表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対最強女子高生 〜わたし陰陽師ってやつです。先生、式神になってくれません?  作者: 猫の玉三郎
ひとりコックリさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/42

六話  とりコック さん

「このコックリさんはね、集中力をあげるおまじないなんだよ」


 呼び出した霊に何かを教えてもらうのではなく、「コックリさんコックリさん、お願いします」と繰り返し唱えることで意識が集中し、終わった頃には頭がスッキリするという代物なのだそうだ。


 紙面に置いた硬貨に指をのせて、目を閉じて気持ちを集中させる。体はできるだけリラックスさせて、声は自分が出しやすい大きさでいい。


 言葉を唱えていくとだんだんと周りの音が聞こえなくなり、集中しているようなリラックスしているような不思議な感覚に陥るそうだ。時間は十五分もすれば充分。しかし時間の感覚がなくなる時があるのでアラームをセットしておけばより安心だ。


 ちゃんとできると終わった時にすごく頭がスッキリして、勉強のリフレッシュにぴったりなんだと田代は言った。藁田が考え込む。


「……確かに、降霊というよりトランス状態に入る条件に近いかも」


「トランス状態?」と誰かが言ったので藁田は軽く説明した。潜在意識と健在意識の中間。眠りに入る直前の意識が広がる不思議な感覚。その状態になると高い集中力を発揮したり、潜在能力を解放するのだと言われている。スポーツ選手がここぞという場面で時間がコマ送りのように感じるのもこのトランス状態だという人もいる。


「一定の条件下で瞑想したり音を聞いたりすると入りやすいって聞いたことある。霊媒師が数珠の音でトランス状態に入るっていうのもよく聞くし」


 藁田が腕を組んで小さくうなった。しかし素人がそう簡単にできるものじゃないと思う。あの少し変わったシートがいくらか補助をしているのかもしれない。


「ひとりコックリさんは危ないものじゃないってみんな言ってたの。だから……」


 田代は泣き出しそうだ。安全だと聞いていたのに江古田にあんなことが起こってしまったのだ。部室の空気がわずかに重くなったとき、廊下からのん気な声が聞こえてきた。


「おーい」


 声をかけたのは教師の辰野だった。


「生徒が具合悪いって聞いたんだが、大丈夫か。水持ってきたけど」


 辰野の後ろにはイアンがいた。呼びに行ったのはきっと彼なのだろう。大人の登場に全員がホッとした顔になった。


 真っ先に動いたのは三葉で、辰野から水のペットボトルを受け取ると江古田の元へ行き、飲むように進める。江古田はお礼を言って口をつけたが、そこで藁田ははたと気付いた。


 三葉が来たのは誰もいない机が動き出した時だ。

 なのにどうして江古田が一番被害にあったことを察している?


(具合が悪そうなのは確かだけど、みんな似たり寄ったりだし、江古田さんがコックリさんをやってたって誰も言ってないわ)


 だからと言って何が変わるわけではないが、藁田にはそのことが妙に気になった。江古田は辰野に付き添われて保健室へ行き、残った面子はそれを見送ると再び肩を落とした。


 もう解散しようか、という空気が出ている。藁田としては異常現象もおさまったし、ひとりコックリさんの概要も聞いた。これ以上付き合う必要もないかと腰を浮かせる。江古田さんがどうしてああなったのかはわからないが、因果関係まで突き止めようなんて酔狂なことはしない。せいぜい二度とするなと釘を刺す程度だ。しかし——


「このコックリさんの紙、一般的なやつとだいぶ違いますよね」


 三葉が差し出した一枚の紙に全員が息をのんだ。先ほど江古田が使っていたものだったからだ。よくもまあ持ってきたものだと藁田はあきれてしまう。


 ただ藁田もその紙を見た時に変わっているなと思った。あいうえおの五十音もないし、はい・いいえもない。呼び出したコックリさんに質問するわけではないから紙もその仕様なのは分かるのだが……


「中心に鳥居のマークがあってその周りを平仮名で丸く囲んでいますよね」


 三葉は文字を指先でなぞる。藁田には意味がある文字列とは思えなかった。ぱっと見た場所は『よたれそつねな』で、意味など到底感じられない。答えたのは田代だった。


「鳥居を囲んでいるのは『いろはにほへと』だよ」


 真上にある「い」の字から右に周ると


 いろはにほへと ちりぬるを

 わかよたれそ つねならむ

 うゐのおくやま けふこえて

 あさきゆめみし ゑひもせすん


 なるほど、見れば確かにそうだ。四十八の文字で作られたあの『いろは唄』である。三葉が何かを考えるように口元に手をやった。


「藁田さん、さっきこの儀式はトランス状態に入るための条件がいくつか当てはまるって言ってましたよね」

「えっ、あ、はい」


 突如話しかけられて藁田はどきりと跳ねた。彼女は何を言うつもりだろう。


「いろは唄というのは、仏教を由来としたありがたいものなんです」


 三葉はペンを取り出して紙に文字を書き出す。


 色は匂へど 散りぬるを

 我が世誰そ 常ならむ有為の奥山 今日越えて浅き夢見じ 酔ひもせず


「花も咲いては散るように、命の前に永遠はない。そのことを悟れば、儚い夢を見たり己に酔うこともなく安らかな心地になりましょう……だいたいこんな内容です。仏教がもとですし、もしかしたらこの言葉に力があってよりトランス状態に入れたのかもしれませんね」


 ほお。藁田の口から感心の声が漏れた。おもしろい考察だ。しかしそれがさっきの怪現象とどう繋がるのかはさっぱりわからなかった。


「問題はこの鳥居です」


 三葉が指で示すマークをじっと見た。

 ありがたい言葉に囲まれているはずなのに、どこか怖い感じがするのは何故だろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ