十年の成果
「ガアアァアアー――!!」
目の前に立ちはだかるのはミノタウロス。
その咆哮は草をなびかせ、木を揺らした。
いつだったか、ミノタウロスに遭遇したことがあった。
その時の無力な俺には、ミノタウロスは恐るべき怪物だった。
だが今の、力をつけた俺にとってはただの魔物に過ぎない。
掌をミノタウロスに向け、魔力を集中させる。
「ガァア!!!」
ミノタウロスは雄たけびをあげ、襲い掛かってくる。
今まさに俺が攻撃しようとしているのを感じ取ったのだろう。野性の勘というやつか。
「『ボウラマ』」
構えた手の先に巨大な火の玉が生成される。
生成された直後、火の玉は急速に凝縮され、眩い光を放つ球が出来た。
そして、その球から一筋の光線が走る。
光線はミノタウロスの眉間を貫き、その命を絶った。
火の上級魔法『ボウラマ』。
高熱のレーザーを放つ魔法。
俺がこの十年間で会得した二つの上級魔法のひとつ。
「これなら大丈夫そうだ」
サンタナ領を出て、大体半日。
とりあえず王都に向かおうと歩いていた途中、遭遇した魔物。
この十年間で自分に力がついてるのは疑うまでもない。
ただ、どこまで通用するのかは分からなかった。
しかし今の戦いで少し自信がついた。
今の俺には魔物を殺すに足る力がある。
「もう少し歩いて野宿にするか」
一人呟き、王都に向けて歩き出した。
* * * * *
陽が傾き始め、そろそろ野宿の準備をしようとしていた頃。
遠くから人が走ってくるのが見えた。
「冒険者の方ですか!?助けてください!!」
白い服を着た茶髪の女性。
彼女が走ってきた後ろには魔物の集団が見えた。
「あれは・・・ゴブリンか?」
子供くらいの身長の異形の者たち。その肌は緑色。
ダグラス達から教えられた特徴と一致している。
そのことを確認した俺は腰に携えた剣を抜き、構える。
「集団で襲ってきます!気を付け・・・」
「『ヒュルング』」
女の声を遮り、風の中級魔法を唱える。
俺は『ヒュルング』を剣の刀身に纏わせた。刀身を中心にして、渦巻く風が現れる。風の魔法剣の完成だ。
そして構えた魔法剣を、まだ距離のある魔物の集団に向けて振り抜いた。
刀身に纏わせた『ヒュルング』は振り抜いた先に解放され、ゴブリン達に襲い掛かる。
ゴブリンらは、なすすべなく鋭利な風に切り裂かれる。
目を切り裂かれ、胴と脚を分かたれ、腕を切り落とされ、骨を断たれる。
まるで水風船が破裂したかのように血を吹き出し、緑の集団は赤黒く染まった。
一瞬にしてゴブリンの集団は崩壊した。
全てのゴブリンが動かなくなったのを確認して、後ろにいた女に向き直る。
「それで、あんたは誰なんだ」
「あ、ああ、ええと・・・。私はユウナ」
ユウナ、そう名乗る彼女は目の前で起こった出来事に驚愕していた。
「ではユウナ。魔物は殺した。どこへなりと行くと良い」
「あ!ちょ!待って!」
ユウナは慌てて声を出す。
確かに、夜も近い。そんな中、放り出すのは人情にかけるな。
「そうだな、今夜は動かない方が良い。夜が明けたら・・・」
「村が襲われてるの!助けて!」
俺の言葉を遮り、彼女は助けを求めた。




