縁もたけなわ
宴は終わり、村人が寝静まった夜。
俺は村人から空いていた家を使っていいと言われ、その言葉に甘えることにした。
俺はその中で眠っていた。
しかし、ブチッという音とともに目を覚ます。
音の正体は、スミシーから受け取った首飾りが勢いよく千切れた音だった。
母の形見が千切れたことを残念に思うと同時に、その様子を不審に思った。
なぜなら、この首飾りにはスミシーの状態異常耐性が施されている。
それが千切れるというのに、どうにも嫌な予感がした。
そして、俺は剣を携え、村の見回りを行うことを決めた。
外に出ると、空には星が瞬き、月が輝きを放っていた。
そんな夜に見回りをしているとどこかで物音が聞こえる。
何者かが木の枝を踏んでしまった音だ。
音の聞こえた方へ静かに近づくと、そこには一つの人影があった。
その人影は村人たちの家を見て回っているようだった。
俺が貸してもらった家もそうだが、村人の家にはドアがついていない。
つまり、誰でも家の中を覗けるし、侵入することもできる。
村人だけならその設備でも問題は無いのかもしれないが、外から来た盗賊からすればこれ以上ない絶好のカモだろう。
そんなことを考えながら俺は人影に近づく。
なるべく音を出さないように、感づかれないように。
そして、俺はその正体を見た。
「うわあ!またですか!いきなりはやめてくださいって言ったでしょう!?」
村人の家を見て回る人影の正体。それは行商人だった。
「お前、何してるんだ」
「え?ああ、村人たちの様子を見てたんですよ」
なぜ行商人であるこいつがそんなことをしなければならないのか。あまりに不自然だ。
「ほら、ここはユウナさんの家みたいですよ」
行商人が指差した先には静かに眠るユウナがいた。
「人の寝相を見るなんて、いい趣味とは言えないな」
「あはは・・・」
行商人は笑ってごまかした。
俺は家の入口にいる御者の前に立ち、ユウナの様子を見た。
「にしても本当によく寝ている。随分深い眠りについてるみたいだな」
「ええ。今さっき死にました」
「そうか」
俺の後ろから行商人は声を発した。
・・・・・ちょっと待て。
今なんて言った?死んだ、そう言ったのか?
行商人が言い間違えたのか?いや、だったら言い直すはずだ。
それとも俺の聞き間違いか?
俺の頭の中は混乱する。
そして俺は、行商人が発した言葉の真意を知るため、奴に向き直る。
振り返った俺の目に最初に飛び込んだのは銀色に輝く短剣だった。
俺は顔の寸前まで迫った短剣をバックステップでかわす。
行商人の目には鋭くぎらつく殺意が宿り、その口角は大きく上がり、凶悪な牙のような歯をむき出しにしていた。
行商人は何も言わない。そして、俺も同じく何も言わない。
分かることは一つ、行商人との戦いは避けられないということだけだった。




