表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対最強女子高生 〜わたし陰陽師ってやつです。先生、式神になってくれません?  作者: 猫の玉三郎
ひとりコックリさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/42

九話  と コッ り  

 三葉は藁田と別れると保健室へと向かった。

 確固たる目的はないけれど下校前に辰野に会えたらな〜と下心はあったりする。放課後の廊下にひと気はなく、保健室への道はどこか薄暗い。


「おい、三葉」


 呼び止められて振り返ると辰野こちらへ小走りでやってきた。三葉を探していたようだ。額にうっすら汗がにじんでいるけれど、薄手の半袖シャツとグレーのスラックスは涼やかである。


「言われた通りにしたが、いまだに状況がわかってないぞ。自販機で水を買ってこいとか……もちろん説明してくれるんだろうな」


 困り顔の辰野。イアンはちゃんと伝えてくれたし、辰野もその通りに応えてくれた。三葉は嬉しくてその気持ちがそのまま顔に出る。


「えへへ」

「えへへじゃない」


 あきれたように怒られた。

 仕切り直し用にこほんと咳払いをひとつ。


「今、一部生徒のあいだで『ひとりコックリさん』が流行っているんです。江古田さんはそれをやって具合悪くなってしまいました」


 事情をかいつまんで話すと辰野も「俺が学生だった時もそういうの流行ってたなぁ」と相槌をうった。


「しかしなんで俺なんだ。いや、困ったことがあったら言ってくれていいんだが、もう少し近場に先生がいたんじゃないか」

「先生じゃなきゃダメだったんです」


 コックリさんをやってよくないモノが来た、先生があの場に来てみんなの不穏な空気が和らいだ、持ってきてくれた水で江古田は回復した。そう力説しても辰野は苦笑を浮かべるだけだった。ぷうっと頬を膨らます。自分でも幼いと思うけれど、先生になら許される気がした。誰にでも見せるわけじゃない。


「先生の中には神さまがいます。弱い霊だったらすぐに逃げ出すくらい、先生には神さまの力があるんですよ」


 三葉のまっすぐな瞳が辰野を見る。その力強さに及び腰になってしまうのは仕方ないのかもしれない。


「信じられませんか?」

「い、いや、その」


 あの日のように、三葉の手が辰野の手をそっと握る。小さくて柔らかい手だ。同時に辰野はあの不思議な体験を思い出していた。生徒指導室に現れた恐ろしいものと、それと戦う三葉。式神として従うこと承諾し、とどめを刺したことも覚えている。


 自分の中には神がいて、周囲の人がよく差し入れしてくれるのはその神を無意識に崇めているからと三葉は言った。だが内容が内容だけにすんなり受け入れるのも難しく、普段はあまり考えないようにしていた。自分が特別な存在かもというのは思春期ならともかく、大人になってからはいささか恥ずかしい。はいともいいえとも言えなかった。


「……ごめん三葉、誤解を生みかねないから手を離してくれ」


 ここは廊下で誰が見ているかわからない。本人にその気はなくても他人はわからない。お互いの立場を守る為にも正しい距離感は大事だ。


 三葉は何も言わずに手を離した。少しだけ寂しそうに笑って、一歩後ろへ体を引く。


「わたしにとって先生は特別な存在です。……あ、いえ、その、恋愛感情とか、そういうのではなくて」


 視線を泳がせ珍しくごにょごにょと口ごもる。それを見て辰野は笑った。三葉はすごくしっかりしていて、自分よりもずっと強いと思っていたが、こうしてみるとやっぱり学生だ。


「わかってる。困った事があったらまた言えよ」


 あの時の恩返しじゃないが、力になりたいと思う。



 ◇



 辰野と別れると三葉は下駄箱へ向かった。そこに見慣れた人影を見つけて思わず苦笑する。


「先に帰っててよかったのに」

「だってぇ……」


 そこにいたのは涙目でたたずむ石田イアンだった。さっきの事が怖くてひとりで帰れなかったらしい。三葉とは昔から知り合いで、気は弱いし体も小さいので男の子という感じがしない。同性の友人だという感覚だ。


「じゃあ帰りましょうか」

「うん。ごめんね、みつばちゃん」


 イアンは昔から霊に絡まれる体質で、小さな頃から泣き虫だ弱虫だとからかわれていた。その度に助けていたのが三葉だったので、今でもイアンは三葉にべっとりなところがある。イアンにとっては白馬の王子さま的な存在なのだろう。


 ふたりで歩く帰り道。並ぶと身長はほとんど変わらない。


「またあんなことが起こるかのな」


 イアンが不安げな声でたずねた。


「起こってほしくないけどなんとも言えません。どれくらい流行ってるんでしょうね」

「知ってる人はそこそこいると思うな。ボクのクラスでも休み時間にやってる人みかけたよ」


 ふむむとあごに手を当てて考えるが、かと言って光明が浮かぶわけでもない。三葉にできるのは注意喚起くらいだ。今日みたいに目の前でことが起きれば対処もできるけれど、毎度そう都合よくはいかないだろう。


「それにしても……藁田さんだっけ? あの人すごかったなぁ。ボクと同じくらい気が弱そうなのに、たまに豹変するんだもん。あれだったら霊の方が逃げ出しそうだし、女の子たちが頼りにするのわかるかも」

「ふふ、本当ですね。優しい人だし、わたしも今度ゆっくりお話してみたいです」


 ひとまず『ひとりコックリさん』は然るべき場所に報告しておこう。そこで指示が出れば従うのみだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ