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絶対最強女子高生 〜わたし陰陽師ってやつです。先生、式神になってくれません?  作者: 猫の玉三郎
冥府の嫁御寮

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二十四話 いざ書するは暇状

 三葉から冥婚についての説明は受けたが、藁田にはいまいち理解できないことがある。


 ぶっちゃけてしまえば冥婚とは、よかれと思って親が押し付けた見合いみたいなものだ。しかも相手は封筒を拾った人という運ゲー。自分が霊の立場だったらイヤだと藁田は思う。その気持ちだけ頂いてさっさと成仏したいだろう。


 それにだ。殺されて悔しいとか、イジメたやつらが恨めしいとか、なんらかの強い想いを残して亡くなった者の思念が霊を形作るのなら、死後にあてがわれた夫を好いたり恨んだりするのはおかしくないだろうか。


 自分の未練とは関係なく結婚させられて、それが嫌で暴れているんだろうか。それとも……


 思ったままにそう口走ると「そうなんです」と三葉がきらりと瞳を輝かせた。


「きっと生前からの執着なんですよ。結婚させてあげたいっていうご両親の気持ちじゃない。あの霊が誰かと結婚したくてやってるんです。夫が死んだら次の人を見つけるほど結婚に執着してる」


 もしかしたらその封筒も自分で用意したのかもしれない。となればそれは立派な呪いのアイテムだ。


「その女性がどこの出身で、どういう人だったか。なぜそんなに結婚へ強く終着しているのかはわかりません。だから説得の仕方もわからなくて」

「幽霊の押しかけ女房ってやつか。でもあっちが勝手に妻になったんだから、こっちも離婚できる道があるんじゃないの。冥婚って言っても形式的なものじゃん。だからこっちも形式さえ整えれば……」


 藁田の言葉に三葉がハッと目を見開いた。


「つまり相手が認めざるを得ない離縁状を用意すれば——」


 突然がっしりと手を握り込まれた。三葉の白い両手が藁田の手を包んでいる。ワケが分からずに三葉を見ると目をキラキラさせて満開の笑顔を浮かべていた。


「藁田さんありがとう! わたし、ちょっと電話してきますね!」


 そう言って三葉は走ってどこかへ行ってしまった。

 なんだったんだと思うのと同時に、少しだけ心がホカホカしている。誰かの役に立てた、ニッチな話題が楽しかった、話せて嬉しかった。そんな感情がふわふわと込み上げて、うっかりニヤつきそうになる。そんな顔を見られないように、藁田は残りの通学路を下を向いて歩いていった。



 ◇



 すっかり憔悴した渡瀬を放ってはおけず、辰野はアパートを出れないでいた。最悪、渡瀬のバイクを借りて行けば間に合う時間なのだが、このまま家を出ていいものか非常に悩む。それほどに昨夜の渡瀬の行動が常軌を逸していた。黒翔が起こしてくれなければ渡瀬を止めることができず、あのまま玄関の外へ行っていただろう。夢で操り外へ出るように仕向けられると、もうどこが安全なのかがわからない。


 あの後は渡瀬は寝るのが怖いと言っていた。しかし極度の緊張に体が耐えきれず、明け方近くに気絶するように眠ってしまった。妙に目が冴えてしまったので辰野はずっと様子を見ていたが、渡瀬が夢に引っ張られることはなかった。


 もう出発しないとなると、遅刻か、欠席か連絡をいれなければいけない。受け持つクラスや授業のことを思うとどちらも躊躇われた。しかし渡瀬も放っておけない。


 胃をキリキリさせながら悩んでいると、突然電話がかかってきた。反射的に通話ボタンを押すと——


『もしもし、三葉です! 渡瀬さんに今すぐ試してもらいたいことがあるんですけど、近くにいらっしゃるなら代わってください!』


 辰野は慌てて渡瀬を揺り起こし、電話だと告げた。「も、もしもし……」と最初は寝ぼけた声だったが、すぐに意識が覚醒したのか急にまじめな顔つきなる。三葉といくつか言葉を交わしているのを見ていると、渡瀬が急に辰野の方を振り返った。


「隆宗、白い紙とペンを持ってきて」


 縋るような表情に、辰野はすぐに紙とペンを持ってくる。A4のコピー用紙とボールペンだ。以前三葉から言われてお守りを書いたことがあったが、渡瀬にも同じようなものを書かせる気だろうか。


 渡瀬は三葉から指示を受けながら紙に文字を書いていく。そんなに長い文ではないようだ。気になって首を伸ばし覗いてみた。


『縁薄かったことにより、いま離縁を申し上げる。自今以後、再縁改嫁のこと心任せに』


 その後ろは今日の日付と渡瀬智也の署名があった。渡瀬はスマホを耳に押し当てたまま器用にバッグを漁り、判子を取り出すと署名の後ろにポンと朱印を押した。さらに自分の財布からお札を何枚か取り出す。


 そしてあの因縁深き夫婦鶴の描かれた封筒を持ってくると、その紙とお金を封筒の中に入れた。


「できたよ」


 難しい顔で渡瀬はそう告げ、いくつか言葉を交わすと電話を切ってしまった。辰野はすかさず渡瀬に詰め寄る。


「おい智也、いったい何したんだよ」

「離縁状だって。詳しいことは後で説明するから、まず言う通りにしてほしいって言われた」


 離縁状と言われてもピンとこないが、ようは離婚届みたいなものだろうか。


「よくわからんけど、『三行半(みくだりはん)を突きつける』ってやつだって」


 それで霊との縁を断ち切れたはずだから様子を見てほしいと言われたようだ。その封筒は無造作に机の上に置かれていた。渡瀬はビクビクしながら横目でそれを見ている。


「その封筒、絶対に触るなって。俺もおまえも。封筒に触った男はアイツに付け回されるんだとよ」

「じゃあそれどうするんだよ。捨てるにしても触ってしまうだろ」

「電話の子、三葉ちゃんだっけ。後であの子が取りに来たいって」

「……はあっ!?」


 衝撃的な報告にがつんと頭を殴られた気分だった。三葉との電話内容を最初から最後まで全部おしえろと吠えそうになった時、渡瀬が時計を見てぎょっとした。


「うわ、もうこんな時間じゃん! 隆宗、さっさと家でないと遅刻するぞ! バイクで送ってやるから」

「いや、しかし」

「いいから! 俺のせいでお前の教師生活がおしゃかになったんじゃ死んでも死にきれねえよ」


 てんやわんやでアパートを出ると二人してバイクにまたがり学校へ送ってもらう。時間ギリギリに出勤できてなんとか事なきを得た。しかしいろんなことが気になりすぎて、その日はずっと集中できなかった。睡眠不足もあるのかもしれない。


「せんせー、そこ間違ってまーす」


 板書にも誤字脱字で生徒から突っ込まれる始末。

 どうしてこうなったんだ、と辰野はさんざんな一日を過ごすことになった。



 ◇



 そして放課後。職員室で書類を整理していたところ、スマホに一通のメッセージが来た。相手は渡瀬で、トークアプリに『今日は何も起こらずいたって健やかに過ごせた』と書いてあった。気分もスッキリ、ここ最近の憂鬱がぜんぶ吹っ飛んだ感じがするとまで言って、ご機嫌なスタンプもぽんぽん送ってきた。思わず肩の力が抜ける。


(解決……したってことか?)


 続けてメッセージが来たので何気なしに開くと、それは電話番号を介して送られるショートメールだった。


『三葉です。例の封筒を取りに、先生のおうちに行ってもいいですか?』


 見た瞬間、言葉にならないうめき声を漏らしてしまった。辰野はスマホを持って職員室を飛び出た。背中には大量の汗が吹き出し、口から内臓が飛び出してしまいそうだった。

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