表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はたして俺の異世界転生は不幸なのだろうか。  作者: はすろい
七章 王都戦争
103/148

力と速さ

 十年もの間、戦闘技術を叩き込まれたフォートレス家の庭。まさかもう一度、この場所でダグラスから稽古をつけてもらえるとは思わなかった。

 出来ることなら穏やかな状況下で鍛錬したかったが。

 逆に言えばこんな状況でもない限りこんな機会は無かったかもしれない。


「さて、それじゃあ始めよう」

「はい!」

「実践訓練、の前にこれからアルマに必要になる能力を整理しよう」


 ダグラスによる講義が始まった。


「結論から言えば、アルマに必要なのは単純な強さと、速さだ」

「速さ、ですか?」


 鍛錬自体が強さを向上させることが目的だ。

 だが、そこに速さと付け足した。そこにはダグラスの何らかの意図が含まれているのは明らかだ。


「アルマは近接戦闘を得意としている、でいいな?」

「はい」

「対してエルは魔法部隊、つまりは後衛だ。前衛と後衛では距離がある。すぐさまエルの元へ駆けつけるためには速さが必要だ」


 確かにそうだが・・・。


「それなら、得意ではないにしろ俺だって魔法は使えます。だったら俺が後衛に加われば済む話ではないですか?」


 最初からエルの近くに居れば、速さが必要にはならない。


「それは自陣に敵が入り込んだ事を前提にしているな?」

「ええ、それはまあ・・・」


 後衛のエルに危害が及ぶのだとしたら、敵の後衛による攻撃、もしくは自陣に敵兵が侵入した時だ。

 しかし俺の役目は近接戦闘によるエルの護衛。とすれば自陣に敵兵が侵入してきた時こそ、俺が役に立てる時だ。


「そもそも、そもそもだ。自陣に敵兵が入り込む、という状況を作り出してはならない。言ってしまえばそれは、最悪の場合だ」

「・・・だから俺が前衛で、戦線維持に努めるって事ですか?」

「上出来だ」


 戦場での俺の役割。それは二つ。

 一つは、さっきも言った戦線維持。敵をできる限り多く倒して、敵兵の侵入を防ぐ。そのためには何より、俺自身の力量を底上げする必要がある。

 もう一つは敵兵が侵入した時、俺がエルの護衛につく事だ。その際に速さが必要とされる。


「分かりました。やりましょう」

「よし。じゃあ始めよう」


 そうして鍛錬が始まった。


 剣術稽古。

 変わらずダグラスの猛攻は凄まじい。相当の重量があるだろう大剣を、まるで棒切れのように軽々と持ち上げる。そこに技術が加わり、それは剣技として成り立っている。


 防ぐ、逸らすで精一杯。攻撃に移る隙がない訳ではない。しかしそこに攻撃を入れたところで、反撃を喰らってお陀仏だ。

 普通じゃ崩せない。ただの攻撃ではダメだ。強力なものじゃないといけない。


 だったら・・・。


 向かいくる大剣を掻い潜り、刀身に風を纏わせて、振り抜こうとした。

 その時。


「待った」


 ダグラスから制止がかかった。

 困惑しつつも構えた剣を下げた。


「考えろ。その魔法剣を、周りに味方がいる状況で薙ぎ払えばどうなると思う?」


 ダグラスから問われたことに思考を巡らせる。

 この技を俺は何度か使っている。それは広範囲にわたって強力な攻撃が可能だからだ。

 それを周辺に味方がいる中で使うとなれば・・・


「味方が被弾する可能性がある?」

「そうだ。前線ともなれば、敵味方入り混じる混戦になる事が予想される。そんな状況でその技は使えない。まして自陣で使うなんてのはもっての外だ」


 魔法剣を使う事は出来ない。

 それが今回俺に課せられる制限だ。


「まあ、その辺は鍛錬していく中で解消される問題だ。今悩むべきは速さだ」


 筋肉がつく事で力が向上する。

 しかし同時に体重が増加する。それによって鈍くなることも考えられる。


 となれば自分の身体能力だけでなく、補助を使うことも視野に入れて・・・。

 しかし補助ってなんだ?この世界にはパワードスーツなんて無い・・・と思う。


「そうだ!」

「どうした?」

「速さを向上させる方法ですよ!」

「ほう、見せてみろ」


 うまくいくか分からないが、やってみる価値はある。


「あ、ちなみになんですけど。攻撃を目的とした魔法の使用は大丈夫ですよね?」

「もちろん、周りが被害を被らない規模なら問題ない」


 その返答に、俺は大きく頷いた。


 そして足元に風魔法を、空気が噴射するのをイメージして発動させる。

 その瞬間、足元を中心に、全身が押し出される。その勢いに耐えきれず、俺は無様にすっ転んだ。


「ガッ!!」

「ほう」


 俺は大の字に寝転がり、顔を覗き込むダグラスと目を合わせた。


「どうですか?」

「悪くない。よし、それに慣れることを目標にしていこう」

「分かりました・・・・・」


 鍛錬の方針が決まったようだが、今はとにかく転んだ時に打った後頭部が痛い。痛みが引いたら即座に鍛錬を再開しよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ