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絶対最強女子高生 〜わたし陰陽師ってやつです。先生、式神になってくれません?  作者: 猫の玉三郎
冥府の嫁御寮

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十九話 求めるは手掛かり

 雅人は向かいの席に座ると、長い足を組み不敵にほほ笑む。遠くの席で女の子達の色めく声が聞こえた。


「先に報酬の話をしようか」

「……はい」


 黒い手袋を手が目の前に伸びて、三本指を立てた。三葉はそれに驚き、目を見開く。


「待ってください、それはちょっと——」

「これ以上は譲れない。他でもない君からの頼みだからここへ来たけれど、この条件で飲めないんなら僕は帰るから」


 三葉は時計をチラリと見て考える。非常に抵抗があるけれど、辰野のためにもここは自分がひと肌脱がなければいけない。目の前の男は確かに優秀で、一般人がほいほい依頼できるような気安い術者ではない。辰野が直接頼んでもこの男はすげなく一蹴するだろう。


「わかりました。それでお願いします」

「交渉成立。……じゃあ、場所を移動しようか」


 雅人は立ち上がると、三葉の荷物を持って外に出て行く。逃がさない為だろうか。三葉は肩を落としながら、グラスを専用カウンターへと戻す。出入り口へ向かう途中、女の子たちが「やばいカップル推し〜♡」とよくわからない事を言っていた。


 その女子グループのさらに奥の席に、完全にアウェイの空気を醸している人物がいた。呪文のようなメニューから適当に選んだロイヤルアイスココアーナをストローでちゅーちゅー吸いながら、去りゆく三葉の後ろ姿をガン見している。


(ひとりで何をするのかと思えば、彼氏と待ち合わせか? おのれキラキラ女子め)


 藁田みよだった。

 気付かれないように時間を置いて外に出ると、三葉たちの後をこっそりと見る。三葉にあの時の話を聞きたいと思うあまり、放課後に後をつけるというストーカーまがいなことをしてしまった。話しかけるタイミングを測っているうちに普段だったら寄り付きもしないおしゃれなコーヒー店に入り、小慣れた様子で注文する三葉の姿を見て、なぜか対抗心を燃やしてしまった。おかげで謎ネームの美味しいココアを飲むことができ、お財布がダメージを受けている。


 男と並んで歩く三葉。

 よくないんじゃないかと思いつつも、藁田は見失わないように一歩を踏み出した。



 ◇



 その頃、辰野は電話をしていた。

 相手は渡瀬である。


「そうか、それじゃ今のところ実害はないんだな」


 仕事先で時々変な視線を感じるけれど、それだけ。恐ろしい心霊現象にあったりするのかと思ったが無事だったと渡瀬は言った。


『お守りが効いたのかな。それとも日本酒持ち歩いたからかな』


 ただやっぱり不安だからと電話をしてきたらしい。その事にほっと胸を撫で下ろした。霊とかいう不確かな存在に振り回されている感は否めないが、世にはびこる怪談は霊に取り憑かれてケガをしたり精神を病んだり、最悪死んでしまう話が多い。渡瀬の身に降り注がないようにと願うばかりだ。辰野は昨日の会話を思い出していた。怖い体験をするようになったのは火曜からだと言った、そのあとのこと。


「——じゃあ、あいつが出始めたのは火曜日だとして、問題はそのきっかけだな。何か変わったことしたか?」

「普通に仕事して、帰って動画見たりゲームして寝てって感じだなぁ。どっか肝試しに行ったりとかもしてないし。変わったことって言われても……仕事柄色々やるからなんとも……」


 あごに手を当てて考えるこむ渡瀬。それを見て辰野はあきれたように息を吐いた。渡瀬は昔から自由なやつで、同期がリクルートスーツで面接地獄に陥っている横でさっさと近場の就職先を見つけ、地球のヘソがみたいとオーストラリアへ行ってしまうような奔放さを持つ。謎のバイトをいくつもこなし、休みがまとめるとふらっとどこかに出かけたり、逆の本を片手にのんびり過ごしたりと自由あふれる男だった。


 なので就職したところも大手企業とかやり手のベンチャー企業ではなく、近所のなんでも屋さん。理由は近くて休みが取りやすいからで、若くて体力があるからと社長から可愛がられているようだった。


「なんでも屋さんってあちこち行って雑用引き受けるんだけど、最近多いのがゴミ部屋の清掃なんだよ」


 本人あるいは同居している家族がゴミをため込み、にっちもさっちもいかなくなって呼ばれたりする。多くは精神的不調から片付ける気力がなくなってしまい、ゴミに埋もれて体調も崩していた。本人が入院するのでその間にと頼まれることもあるそうだ。


「月曜と火曜に行ってた現場もそんなゴミ部屋でさ、ひたすらゴミかき集める作業してた。その前はイベントのスタッフ、その前は草刈り……」


 現場も仕事内容もバラバラだった。


「そんだけいろいろやってたら目星つけるのも難しいぞ」


 雲を掴むような気がして思わず天井を見上げる。わかりやすく肝試しやお札を破ったとかしてくれたら糸口が見つかりそうなものの。しかしどこかにきっとあるはずなのだ。女の霊に狙われるきっかけが。


『……隆宗。おい、隆宗』


 電話口の声でハッとする。今は渡瀬との電話中だ。


「ごめん、なんだっけ」


『ひとりで帰るの怖いから待ち合わせしようって話。今日は早く帰れるんだろ?』


 何が悲しくて男ふたり肩を並べてアパートへ帰らなきゃいけないんだと思ったが、渡瀬の置かれた状況を思えばすがりたくなるのは分かる。さいわい、今は陽が長い季節だ。明るいうちにアパートへ帰れるように場所と時間を決めた。


『……なあ、隆宗』


 そろそろ通話を終わらせようかとした時、渡瀬がそれを遮った。なにかを警戒しているのか、ひそひそと伺うような口調だ。


『霊に狙われるってさ、……何かを拾ったりしてもきっかけになるのかな』


 拾う? 意外な質問に即座に言葉が返せなかった。


「うーん……あんまり聞かないよなあ。そりゃ呪いの人形とかを拾ったりすれば可能性はあるだろうけど……なんか心当たりがあるのか?」


 渡瀬は何かを言おうとしたが、その時辰野は他の教師から呼ばれた。少し話しすぎたようだ。


「ごめん、もう戻らなきゃ。あとで聞くよ。じゃあ待ち合わせ場所で」

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