宴もたけなわ
席に戻った俺はそこに置かれていた料理の量に唖然としていた。
先ほどまでの量ですら多かったというのに、どれだけの大食漢を想定したのかと言った具合の料理が並んでいた。
その様を見た俺は肩を落とし、黙ってそれを食べ始めた。
「それ全部食べるの?」
黙々と料理を口に運ぶ俺に投げかけられた声。
声の主はユウナだった。
「いったん席を離れたら追加されてた」
「それを何も言わずに食べるなんて、律儀だねぇ」
そういってユウナは俺の隣に座る。
「みんな嬉しいんだよ。君が・・・えぇと、名前教えて?」
そういえば俺は名前を教えていなかった。
俺からユウナの名前を聞いておいて自分は名乗らないとは、律儀なんてあったもんじゃないな。
「アルマ・エンブリットだ。」
「はい、ユウナ・セルティです」
ユウナは一礼した後、くすくすと笑みをこぼしていた。
俺はなぜだか気恥ずかしくなり、その顔を直視することはできなかった。
「ねえ、アルマ。君はいつから冒険してるの?私の見立てでは二年前からだと踏んでるんだけど」
「今日だ」
「え!今日!?それであんなに戦えたの!?」
ユウナは驚きでその声を大きくした。
俺はその声に肩を跳ねさせた。
「なんで冒険しようと思ったの?」
「話せば長いぞ」
「いいの。聞かせて」
ユウナの目は輝いている。
その目からなんとなくこの追及を逃れることはできないと悟る。
「小さかった時、王都に行ってしまった友達がいるんだ。その子を故郷に連れて帰るため」
「ねえ、その子って女の子?」
「そうだ。俺の自慢の親友だ」
ユウナはジトっとした目つきでこちらを見る。
その後、顔を逸らし、ブツブツと何か呟いている。
「ん、まあいいや。その子のために旅に出たんだ」
ユウナは向き直り、再び話始める。
「いや、もう一つある」
「聞かせて!」
「復讐だ」
瞬間、空気が冷えあがるのが分かった。
こんなことを言うのは空気を読めていない。そんなことは分かっている。
しかし、これを抜きにしてはいけない。俺をサンタナ領から旅立つ決意をさせたのはこの間違いなく思いだ。だから聞かれたら答える、自分を奮起させるために自問し続ける。
「そうなんだ・・・。なんで復讐しようと思ったの?」
「面白い話じゃないぞ」
俺はそう言ったが、ユウナは強い眼差しで見つめる。
その目に応えるように、俺は話した。
両親との思い出から、その結末を。
記憶にある限りを全て伝えた。
すべて話し終えた時、ユウナの目には先ほどまでの輝きは無かった。
「辛かったね・・・」
気づけば彼女は目に涙を浮かべていた。
俺は戸惑うことしかできなかった。
俺と彼女の間に、静寂が続く。
俺は言うべきことを全て口にしたが故の無言だったが、ユウナのそれはかける言葉を模索するための無言だった。
そしてようやく言葉を見つけたユウナはその口を開いた。
「私が何を言っても同情にしかならない。その思いに寄り添ってあげることはできない」
「・・・」
「だけど、少しでも理解したい。辛いときにそばに居たい」
唐突な言葉に俺は再度戸惑った。
彼女の中で思案した結果、この言葉を選んだのだろう。
だが、俺にとっては突飛すぎる言葉だった。
「それはどういう・・・」
「あれ?商人さんがいない」
俺の質問に被せてユウナは声を出す。
不自然に顔を逸らす彼女の耳はほのかに赤くなっていた。
「あ、ああ。そうだな。どこに行ったんだ」
「私、探してくるよ」
「いや、俺が行く。探しに行って魔物に襲われるかもしれない」
そう言って、俺はその場から離れて行商人を探しに行った。
* * * * *
俺は村の外周を回った。
すると、行商人はすぐに見つかった。
行商人はしゃがみ込んで、地面をいじっていた。
「そこに何かあるのか?」
「うわぁ!いきなり話しかけないでくださいよ!」
後ろから話しかけられた行商人は声を大きく上げた。
「で、何かあるのか?」
「ああ、いえ。ちょっと食べ過ぎで気持ち悪くなっちゃって」
行商人は頭をかきながらそんなことを言う。
「端っこで飲み物しか飲んでないように見えたけどな」
「そんなことありません。ちゃんと食べてましたよ」
まあ、そういうことならそれでいいか。
「あ!そろそろ宴も終わるみたいですね」
言われて見てみると、村人たちが片づけをしていた。
「そうだな、手伝ってくるか」
「ボクはもうちょっとここにいます」
俺は行商人と別れ、宴の片づけを手伝いに向かった。




