ニエ村へ
「村が襲われてるの!助けて!」
ユウナは助けを求めた。
その表情には焦りが見える。
「魔物か?」
「お願い!」
「おい、魔物か?」
「え?う、うん・・・」
俺は彼女の必死の頼みを無視して質問した。
村を襲っているのが魔物であるか否か。それは俺にとって最も重要なことだ。
もちろん、魔物でなかったとしても助けはする。
相手が魔物でないからと言って、死にゆく者たちを見捨てるほど人でなしではない。
しかし、その心構えは変わってくる。魔物ならば必ず殺す、そうでないなら可能な限り生かす。そういった違いだ。
「分かった」
「じゃあ今すぐ来て!」
「分かった。しかし、今から向かうとなると遅くなりそうだな。馬車でもあれば・・・」
言っている途中で、音が聞こえた。車輪が地面を踏む音だ。
音のする方を見ると、馬車が見える。夕暮れでわずかに見えづらいが、あれは馬車だ。おそらく、行商人のものだろう。
「あの馬車に乗せてもらおう」
「で、でも行先は違うんじゃ」
「頼み込むだけでもしてみよう」
そういって俺とユウナは馬車の方へ向かった。
馬車はゆったりとした速度だったために、すぐに追いつくことが出来た。
「おい、ちょっといいか」
「え?なんです?」
行商人は男とも女ともとれる身長と顔立ちをしている。
「これからどこに向かうんだ?」
「ニエ村ですけど・・」
「私たちの村だ」
偶然にも向かう先は同じらしい。ならば答えは一択だ。
「俺たちもそこに向かいたい、乗せてくれないか?」
「え?で、でも・・・」
「村が魔物に襲われてるの!お願い、乗せて!」
「え!それは急ぎましょう!」
魔物に襲われている村に向かうことを即座に決めるとは、随分と勇気のある行商人だ。
容姿に見合わず、肝が据わっているらしい。
俺とユウナは荷台に乗り込む。
「乗りましたか?つかまっててください!飛ばしますよ!」
行商人は握った手綱を使って、馬を加速させる。
いきなりの加速に倒れそうになった。
俺たちが乗った馬車は草原を横断し、山の方へと向かっていった。
* * * * *
俺とユウナの乗った馬車は草原を抜け、山の中へと入っていく。
「商人、一つ聞いていいか?」
「何ですか?」
「これから向かう先には魔物がいる。どうして危険な場所に向かう?」
勇気があるのは結構だが、その先で命の危機が待っているのは事実。
そこに赴くなんて、言ってしまえば自殺行為だ。
行商人の行動には少し引っ掛かるところがある。
「ニエ村は大事な取引先なんです。あそこに何かあったらボクの生きる道が無くなる。だから向かうんです」
見上げた商魂だ。
あくまで商売道具を気に掛ける。
人命を軽視しているわけではないだろうが、その心意気はまさしく商売人だ。
「ねえ?この布は何?」
ユウナは荷台に置かれていた布を手に持って質問する。
真っ白で大きな布、それが何枚もある。
「それは商品を包むものです。運んでるときに汚れたりしちゃいけませんから。寒かったら使っていいですよ」
「取引先はニエ村以外にあるのか?」
「ありますけど、今日はニエ村だけです。それがどうかしました?」
「いや・・・」
煮え切らない俺の態度に行商人は首を傾げる。
だがすぐに切り替え、俺たちに注意喚起をする。
「加速しますよ!気を付けてください!」
さらに加速した馬車は山の奥へと突き進んでいく。
木々の隙間から夕暮れの空を彩る陽が見える。
このままいけば夜になる前に着けそうだ。
「間もなくですよ!」
「俺は魔物たちを殺して回る。自分の身は自分で守ってくれ」
「それは大得意です。任せてください」
視線の先には、目的の村の入り口があった。




