パシフィック
「環境問題はいけない!!将来が大変なことになる!」
1人の学生はそう叫び、学校を飛び出してでも、環境問題に取り組もうとした。
「環境問題、興味ねぇー……金になる仕事してぇ……」
もう1人の学生は環境問題よりも、将来必要なお金を稼ぎたかった。
そんな2人は同じ学校だったが、会話もした事がない。
たまたま、一緒の学校であっただけ。
「プラスチックのーー、自動車の排気ガスのーー、海洋汚染がーー」
環境問題に取り組んだ学生は、周りだけでなく、世間、国、世界へと……。地球の危機を伝え続け、その事を評価され沢山のご支援を頂いて、さらなる取り組みを行った。
「ふーん。エコねぇ、今は金になりそうもねぇな」
お金を欲した学生は、とりあえず勉強をしている。世界の流れ、時代の進歩を見極めながら、自分を高めている日々。それはそれで一人の取り組みだった。
「二酸化炭素がーー、気候問題がーー、我々にできることはーー」
環境問題に取り組んだ学生は、大きくなった。活動は世界中と繋がり、大きなお金が動いて、世界中の強い意識を動かせるほどになった。世界の人達と一緒に環境問題をこの汚れた世界に訴えよう。
「お父さーん、環境問題について教えてー、なんか大変だってさー」
「もうそーいう事を習う歳か」
お金を欲した学生は結婚し、二人の子を儲けていた研究者の1人であった。環境問題に興味はなかったが、ニュースでも世論でも、そーいう流れが来ていた。
「お父さんって研究者なんでしょ。二酸化炭素を抑えるとか、エネルギーに変えるとか、発明できないのー?地球救ってよー」
「いや、……あー。分かった分かった。父さん、やってあげるから。……そうだな、結構なお金になりそうだから、取り組んでみるわ」
家族とお金……。あとは、自分が研究者として誇りと思える何かを残すための成果。それがたまたま、環境問題に繋がる事だった。
研究を続けて、7年ほど。
「世界初!!二酸化炭素を分離回収する技術が誕生ーー!」
そんなことができてしまう。
体のいいリップサービスも添えて、環境問題の解決に繋がる技術が世に現れた。
「いやぁ、これで少しでも環境問題が改善されればいいなと、思っております」
この研究を成功させた研究者さん達は、世界から多くのご支援をされ、今後とも、世界のための技術開発を求められたのだった……。
「二酸化炭素は良くなったけど、プラスチック廃棄による海洋汚染がーー」
一方で、環境問題に取り組んでいる人達は、別の問題を上げて世界を訴え始めたのだった。
◇ ◇
マッチポンプとは言ったものか。悩みを聞いてくれるだけで、解決を聞きたくないみたいな話であろうか。まだ少女の子が、女子大学生を相手にお説教をする。
「のんちゃん、怒ってますからね。ミムラさん」
「いや、なんで……」
勉強には色々ある。社会において、必要じゃない勉強があるのは事実ではあるが、勉強をしないと言うのはマイナスな事である。
女子大生のミムラを部屋の前で正座させ、小学生ののんちゃんはミムラの周りを歩きつつ、
「例えるなら、活動家のソレなんですよ。……なんで活動家が問題を解決できないか、考えた事がありますか?」
「そ、それはやっぱり。1人じゃ解決できない事だから!」
「違います。活動家ってソレが仕事なんですよ。だから、解決したら仕事が無くなるんです。環境問題が解決したら、環境問題で得ていた利益を失ってしまうんです。訴えますが、解決は求めてません」
そうかなぁ……ってミムラは思っておくが、のんちゃんは付け足して
「末端はミムラさんのように純粋なんですよ。ですから、お金を出せるんです。活動家はそれを元手に生活しているんです」
「まるで詐欺師なんだね!私は純粋なんだよ!だから、ごめん!」
「勝手にのんちゃんのプリンを食べておいて、食べてないと10分も言い張るミムラさんが言える事じゃないんですけど?」
「うぐっ……」
そりゃ勝手に食べてしまって隠蔽しようと動いたミムラだ。
スプーンも空容器もちゃんと始末したのに、それをゴミ箱から見つけて来る、のんちゃんの執念がヤバイ。よほど、食べたかったんだろう。
「買ってどうこう済む問題じゃーないんですよ!ミムラさん!!」
「うぐぐぐ、だから。ごめんも添えて!」
「5つ、のんちゃんのプリンを買って来てください!!」
「うわーーーん!!分かったよーーー!スーパー行ってきまーす!」
謝罪ではなく、補償を要求したのんちゃん。
訴える事も時には大事だが、その訴えを他人に任せちゃいけない。
「話題逸らしたり、言い訳するから、のんちゃん怒りの5つプッシュですからね」
素直に謝っておけば、1個で許そうと思っていた、のんちゃんだったのに。
ミムラに活動家は向いていない。
なぜなら、彼女は結局は謝り、補償もしてしまうから。