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絶対最強女子高生 〜わたし陰陽師ってやつです。先生、式神になってくれません?  作者: 猫の玉三郎
冥府の嫁御寮

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二十三話 突き止めるは冥婚

 木曜の朝はなんとなく体がだるい。金曜は週末でテンションが上がるが、木曜日はそんな希望もなく無駄に疲れる。だがその日の藁田みよのテンションが低かったのはきっとそれだけではない。


(アレはなんだったの……)


 三葉を尾行していたら彼氏風の男と合流してバカでかい公園へ行き、高校生とは思えないほど健全に遊んでいた。途中から何をやっているんだと思うも、ここまで来たらと後に引けず、高校生の男女がフリスビーや鬼ごっこらしきかけっこ、指相撲をする様子をひたすら見守っていた。虚無を抱く以外のなにものでもなかった。


 三葉への謎はますます深まるばかりだ。

 一緒にいたあの男。通うだけでもステータスと言われるお金持ち私立学校の生徒だった。本人も見目麗しいが、藁田が注目したのはそこではない。彼が身につけていたあの黒い手袋が、藁田のレーダーに引っかかる。


 藁田のオカルト情報収集は主にネットが中心なのだが、都市伝説や怪談だけではなく、超能力にも手を伸ばしている。


 超能力は思念により引き起こす超常現象のことだ。テレパシーやサイコキネシス、パイロキネシスなどその能力も多岐にわたっており、実際に公的機関が研究をしていた分野である。


 その中のひとつであるのが念視。サイコメトリだ。

 サイコメトリについて藁田の記憶でいちばん古いものは以前テレビでやっていた特別番組だった。


 海外の能力者が警察から要請を受け、行方不明者の痕跡を追うためにサイコメトリを行うというものだった。当時幼かった藁田は詳細までは理解できなかったが『手をかざすと何かがわかる』という特別な力に魅入った。


 自分で調べ物ができるようになると、海外ではサイコメトリの使い手は警察と協力関係を築く場合があると知って心の底から感動したものだ。


 今もそうやってネットの海から玉石混合のネタを拾い集めるのが好きなのだが、超能力界隈で時々浮上するのが、日本に強力なサイコメトリストが現れたというものだった。片っ端から脳に情報が入ってくるため常に手袋を着用しているとか何とか。


 警察からの要請も多く、その力で過去の未解決事件に進展をもたらしたとは(まこと)しやかに囁かれていた。もちろんデマもあるのだろうが、その能力者の存在に信憑性を感じるのだ。


「あ、藁田さん」

「ふぇっ!!」


 一気に考えごとが吹っ飛んでいった。慌てて声のした方を向くと三葉が小走りで近づいてくる。もうすぐで校門に差し掛かろうという所で、他にも生徒がちらほらといる。登校ラッシュを避けるためにだいぶ早めに学校へ行っているのだ。


「おはようございます」

「お、おは、よう……」


 緊張で声はうわずり、ばっくんばっくん鳴る心臓が口から飛び出てきそうだ。となりに来た三葉は朝からキラキラしていて女子力の存在を痛感する。やはり間近で見るものではない。やはり自分は遠くからストーカーのように眺めているのがお似合いの陰キャ……そう考えているとポロッと口がすべった。


「ごめんなさい、実は昨日、三葉さんのこと見てて」

「わたしも藁田さんに気付いてたし、見られて困ることはないので大丈夫ですよ」

「へっ!?」


 わりと遠くから見守っていたのに。それにこちらに気付いた素振りなんてぜんぜんなかったのに。全身から血の気がさーっと引いたのがわかった。しかし三葉は本当に気にしていないようで、ご機嫌に藁田の顔を覗き込んだ。


「ねえ、藁田さんって都市伝説に詳しいんですか」

「いや詳しいっていうか」


 ネットで片っ端から見ているだけだ。偏っているとも言っていいし、だいたいあの手の話は半分ネタとして楽しむもの。そのネタをいろいろ知っているという点では詳しいと言ってもいいかもしれないけれど。


「コックリさんの時に藁田さんを見ててすごいなーと思ったんです。それでゆっくりお話してみたくて」


 えへへと笑った三葉は可愛らしかった。それを素直に認めたくなくて藁田はぐぬぬと奥歯をかむ。そんなにすんなり話しかけてきたら昨日の自分が底抜けのバカみたいではないか。しかし話をしてみたかったのは自分も同じだ。もしかしたら二度とないチャンスかもと思い、藁田は鼻息を荒くした。


「私も、おなじ、です。三葉さんのこといろいろ知りたい」

「じゃあ今度一緒にお出かけしませんか。連絡先教えてください」

「え、あ……」


 気付けばトークアプリに新しい連絡先が増えていて、さすがの手練手管に陽キャぶりを感じた。嬉しそうに三葉はしているが、藁田ときたら地味だし冴えないしコミュ力はほぼない。こんな自分と連絡先を交換して、さらに言えば一緒に出かけて何が楽しいのだろう。まさかからかっているとか?


「あ、そうだ。霊と円満に離婚する方法知りませんか?」

「知るわけないやろがい」


 あ、と思った時にはすでに遅し。疑心暗鬼のところに突拍子のない質問に素が出てしまった。慌てて口を押さえても意味はなく、後悔と恥ずかしさから顔が熱くて熱くてたまらなかった。


「あはは、藁田さん顔が赤いですよ。かわいい」

「いや、その……ごめんなさい」

「ツッコミみたいでおもしろいです。ふふっ」


 楽しそうに笑う三葉にますます藁田は赤くなる。嫌な気分にさせたわけじゃないので良かったと思うべきだろうか。わからない。こういう時はたいがい相手が気分を悪くして去っていくので、三葉が楽しそうなのが信じられなかった。


 三葉はひとしきり笑うと小さく息をつき、表情を改めた。口元は優しいが瞳には剣呑なものが宿っている。


「すみません。実は、霊と望まない結婚してしまった人がいて、なんとか穏便に別れられないかとずっと考えてるんです。あまり時間がなくて」


 霊と結婚? 信じられなくて聞き返すが、答えは変わらなかった。


冥婚(めいこん)と言います」


 冥婚、と小さく口の中でつぶやいた。三葉は頷いて説明をしてくれた。


「一般的には亡霊婚と言って、死者と結婚する風習はわりと各地にあるんですよ。フランスにはちゃんと民法で認められていて、生前に結婚の意思があれば、相手が亡くなっていても結婚式を行うことができます」


 それと少しニュアンスが違うのが中国の一部地域にある冥婚だ。これは若い男が結婚せずに亡くなった場合、未婚女性の死体を用意して結婚させるというもので、これは新郎新婦ともに亡者である。


「死体と結婚って……」

「生きている人とは結婚できないから、せめて同じ領域の人間とって感じです。死者を慰める意味合いもあるでしょうけど……それで女性の遺体が売り買いされるそうです」

「そっちが呪われそう」


 そして台湾にある冥婚だ。

 若い娘が亡くなると赤い袋にお金や髪の毛を入れて道端に置いておく。お金は結納金で、それを拾った男性はその娘を妻として受け入れてもらうのだという。


 そしてこの台湾の冥婚に近いものが九州の一部地域にも残っているという。


「お金を入れた袋には良縁を結ぶ二羽の夫婦鶴。遺族はこれを道端に置いて、拾った男性に娘を嫁がせるというものです。それをうっかり拾ってしまったばっかりに、霊に取り憑かれている人がいるんですよ」


 なんとかしてやりたい、と横顔が物語っていた。


「その人は安全地帯にいるんですが、霊が強硬手段に出る可能性もあります。知り合いに除霊をお願いしたけどまだ時間がかかるし、せめて霊との因縁を断ち切りたくて」


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