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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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第三の安全機構

前回のあらすじ


模型を使って『新型』の性能を、交代した者達に伝える。あまりにもふざけた性能差に、冗談ではと疑う声も上がるが……全部本当と通達する。今回呼び出しに来なかった者達にも伝えるように指示を出し、その後晴嵐にレオは問い詰めた。何か隠している事は無いのかと。

 レオが招集した者達に説明する間、晴嵐はずっと大人しくしていた。部外の協力者である晴嵐は、変に意見を述べたりして出しゃばるのは良くない。彼なりに気を使ったのだが、逆にレオは気に食わなかったようだ。


「静かにしてたのは……ベテラン相手にビビっちゃったから?」

「空気を読んだつもりじゃよ。船長のありがたいお言葉を遮るのをな」

「お気遣いどうも。でもそれじゃあ意味が薄くなる。分かるわよね?」


 レオは『情報の共有がされなかったがために死者が出る』あるいは『自分が死ぬ』のを危険視しており、そのために交代のベテランたちに『新型』の説明会を開いた。受けに来たマジメたちはもちろん、受けなかった不真面目にも内容は伝わるだろう。その回に晴嵐も参加した以上、暗にレオはこう言っているのだ。


 伝えるべき情報があるなら、隠す事は許さない――


 あるいは、既に許す気が無い可能性まである。レオの話を遮ってでも『新型』に晴嵐だけが知る特性があるなら、共有すべきとの主張。筋の通った主張と、的確な圧力のかけ方……見事なものだと、内心晴嵐は彼女を称賛した。

 レオは……破天荒ではあるが、組織を率いる才覚を持っている。ただカリスマがあるだけではない。組織を運営するための力と、独特の感覚・感性を身に着けているらしい。ここで晴嵐を詰めるのは、組織の長として正しい判断だろう。加えて、下手な嘘は彼女の嗅覚、直感でバレてしまいそうだ。極めて慎重に、晴嵐は言葉を選ぶ。


「どう説明したものかな……その武器と相対した際の注意点や、隠された機能のような物はない……と思う。例えばカートリッジを外しても、一発だけ撃てるケースがあるのは知っているか?」

「……本体に弾が残っているパターンね。細かい所だったから、今日不参加だった馬鹿どもを強制招集して、二回目で伝える予定だったわ」


 ……なるほど。もしも晴嵐が『隠し事』をしていた場合、第二回で説明に盛り込む気だったか。わざわざ終わった後にもう一度呼び出しては、いくら必要とはいえ身が入らない奴も出てくるだろう。続けてもう一つ、これは晴嵐も分からない点があるので質問も兼ねて聞いた。


「その武器に『セーフティー』はついているのか?」

「従来のモノは無いけど、事実上のセーフティーなら」

「……説明を求めても?」


 晴嵐目線、判断に困る返答である。

 旧来の銃に装着された『不要な暴発を防ぐための機構上の安全装置セーフティー』と――魔法技術を応用した、個人認証による不発機構の『ユニゾティア式セーフティー』では、仕組みが異なっているためだ。彼女の発言を『どちらなのか』分からない晴嵐の問いに、レオは隠す事無く答える。


「呼び出しの全体放送で触れた奴よ。自壊する装置の事ね。何度かアタシ達も鹵獲を試みたんだけど……これのせいで、今まで誰も奪い取れていない」


 彼の想像していたどれとも違った、第三の安全機構――どうやら異常な拡散防止、鹵獲阻止のための自爆機構を指していたらしい。確かに全体放送で触れていた気がする。これのせいで誰も『新型』を完品で入手できないと。

 本来の『この武器』には……いや、どんな銃器にもない機構だ。恐らくは背後にいる黒幕、地球の関係者がこっそり仕込んだのだろう。すぐに彼は対策を考えた。


「何とか不発させる事は出来んのか?」

「とっくに試みたわ。でも無理。奪い取った直後なら使えるけど、すべての組織に妙な装置が配られていて……それを使われた瞬間、付近一帯の新型の部品が壊れて使えなくなる」

「それを取り上げれば? あるいは使う間も無く潰せば?」

「持って数日ね。時間を置いても、自爆機構が作動するようになっているの。多分渡された奴らにだけ、解除する方法が伝えられている」


 奪おうとしても妙な装置……想像するに遠隔リモコンのようなモノで壊される。放置しても、特定の行動を取らないと同じ結末になる。ならば……と次に考える一手は物騒過ぎた。


「……吐かせるか?」


 脅迫、拷問、尋問……言い方はいくらでもあるが、要は肉体的・精神的に根を上げさせて、洗いざらい告白ゲロらせる手法。公的組織でも暗にやるのだから、国家暗黙の私掠船であればやっているだろう。黒い手を匂わせる晴嵐だが、これにもレオは首を横に振った。


「それも失敗。何か変な魔法を使っているのか、別の技術か知らないけど……誰かが強引に聞き出そうとすると、関連の記憶を無くしちゃうみたいなのよ。アタシも寝技使ったんだけどねー」


 いきなり下ネタを……と笑いはしない。ハニートラップや色仕掛けで、情報を吐かせるのは古今東西からある手法だ。終末世界でさえ有効だった節がある。こんなあっけらかんと語るのはおかしいと思うが、レオは一切気にせずに続けた。


「だから……せいぜい外見や残骸を再利用して、それっぽい模型を作るのが限界。で、またアンタは質問にハッキリ答えて無いわよ?」

「悪いな、探り探りが癖なんじゃよ」


 終末で生き延びる時の立ち回りにしても、いきなり『異世界ユニゾティア』に飛ばされた時も……彼は情報を少しずつ手に入れて、足場を固める様な生き方をする。危うい場面もあったが、慎重だったからこそ何とかやってこれたのだろう。

 変えられない生き方、変わらない彼は……やはりとても繊細に、知っている範疇の事を明かした。

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