表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
八章 聖都ガレルス
141/148

誘拐

 宴は何事もなく終わり、俺とコユキは次の行動を思案していた。


「今日はもう暗いから、ここに泊まるとして、明日からはどうする」


 俺はコユキに尋ねた。


「俺としては、早めにユウリと合流すべきだと思うんだが」

「妾は、もう少しここに居たい」


 その返答は、普段の活発な様子とは異なり、どこかしおらしさを感じさせた。


 しかし分からない。

 この村の一体何がコユキを惹きつけるのか。

 ここは一見すればなんの変哲もない普通の村なのだ。

 そこが怪しいと思う気持ちも分からなくないが、村人が危機に瀕しているわけではない以上、俺たちがこの村で出来ることは何も無い。

 しかし・・・・・・


「コユキ、どうしてもここが気になるのか?」

「ああ」


 コユキはこう言っている。おそらく梃子でも動こうとしないだろう。


「分かった。お前の気が済むまで待つ」

「例えばお前が居なくなったとしても、妾はここに滞在するつもりだったぞ」


 癪に障る回答が返ってきた。


「そうかよ」

「だが、ありがとう」

「・・・・・・まあユウリなら一人でも問題ないだろうしな」

「お、お客さん。今日はここに泊まっていきますよね?」


 コユキと話しているところに、村人の一人がやってきた。


「ああ、そのつもりだ」

「でしたら、お客さん用の家が空いてるのでそこで寛いで行ってください」


 よそ者に空き家を貸すとは、かなり豪勢なもてなしだな。

 そんな事を思っていると、コユキが村人に向けて口を開いた。


「のう、ひとつ聞きたいのだが」

「なんでしょう?」

「昨夜までここには妾たち以外の客人が居た。間違いないか?」

「ええ、その通りですが・・・・・・」

「それは何人だった?」


 コユキが一体何を聞き出そうとしているのか、俺にはさっぱり分からなかった。

 それは村人も同じだったようで、困惑しながら答える。


「三人、でしたけど・・・・・・?」


 脊髄が急激に冷えたような感覚がした。


 三人?


 俺たちがあったのは二人だ。


 仮にその二人がこの村から逃げてきたんだとしたら・・・・・・


 あと一人は一体どこに行ったんだ?


「二人ではなく、三人なんだな?」

「ええ、はい」

「そうか。下がって良いぞ」


 コユキが言うと、村人は去っていった。


「おい、コユキ」

「やはり、何かある」


 昨夜、この村には三人の客が居た。

 ではあと一人はどこへ行ったのか。

 そして逃げてきた二人が見たという獣とは何なのか。


 俺たちは色濃く漂う疑惑を胸に、村の空き家て眠りについた。


* * * * *


 突然、後頭部に強い衝撃が走り、目を覚ました。

 車輪のようなものが遠ざかっていく音が聞こえる。


 眠りから覚めて数秒、ようやく思考が冴え始めた。


 ここはどこだ?

 何で俺は森の中で寝ている?

 俺は確かに村の空き家で眠っていたはずだ。コユキと一緒に・・・・・・。


 そうだ、コユキはどこにいる?


「コユキ!いるか!?」

「そう大きな声を出さんでも聞こえておる」


 コユキはすぐ隣にいた。

 ひとまずほっとする。


「コユキ、この状況は何だ?」

「分からん。何者かに攫われた、と見るのが妥当だろう・・・・・・」

「攫った奴らの姿が見えないのはどういうことだ?」

「さてな」


 誘拐犯がいるのだとすれば、俺たちをここに置いていく理由は何だ。

 人売りに身柄を渡すため?それとも単に邪魔になったから?

 理由は分からないが、ここに留まっていても仕方ない。今は移動しよう。


「コユキ、行くぞ」

「ああ」


 俺たちは森の中を歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ