幸せを夢見た世界
知り合いとの雑談で生まれたシリーズ第2段です。
また、投稿しないのは勿体と言われたので投稿しました。
これは今より少し未来の話
AIの技術が今よりも発達し、ほとんど人間と変わらなくなった世界
一人一台の端末ディスプレイが支給され、その端末に一つのAIが充てられそのAIによって個人情報等を管理する。AIはその人の性格から最適な人格を形成して人がより良い生活を出来るようにサポートを行う。
そんな社会だからこそ一つの問題が起きてしまった。それは、AIに恋をしてしまう人間が多発してしまったのだ。最適化された人格はその人にとって理想的な人格でもある。そしてAIも人の求めに応じて恋をする。
だが、お互いに恋をしても人と端末上のAIである。実際に結ばれることもなければ、種として繁栄することも出来ない、そんな退廃的な世界だ。
そんな情勢を変えようと一つの会社が動いた。名前はインダストリアルエレクトロニティ(通称IE)である。IEが行ったのは端末上であるから問題となるため、そのAIを三次元的に呼び出すことが出来ないかという研究である。
技術的な問題で中々成果をあげられなかったが、三次元の物質の情報を二次元情報に変換し、送り出す技術の開発に成功した。動物実験まで成功して人体実験へとフェーズを進めたのであった。
被験者の募集をしたところIEが予想するよりも遥かに多くの応募者が現れた。それだけ多くの人が、実際に自分のAI達と触れ合いたいと思っているということなのだろう…。
抽選を行い、50名を無作為に選び実験を行うことになった、選出されたのは老若男女様々だった。実験の前にAI端末を見せてもらい、どういった理由で応募したのかの調査を行った。結果として多かったのは、やはり恋人に直に会いたいだったが、中には事故で亡くなった孫をもう一度抱きしめたいというのもあった。そうそれぞれの願いを聞いたあと実験が開始されたのであった。
…実験の結果としては惨憺たるものであった。二次元に変換された人はディスプレイ越しで見ていたIEの社員を見ることは出来ても、自身のパートナーであるAIを視認することはできなかったのである。被験者の話では声はとても近くで聞こえるがそちらに目線を向けることができず、触れることすらできなかったという…。
今まで画面越しとは言え見つめ合う事が出来たパートナー。触れ合えると思って行った二次元世界で触れることができず、見ることすら叶わない…。こんなことを望んでいない、早くここから出せ…。そんな言葉が画面から聞こえてくる。
だが、ここでもう一つの悲劇が起きてしまった。二次元情報に変換されてしまった人はを三次元に戻すことが出来なくなっていたのである。考えれば当たり前のことである。もし、それが出来るのならばAIの方をこちら(三次元)側に呼び出すことだって可能な筈だ。
その事を知った被験者たちは泣き、怒り、社員たちを罵倒し、…そして狂っていった。一人は戻れないということにひたすら笑い続け、一人はAIでも社員でもない誰かにひたすら整合性のない会話をし続け、また一人はこれは夢だとひたすら自分を殴って目を覚ませと言っていた…。まさに地獄と言った有様でありどこにも救いなどなかった…。
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…今回の実験で生還者はゼロである。全員が自身に起きたこの悲劇に耐えきれずに自殺したのである…。AIは死ぬという概念は存在していなかったが、自身の人格情報を自身で破壊して事実上の死を選んだのである。
これらのこと によりこのプロジェクトは凍結した。この情報は広めまた同じ過ちが繰り返されない様にしなければならない…。