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絶対最強女子高生 〜わたし陰陽師ってやつです。先生、式神になってくれません?  作者: 猫の玉三郎
冥府の嫁御寮

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十七話 調べるは結びつき

 三葉へ状況を説明する。と言っても辰野自身もよくわかっていないので「友人に霊が取り憑いているみたいだ」としかいえなかった。本人に聞いても原因に心当たりはないと言うし、伝えることはそう多くはないのだが、それに加えて自分が体験した夜中に聞こえる女の泣き声や何かの擦れる音、玄関を開けたとき感じた視線、などを話してみた。三葉は相づちを打ちながら静かに聞いている。


「友だちがまだ自分の家にいた時は、部屋の中に入ってきて、しかも寝てる自分に寄り添ってきたと言ってたよ。はっきり見たわけじゃないけど、音とか気配とかでそんな気がするって」


 渡瀬がやってきたのは土曜日の朝で、次の日までは何もなく過ごせていたのだ。異変が起こったのは昨日の夜中から。そこまで伝えて、辰野は聞こえないように息を吐いた。


 学校を出て歩きながら電話しているのだが、何とも落ち着かない。三葉と話しているのも未だに信じられなかった。罪悪感に似たものが胃から迫り上がってくる。これは背徳感かもしれない。


「それで、誰かこういうのに詳しい人を知っていたら教えてほしくて。ごめんな、こんな事で電話して」


『いいですよ。こういうのって大っぴらに言えないし……言っても信じてもらえなかったりしますもん』


 少し悲しそうな声だった。確かに、自分が経験するまでは霊とか信じてなかったし、いきなりこんなこと言う人がいたらまず冗談の類だと考えるだろう。辰野は胸の奥がもやもやした。三葉は過去に傷ついたことがあったのかもしれない。だとしたらあの紙パックに書かれた「信じてくれて嬉しかった」の言葉はどれほどの気持ちが込められていたのか。


『先生、状況はなんとなく分かりました。私には霊との因縁を探る力はありませんし、何人か知り合いに聞いてみますね』


 それから三葉は俺でもできる対処法を教えてくれた。帰り道を歩きながら喋っていて、普段乗るバス停も通り過ぎてしまった。バスに乗るからと遮りたくはなかった。気付けばだいぶ長電話をしていて、最後は謝りながら電話を切った。



 ◇



 アパートのドアを開けると渡瀬がピューンと飛んできたので反射で避ける。


「おかえり! 俺めっちゃ怖かった! あと五分遅かったら泣いてた!! てか泣いていい!?」


 鼻水をたらし興奮気味の渡瀬をなだめながら話を聞くと、ドアをノックする音が聞こえたり、またすすり泣く声が聞こえてきたりしたそうだ。ドアスコープは怖くて覗けなかったので、本当に人がいたのかはわからない。テレビは子ども向けのアニメ映画が流れていて、無理にでも明るい雰囲気にしようとした努力が見えた。


「……いろいろ話聞けたよ。きっと大丈夫だから」


 ぽんぽんと肩を叩くと、ひとり奮闘したことを労った。渡瀬は感極まったのかぶわりと涙を目に浮かべる。


「うう……神さま仏さま隆宗さま、ありがとうございますぅ」


 それから簡単に夜ご飯を食べたあと、ふたりで幽霊対策を始める。三葉が教えてくれたことを実行に移していくのだ。


 まずは御神酒。

 以前三葉からもらった日本酒が残っているので、辰野がコップに注いで渡瀬に飲んでもらった。半分神さまである辰野のそばで神気を蓄えてあるから、お清めには最適だ。これで悪しき者を弾く力を高めていく。


 部屋に関しては、辰野がいる場所がほぼお社みたいなものだから滅多なことでは霊は近寄れないので大丈夫だと三葉は言った。辰野に襲いかかったアレは異例中の異例で、物理法則に影響を与えて空間をねじ曲げるほどの力を持つかなりヤバいヤツだったのでカウントしなくていいそうだ。


 部屋が散らかっているのなら掃除をして、特に水回りをキレイにすればより効果が上がる。さいわい、部屋も水回りもさほど汚れていないので簡単に掃除するだけで大丈夫だった。


 そしてお守り。明日から渡瀬も仕事へいくので、外でも身を守るためにお守りを作る。


「え、おまえが作るの?」

「うん。その子が言うには俺ってそういうの作る才能があるらしい」


 さすがに体の中に神さまがいるとは言えず、辰野はそれらしく言ってみた。白いコピー用紙を一枚取り出して筆ペンを持つ。ちなみに書道の類いは下手くそであり、ちゃんとできるか不安しかない。


「まあ作るだけ作ってみるよ。別にかさばる物じゃないし、ポケットに入れとけば邪魔にはならないだろう」


 三葉は言っていた。

 紙に書くのは辰野の中にいる神の名前だと。

 辰野は集中してペンを持つ手を動かした。縦書きで若宇加能売雨竜彦と書く。不思議と漢字は考えなくてもすんなり出てきた。今でも自分の中に神がいるということは半信半疑だが、目の前にその名前があると、もしかしてそうなのかもと思ってしまう。


 紙は何度も折りたたみ、チャック付きの小さなポリ袋へ入れる。これで簡易お守りの完成だ。ありがたみなど一切感じさせないが、三葉の言葉を信じて渡瀬に持たせる。


「あと余裕があるならこの日本酒の瓶を持って行けって。ヤバいと思ったら中身を振りかけてもいいらしい」

「わかった。いざとなったらお酒まき散らして瓶で殴る」

「……できれば破損なしで返してほしいけど」

「善処する!」


 ウキウキと酒瓶を手にする渡瀬だったが、ふと顔を上げた。


「その人めちゃくちゃ詳しいね。でも『霊との因縁は探れない』ってどういうことだろ。詳しいけど霊は視えないってこと?」

「俺も気になってそこんとこ聞いたんだけどさ。その子、霊は視えるんだよ。でもそれだけなんだって」

「んん、どういうこと」


 どう説明しようかと辰野は考える。


「たとえば、今ここにスーツ姿の男の霊がいたとする」

「うん」

「その霊は何者だと思う?」

「そりゃあ、見たまんまだよ。社会人の男で、スーツを着るような仕事していたんだろうなって」

「死因とか未練とかは?」

「わからん」

「そんな感じなんだって」


 渡瀬は頭上にハテナマークをたくさん浮かべた。


「つまり、霊が視えるっていうのと、霊が何者でどういう死に方をしたみたいな情報を掴むのは全然別の能力だってこと。ほら、昔さ、超能力で物の思念を読み取って事件解決するみたいな話あっただろ。サイコメトラーだっけ。そんな能力が必要なんだって。そして霊の思念を読み取る力は能力者のなかでもかなり特殊らしい」


 霊の見た目や行動から推理することももちろんあるし、本人に取り憑かれる心当たりがあるならそういう能力も必要ないと三葉は言っていた。そして知り合いに聞いてみるが、自分たちでも渡瀬が追いかけられる『きっかけ』を追求した方がいいと。


「原因がわからないと対処も難しい。だから、渡瀬にはどんな些細なことでもいいから思い出してほしいって。どこかに行った、触った、壊した、拾った。何かを聞いたとか、コックリさんをやったとか、どんなことでもいいから」


 辰野が言い切ると、渡瀬は腕を組んでうーんと考えはじめた。原因に心当たりはないと言っても、本人にその気がないだけで何かしらあるはずだ。なので、霊が現れる前にとった行動を二人で確認することにした。

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