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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第二章 ホラーソン村編

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心が求める闘争

前回のあらすじ


所変わって亜竜自治区。晴嵐のメールを受け取ったオークの二人、スーディアとラングレーは首を傾げつつも、晴嵐に協力することにした。亜竜自治区での経験から、二人は一度別れ、別々の道を歩むことを決意。ポート前でたむろする二人に、後ろから迫る影の正体とは……

 亜竜自治区と呼称されるだけあり、この地域には『亜竜種』の人物が非常に多い。

 人によって異なるが……茶色や緑、青色の鱗が身体の表面を覆い、顔つきはヘビやトカゲを思わせる形。瞳孔は細く据わり白目がなく、前のめりな前傾姿勢でのそりと歩く。

 これらの特色もインパクト抜群だが、彼らの最大の特徴は、地面に垂れ下がる大きく長い尻尾だろう。歩行の際も地面に触れさせるため、尻尾用の靴を装着している。テールブーツと呼ばれるそれは、この地区においては専門に取り扱う店さえある。

 カツン、カツンと、尻尾が地面に触れるたび、独特の足音を響かせる。二人組のオークを目指し、緑の鱗の亜竜種が、物々しい気配でやって来た。

 眼光鋭く見つめる先、二人組もその亜竜種を認識する。

 ぐっと拳の握ったその男は、朗々と彼の名を呼んだ。


「スーディア・イクスはおるカ?」

「……俺です」


 良い声だ。腹を決めた男児の声に、その亜竜種の戦士は思わず一礼した。礼節を保ったまま、戦意を腹に溜めて告げる。


「ソナタはハクナ様が一目置くと言ウ。その武勇、ワレにも見せて頂きたイ」

「またですか……」


 渋い顔で空を仰ぐ若者に、隣のオークは声を上げて笑った。


「あっはっは! モテモテだなスーディア!」

「ラングレー……お前だって一緒に戦った筈だろ? なんで俺ばかり」

「そりゃお前、オレはそれほどの戦士じゃねーし、こんなお調子者だし? お前と並んて立ったら霞んじまうんだろ」

「……」


 困惑する二人から距離を保ったまま、亜竜種の戦士はじっと待つ。

 この伝統は地域独特の物故に、余所者に対し押し付けてはならぬ。とはいえ、かの戦士は理解を示しており、よほどの事が無ければ受けてくれると言う。二人の会話が終わるまで、一歩引いて亜竜種の戦士は待った。


「でも……ちょうどいいかもしれねぇな。オレは先に出る」

「ラングレー……でも、まだ話しきれてない事が」

「馬っ鹿、だからだよ。いざ別れ際になったら惜しくなっちまう。だから……ここでお前を待たずに、オレは先に行くべきなんだ。一回ここで、オレたちはスッパリ別れねぇと」

「こういう俺達の心情こそ、ハクナ様が危惧しておられる事……なのかもな」


 片方のオークが、スーディアの顔を見たまま遠ざかる。足取りは鈍くても、確実にもう一人の姿は小さくなっていった。


「先に外に行ってくる! またな、相棒!」

「あぁ。また会おう……!」


 遠ざかる二人を、部外者の戦士はじっと見つめる。経緯は読めないが、戦士のスーディアの背中は震えていた。やがて亜竜種の待ち人を思い出し、合わせた顔には雫の痕がある。慌てて顔を背けて拭い「お待たせしました」と一礼を返す。


「失礼、邪魔をしたカ?」

「いいえ……良い機会でした」

「……しかしその様子デ、剣は鈍らぬカ?」

「試してみますか?」


 刹那に閃く瞳の、なんと輝かしい事か。

 返す言葉に湿り気はなく、むしろ強い意志の息吹を感じる。

 ひりひりと肌に来る生気を受け、亜竜種の戦士は嬉々として名乗りを上げた。


「失礼しタ……スーディア・イクス。我の名は『ムーランド・マンバ』。良き立ち合いを所望すル」

「謹んで、お受けしましょう」


 了承を取れたところで、亜竜種の戦士は広間に置かれた箱に向かう。後ろからオークの戦士も続き、その箱に右手を触れさせた。

 スーディアも同様に接触し、これにて『闘技場』の魔導は発動した。周辺に特殊な空間が展張され、外部と内部が遮断される。内部空間の効果は『精神が感じる痛みや衝撃をそのままに、肉体への打撃を大きく軽減する』……つまり全力で闘争を行っても、相手の殺傷を気にせずとも良くなる。

 なぜこのような装置があるか――それは亜竜種の知能の低さに起因していた。

 残念ながら……自他ともに認めることだが、亜竜種はどうしても複雑な思考ができない。知性で劣る傾向が見られる。

 故に亜竜種は、闘争の中で相手を知ろうとする。文化の一端として『決闘』を行うことで、互いの意思疎通や精神性を知る。

 むき出しの闘争の中でこそ、魂の真価は測れる――それが亜竜種の世界観なのだ。


「覚悟はいいカ?」

「いつでも」


 片手でレイピアを握り、もう片手で盾の腕甲を掲げるオークに対し

 両手に装着した魔術式の、よく手になじんだ盾の腕甲を光らせる亜竜種。

 一見、亜竜種側に攻撃手段が無いように見える――しかし彼らは、盾の腕甲を独特の運用をする民族だ。

 両腕に覆うように光の膜を溜め、拳が二回り以上巨大化する。これが彼ら亜竜種の基本スタイルだ。


「ヒュッ!」


 ぐっ、と姿勢を前のめりにし、つんのめったような姿勢で突撃する。巨大な尻尾でバランスを取り、他の種では不可能な踏み込みで、一瞬でオークの懐に飛び込んだ。

 まずは牽制。右右、左とジャブを放つ。二発の拳は盾に弾かれ、左のジャブはレイピアに受け流される。

 他の種なら姿勢が崩れるが、ムーランドは尻尾を地面に強く突き刺すように接地させ、自重を地面に分散させた。一旦右手の魔法を解除し、素手て関節部を狙う。

 が、目論見は防がれる。グッと肩を突き出し、肘関節に伸ばした手が突き飛ばされる。数歩下がったところで、今度はオークのシールドバッシュが亜竜種に襲い掛かった。

 すかさずグローブを再展開し、光の盾に拳を乱打させる。

 風を切るような呼気に合わせ、亜竜の両手が盾と激しく衝突を繰り返す。片手の盾とレイピアを使いこなし、オークの戦士はラッシュに対応していた。

 連打では崩せぬと踏み、緑の鱗を閃かせ間を広げる。右手の腕甲に意識を集中し、ムーランドは呼吸を整えて――

用語解説


『闘技場』


 特殊な領域を展開させる、魔導式の箱。発動すると接触した人物同士の痛みはそのままに、肉体が受けるダメージを大きく軽減させる。要は全力で戦っても、相手を殺傷せずに済む道具だ。

 亜竜自治区にはこの箱が公園や広間など、体を動かすことに向いた空間の至る所に『公共の施設として』配置されている。この地区において闘争とは、スポーツの一面も持っているのだ。


 盾の腕甲 (応用編)


 亜竜種の戦士は、盾の腕甲を魔法のグローブにして戦う技術を持っている。ゲーム風な言い方になるが……結構な割合の戦士が「モンク」に該当するだろう。

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― 新着の感想 ―
尻尾の描写が真面目だ あとはどっかで足払いが出れば
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