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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第八章 海上編

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本命の囮

前回のあらすじ


事情をよく知るお偉いさんは、ゴブリン島の防衛網に穴をあけ、スカーレッド私掠船団が上陸・制圧を置こう作戦を提案してきた。防衛網に穴をあけるまでは良いが、まだ大きな障害として『新型で武装し、サイボーグ化ゴブリンの兵隊たち』が島に駐屯している。これを攻略するために、陽動作戦を展開すると説明を始めた。


追記 ダイジェスト版含めですが800話越えました! ぶっちゃけますと……予定通り最後まで書き切れたら、完結する事には千話越えますねコレ。

『主力の囮は北東艦隊だ。規模はスカーレッド私掠船団より少しだけ盛る。こちらにはある仕掛けを施し敵射程に侵入させ、撃沈させる』


 囮は敵の目を引き付けるのが仕事だ。破壊されるのを前提にするのも珍しくはない。規模を少しだけ盛るのも悪くないが、仕掛けとは何の事だろうか? 気になったのは晴嵐だけでは無いようで――


「主力の囮と仰りますが……敵方に『本命だ』と判断して貰わなければなりません。ルーフェ海賊団の旗でも掲げる気ですか?」

『発想は近い。その仕掛けもする。でも一番は――君達も回収した、ルーフェ海賊団幹部脳内に残った電子チップだ』

「……黒幕が自分たちの思い通りに、人を操るためのアレか。自壊装置として頭の中に埋め込んだ……」


 事変の隠れ蓑にされた海賊……ルーフェ海賊団幹部は、新型を使うために『処置』とやらを受けた。正体はなんてことない。自作自演の自壊装置と、それを扱うためと称して……記憶や言動をある程度操作できるように、幹部格の脳に電子チップを埋め込まれていたのだ。細かい原理は知らない。解析も不可能と思われていたが――秘密結社の男はこう言ってのけた。


『一部だけど、アレの中身を解析出来た。やはりと言うべきか……脳内チップに反応して、黒幕は敵味方の識別と、ゴブリン島の座標を電波的に送信していた』

「ちょっと何言ってるか分かんない」

『失敬。ちょっと例え方が難しいな……目に見えない操りの糸と言うか、聞こえない音波とでも言えばいいのか……それを互いに送り合って味方だと伝えたり、位置を教えたりしていたって感じ。まぁこれも乱暴な解釈なんだけど』

「今重要なのは詳しい原理より、お主が何をどう利用つもりなのか……ではないか?」

『確かに』


 脱線しそうになったので、それとなく軌道を修正する晴嵐。ぶっちゃけると、晴嵐も完璧に理解できるか怪しい話だ。変にこじれるより、囮について喋ってもらった方がありがたい。


『こちらで回収した『脳内チップ』の一部は復旧、再起動にまで漕ぎつけた。でも完全な状態じゃない。敵味方の識別機能が戻せなかった。完全に直せれば、敵方に味方と誤認させて突入できたんだけど……』

「一番楽な展開にはできませんでしたか」

『そうだね。ただ、信号を送受信できる段階まで回復させた。これを使えば、相手目線から見て『敵味方識別がグレーの艦船』に見えるだろう』


 明確な敵でも、明確な味方にも見えない存在……即座に排除はされないだろが、味方だと騙し切れてもいない。晴嵐は首をひねった。


「役に立つのか? グレーって事は、相手から疑惑の目を向けられる。怪しい動きをしたら『味方と見せかけて接近してくる敵』ってバレるぞ」

『だからいいんじゃないか。本命の囮にふさわしいだろう?』

「!」


 初めて……石の向こうのお偉いさんの、弾んだ声を聞いた気がする。彼は少しだけ得意げに、本命の囮の仕掛けについて喋った。


『北東艦隊は『復旧した脳内チップ』を積み稼働させて『敵味方認証を拙く偽装したグレー艦隊』として接近させる。この艦隊をゴブリン島に接近させても、初動で砲撃は飛んでこないだろう。けど――その艦隊が何の応答も無く、真っすぐ島に接近したら?』

「誰がどう見ても『騙し討ちを狙う本命』って感じるわね」


 なるほど……ただ数を用意した艦隊より、少数で小賢しい手を使い、味方のフリして近づいてくる方が『本命』に見えるだろう。となれば、敵方の行動も予測できる。


『北西の大艦隊は分かりやすい囮。数を用意した所でゴブリン島は落とせないが、相手側から見ても――数を用意されたら無視は出来ない。そして北東からは、拙く偽装した艦隊を侵入させる。相手からすればその二方面に注意が行くはずだ。ゴブリン島内に駐屯する歩兵も、北方面に集中するだろう』


 全く恐れ入る。二種類の囮を……数を用意した見せる囮と、本命に見えるよう偽装した囮を使えば、残りの二方面から注意を逸らせる。これなら上陸も非現実的ではない。さらにもう一手、秘密結社の誰かは用意していた。


『そしてもう一つ。南東の艦隊には援護を担当してもらうと言ったね?』

「えぇ。そっちは秘密結社の……吸血種じゃない人員が担当するの?」

「あるいは、ワレのような協力者だろうな」

『だいたいそんな感じかな。君達が突入した後、南東の艦隊は南西に向けて移動。これは規模を小さくし、分担するように見せかける事で、南側は島の包囲用と敵側に誤認させる狙いだ』

「最初から一か所にまとまって艦隊数が増えたら、せっかくの陽動作戦の効果が薄くなってしまう。最初に距離を置くのは必要でしょう」


 つまり南西にスカーレッドの私掠船団が突入後、南東から南西に合流する流れか。しかし援護と言っても何をするのだ? 敵の砲台は水から生じる『気体の爆発』で吹き飛んでいる。退路の確保も重要な役割ではあるだろうが、それだけではないらしい。


『この南東の隊には……敵の連携を分断する特殊弾を艦載させ、突入部隊を支援してもらう』

「待って待って、それ味方ごと巻き込まない?」

『大丈夫。炸裂砲弾の類じゃない。この特殊砲弾は……君達が『脳内チップ』を発見してくれたおかげで、敵勢力の解析が進み開発が完了した切り札だ』


 一瞬だけ、レオの顔が晴嵐の方を向く。間接的に彼らの援護もしていたらしい。ゴブリン島攻略の切り札。果たしてその正体とは……

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