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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
一章 ニエ村
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救世主

 ニエ村には多くのゴブリンがいた。

 そんなのは想定内だ。


 だが、想定外だったのは村人がゴブリンに抵抗していることだ。

 魔物の襲撃にされるがままかと思っていたが、各々が鍬や斧などを使って抵抗していたのだ。

 おかげで重大な被害はまだ出ていない様子。


 だが、ゴブリンの集団は分散してしまっている。

 一か所にまとめられれば楽だが、文句を言っても仕方ない。やれるだけのことをやろう。


「これ、使ってください」


 馬車から降りる際に行商人から手渡された小さな瓶。中には液体が入っているようだ。


「その中の液体は魔物を寄せ付けます。使えば楽になると思いますよ」


 俺の胸の内を見透かされた。俺が分散しているゴブリンを対処するのが面倒だと思っていたことが、顔に出ていたのだろうか。


 いや、そんなのはどうでもいい。

 とりあえず、これがあればある程度は楽に倒せそうだ。


 俺は行商人に礼も言わず、村の中央に立つ。

 そして自らの周りに、御者から渡された魔物寄せを撒いた。


 すると、各所に分散していたゴブリンは俺に向かって歩を進め始める。

 俺はゴブリンに囲まれる形になった。


「気を付けて!一斉にかかってくるよ!」


 離れた場所からユウナの声が聞こえる。

 さすがに前も後ろも、右も左も同時に襲われては対処できない。

 そう考えた俺は剣をその場に突き刺した。


「え?何してるの?危ないよ!」


 ユウナの声は止まない。

 だが、俺はそれに反応しない。剣は突き刺したまま動かなかった。


 そして忠告通りゴブリンは一斉にかかってきた。

 一対一では敵わないなら、複数対一に持ち込む。

 ゴブリンは醜悪な顔からは想像できない知能を持ち合わせているらしい。


「キャアァアアー!」


 ユウナの甲高い叫び声が聞こえたその時には、俺にゴブリンが飛びかかってきた。

 前後左右、逃げ場は無い。

 ユウナや御者からは、俺が緑の集団の中に飲み込まれるように映っただろう。


 そんな中、俺は突き刺した剣を踏み台に高く跳躍し、その襲撃を逃れた。

 跳躍した俺は、真下にいるゴブリンの集団に向けて魔法を放つ。


「『メガヒューラ』」


 口にしたのは風の上級魔法『メガヒューラ』。

 俺の掌から竜巻に似た暴風が放たれる。

 ゴブリン達は、渦巻き、うねる風の奔流にのみ込まれ、無力に散った。

 その魔法の一撃で、村を襲った魔物の集団は一網打尽。

 村の危機を退けることに成功した。


 束の間の静寂。目の前で起こったことにユウナを含めた村人たちは困惑しているようだ。

しかし、俺がゴブリン達が作った赤い水たまりに着地すると、周りから歓声が上がった。


「すごいな!あんた!」

「本当にありがとう・・・・・村を救ってくれて・・・」

「きっと救世主様だよ!」


 皆口々に俺を持ち上げる。

 悪い気はしないが、こそばゆい。

 そんな俺を取り囲む人々をかき分け、ユウナと御者が近寄ってくる。


「本当にありがとう!私たちの村を助けてくれて!」

「ボクも助かりました。すごいですね、あなた」

「やめてくれ。やれるだけのことをやっただけだ」


 俺はそんな言葉を吐く。

 すると、取り囲む村人が口をそろえて言い出した。


「今夜は泊っていきな。特別なものは無いけれどゆっくりしてくれ」


 村を救った俺をもてなしたいのだろうか。

 であれば、せっかくだしあやかろう。辺りには完全に夜の帳が落ち、これから野宿なんてできたものではない。


「それじゃあ泊まらさせてもらおう」


 夜が明けたらこの村を去るとしよう。


* * * * *


 村では宴が開かれた。

 先ほどまで襲撃にあい、食料だって少ないだろう。それでも、俺をもてなすために開いてくれた。


 正直なところ、窮地にあった村を救い、その報酬に村から食料を貰うというのは悪い気がする。だが、村人全員の総意だし、彼らは純粋に宴を楽しんでいる。そんな中、こんなことを口にするのは野暮だろう。

 そう思い、俺は宴に参加した。


 とは言っても、俺は出てきたものを食べるだけ。大騒ぎなどはしなかった。

 男たちはでたらめに踊り、女たちは歌を歌っていた。

 その様子を見た俺は、ある違和感を感じ、行商人のもとへ向かった。


 行商人は宴が開かれている場所から少し離れた場所にある岩に腰掛けていた。


「なあ、あんたは何度かここに来てんだろ?」

「?ええ、そうですが?」

「だったらこの村について質問していいか?」

「構いませんよ」


 行商人はその顔に笑みを浮かべた。

 俺はそんな行商人に一つの質問を投げかける。


「若い連中が多すぎないか?」


 その疑問に御者は眉をしかめた。


 俺の感じた違和感、それは若い者が多いということだ。

 壮年の者も何人かはいるらしいが、そのほとんどが青年。

 改めて見ると、異様とも呼べる光景だ。


 俺に質問された行商人は顔をしかめたまま俺の質問に答えた。


「今回のように、いつだって魔物の脅威を退けることはできません。これまでにも何度か襲われているらしいのですが、その度に大人たちは若い世代をかばって死んでいくんです」


 若い世代を生かすため、大人たちは死んでいく。

 襲撃される度、大きな犠牲を払ってこの村は存続している。

 行商人はそう語った。


「村長がボクと交渉をしてくれるのですが、来る度に違う人になっていることがありました」

「分かった、もういい。不躾な質問だった」


 俺はそこで遮った。

 これ以上は行商人の傷を開きかねない。

 そんなことはすべきではない。


 もっとも、行商人がその経験を辛く思っていればの話だが。


 俺は行商人のもとを離れ、再び自らの席に戻った。

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