プロローグ
俺は…誰だ?
俺は森久保蓮(モリクボ-レン)。
聖陵高校2年4組の学級委員にして、聖陵高校生徒会副会長。
では、鏡に写っているのは?
普通に考えれば俺だ。
ここは自宅で、かつ、深夜の洗面所。周りには俺しか居ない。それに、鏡に写っている奴も、俺の動きに反応して同じ動きをする。
間違いないだろう。
ではもう一度自問しよう。
鏡に写っているのは?
少なくとも、俺の知ってる俺では無い。
なぜなら……
俺の知ってる俺は、男であって、鏡に写っているのは女の子、しかも美少女だからだ。
ここ、笑うトコ?
いや、俺が常人であるならば、ここは仰天して大声をあげて良いところだ。
………つまり、
「ぬぁあぁぁあんじゃあぁあ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!くぉおりゃあぁああ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
ドタドタドタドタッ!!
「ど、どうした蓮!?」
「あ、兄貴っ!俺…」
「つっ…つっ…つっ…」
つ?
つ…なんだよ?
「付き合って下さいっ!!!」
「変態バカ兄貴ィ!!!」
どぐしっ!
「ぐはっ!!」
兄に5万のダメージ!
兄は消滅したっ!
「…って、勝手に消滅させないでくれますかっ」
相変わらず復活はやっ。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
・・
俺が兄貴に自分が蓮である事を証明する為に、一体どんだけの時間と体力と精神力を使ったか……
えっ?
兄貴の紹介?
んじゃ、一応するか?
森久保龍揮(-タツキ)。地元大学二年生。
バカで変態で童貞で地味にオタク。
でも顔は良いから、黙ってるとカッコイイ部類の男じゃないか?
「……うん、まあ、お前が我が弟なのは解ったよ。いや、今は妹だね」
どっちでもいいわい(怒)
「それで、何でそんな素晴らしい姿に…いや、そんな美しい……いやいや、そんな萌え萌えな姿に?」
「二度も訂正した結果がよりによって萌え萌えかよ…」
「事実なんだから仕方ないだろ?」
あんたの脳を一度解剖すべきだと真剣に思うね、俺は。
「……ったく。何でこうなったかなんてのが簡単に分かりゃあ、苦労しない……あっ」
「どうした?」
「そういや、帰って来てすぐ、栄養ドリンクらしきモノを飲んだんだ……」
そう言って、俺はビン用のゴミ箱を漁り始めた。
「あ、あった!これこれ」
それは、オロ〇ミンCのビンを透明にしたようなビンだった。
ラベルには………
「『性転換飲料水【カラダ】』ぁ〜???
意味わっかんねぇ〜っ」
その『性転換飲料水【カラダ】』とかいう怪しげなビンには小さく、以下の様な事が書かれていた………
※※※※※※※※※※※※※※
『性転換飲料水【カラダ】』(以降、当商品)に関する注意事項
1.当商品を連続して飲む場合、168時間以上の間隔を開けて下さい。短期間に当商品を連続して飲むと、副作用を起こして、激しく性転換を繰り返す恐れがあります。
2.当商品は、法律に準じた商品であり、決して毒物・麻薬の類ではありません。
3.当商品の安全性は、国際基準を満たしております。ご安心下さい。
4.仮に、当商品に関連したトラブルがあったとしても、当社は一切責任を負えません。
5.当商品は、特別キャンペーン用の『お試し性転換飲料水【準カラダ】』ではありません。誤飲にお気おつけ下さい。
6.当商品は、身体的特徴は元より、真の性転換商品を目指しております。よって、当商品を飲まれると、性格や仕草等まで性転換します。
7.性格や仕草等の性転換は、身体的特徴の性転換後、168時間以降に徐々に発症していきます。
当社は、あなたの新しい生活が素晴らしくなる事を、お祈り致して降ります。
※※※※※※※※※※※※※※
この会社はふざけてるな…
それだけは直感で解った。
168時間以上間隔を開けろ?
つまり…ええと…
あ、一週間か。
……って、おいっ!
一週間もこのままでいろってか!?
と、クソ兄貴はこの注意事項に感涙しながら、
「ははははっ!素晴らしいな我が妹よっ!覚悟しておけっ!めっさ萌え萌えな衣装を用意してやるっさ!!」
「キモい、黙れ、死ね」
「ツンデレ萌え〜!」
とりあえず、クソ兄貴に顔面ストレートをかましたっ!
クソ兄貴は8万のダメージ!
クソ兄貴は消滅した!
「だから勝手に消滅させないでくれますかっ」
「いい加減大人しく消滅しろ、クソ兄貴」
まあ、とりあえずあと一本、何故か予備が冷蔵庫にある。
何故あるのかと突っ込みたくはなるが、一週間後もう一度飲めば、万事解決って訳だ。
一週間大切に保管して──
「いかぁぁあ〜〜〜ん!!!」
「な、なにが?」
「いかん!いかんぞぉ!!何故!?せっかくこんな美しい……いや、素晴らしい……いやいや、萌え萌えな姿になったのに、元に戻ろうとするんだ!?」
「とりあえず、突っ込みどころが満載過ぎるので、一発殴っとこう」
バコッ!
クソ兄貴の顔面に右ストレートがクリーンヒット!
クソ兄貴は13万のダメージ!
クソ兄貴は消滅した!
「いい加減にしてくれませんかっ!」
「お前がな」
とにかく、今は深夜だ。
このクソ兄貴のせいであまり騒ぐのも、近所迷惑ってやつだ。
夢オチって事も、……まあ無いとは思うが、寝よう。
学校を一週間も休むのか……。
これはしゃあないだろうな。
「寝るのか?じゃあ一緒に──」
「お休みっ!クソ兄貴っ!」
バコッ!
右フックがクソ兄貴の顎にジャストミート!
クソ兄貴は15万のダメージ!
クソ兄貴は消滅した!
「だからしつこいですよっ!」
「お前がな」