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はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
七章 王都戦争
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資格

「師団長のお知り合いですか?」


 それは俺に向けられた言葉だった。

 声の主は、気弱そうな男だった。装いから見るに戦闘員では無さそうだ。察するに衛生兵のような役割だろうか。


 それが分かった途端、俺は質問した。


「なあ、エルはどうしてこうなった?」


 男は少したじろいだ後、おずおずと答えた。


「どうやら敵軍が持っていた爆弾が地面に埋められてたみたいで、そのせいで・・・」

「治せないのか?」

「えっと、その・・・」

「治せないのかよ!?治癒魔法があれば治せるんじゃねえのか!?」


 煮え切らない男に、俺は痺れを切らして声を荒げた。


「で、でも、僕は治癒魔法は使えなくて・・・」

「だったら連れてこい!!」

「おい」


 コユキが俺を制止するかのように声を掛けるが、今の俺にはその声に従うほど冷静ではない。


「早くしろ!!」

「アルマ!」


 変わらず声を荒げる俺に、コユキは今までになく大きな声で呼びかけた。


 苛立ちながらも、俺は男からコユキの方に視線を向けた。

 しかしコユキの視線は俺ではなく、エルの脚を見ていた。


「エルリアルの脚をよく見ろ」


 もう一度、エルの足を見る。

 見返しても、そこにある現実が変わるはずもなく、膝から下は丸みを帯び、あったはずの足は無くなっていた。

 それを確認するたび、俺の中で暗い何かが渦巻いた。


「傷が塞がっている。おそらく足を失った直後、自分で治癒魔法をかけた。その後、気絶したのだろう」

「・・・」

「まだ気づかんか。治癒魔法なぞかけても、足が生えてくることは無いという事だ」


 天地がひっくり返ったような感覚だった。

 突き付けられた新たな事実を前に、俺は訳が分からなくなった。


 いや、仮に俺が冷静だったらすぐ気づいていたはずだ。

 もしくは気づいていたのに、目を背けていたのかもしれない。自分の思い通りにならない事に、駄々をこねる子供のように。


「エルの足は治らない・・・」

「負った傷を直す事はできても、失ったものを取り戻す事はできない。魔法は万能ではないということだ」

「そんな・・・」


 ダグラスとスミシーにエルを守ると言って、戦場に出向いた。それがこのざま。

 これから俺は、ダグラスや、スミシー、何よりエルに、どんな顔して関わればいい。


 いや、そうじゃない。

 バルゴやクレシオに続いて、エルまでこんな目にあった。

 俺が関わったからこんな事になった。

 俺には、エル達に関わる資格なんてないんだ。



 

 それから二日して、王都軍は戦場を離れた。その二日の間にエルの意識は回復したらしいが、俺は一度も顔を見せてない。


 そこからさらに一ヶ月半、王都に帰投した兵士達に人々は歓声をあげた。戦争は王都の勝利に終わり、しばらくの間、街は一段と活気に溢れていた。建都祭と同じか、それ以上の盛り上がりだった。


 その賑わいを、俺は宿の暗い部屋の中で聞いていた。

 どん底まで沈んだ気分を引きずったまま、街に繰り出そうとは、到底思えなかった。


 俺がそうしてから何日かが経過した頃、俺の元に客人が来た。


「アルマ!いるか?」 


 部屋の外で俺を呼ぶ声は、ユウリの声だった。

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