は限界まで魔力を搾り取られてる。中には衰弱しきって、死んだ奴もいるが」


 それでさっき、ユウナは死んだ、とそう言ったのか。

 腹の奥底から怒りが込み上げるが、まだ聞くことはある。ここで感情的になってしまっては、情報を聞き出せなくなるかもしれない。


 気持ちを落ち着かせるように息を吐き、次の質問に移る。


「なぜニエ村に来るのを躊躇わなかった?」

「誰かに知られるわけにはいかなかった。それと助けなんざ呼びに行こうものなら、手遅れになる」


 手遅れ、とは何を指しているのだろう。村人を心配している、というわけではないだろう。

 この疑問は後に解消するとして、もう一つの質問。


「馬車の白い布。たった一つの村との取引にあれだけの量の布は必要ないと思うのだが、それについて教えろ」

「教えろ?まあいいや。あれは本当に商品を包むものさ。ここで取引される商品をね。それも大量の」

「その商品ってなんだ?」


 俺の質問に奴はにやり、と笑う。


「それは君自身で気付いてほしいな。ヒントはさっきも言った、ボクは肉屋だ」


 肉屋、ここには養豚場も養鶏場も無い。一体何の肉を・・・。


 そこで俺の頭は一つの結論に辿り着く。

 しかし、その結論はあまりに非常識で、非現実的で、非業のものだった。


「商品は・・・・村人?」


 俺の質問に肉屋は不敵に笑った。

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