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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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新型を追う私掠船団

前回のあらすじ


ポーカー勝負を終え、船に戻ろうとする一団。その際同室のドグルと話すが、ただ祭りが終わっただけの様子に見えない。どうやらこれから、非常に危険な任務が待っているらしく、腕に自信が無い者、覚悟の無い者は船を降り……ドグルを含め船員を入れ替えると言う。遊びはこれで終わり。いよいよ危険な事態にこれから挑むのだと理解し、晴嵐は気を引き締めた。

 久々の陸で羽を休め、英気を養ったスカーレッド私掠船団。晴嵐が船に戻ると、ドグルの私物が消えている。いよいよ入れ替わったのだな……と実感する。ヒルアントやゼゼリカも近い心象なのだろうか? まだ出航していない船の中の静寂は、レオの船内放送によって破られた。


『よぅしお前ら! これからアタシらの活動方針を伝えるよ!』


 覚悟や実力に不足がある者を船から降ろし、精鋭を船に集めた船長……交代の要員も、詳細は聞かされていないのかもしれない。案件の重さを考えれば、下手に外部に漏らさない方が自然でもある。晴嵐も状況把握のため傾聴した。


『ここ最近……海賊共の間で『新型』が出回ってる。正直、アタシらが使っている遺産と比べてもイかれた性能差しているわ。20以上の連射が効いて、専用カートリッジを交換するだけで再装填は五秒で完了。発射する弾丸も通常の水壁じゃ防げないから……二重にしたり圧縮水塊にしないと防げない』


 同室のヒルアント、ゼゼリカも顔をしかめている。実戦で遭遇したことがあるのだろう。晴嵐はその武器種に想像がつくが、知らない者にとっては……いや『知っている晴嵐でさえ』脅威と判断せざるを得ない代物だ。

 おまけに晴嵐の『想像通り』なら、あの武器は『整備も量産も安易』と耳にしている。かつての知り合い、猟犬のような男『宇谷』が……何かの雑談の際に、実感の籠った語り口で特性を口にしていた記憶がぼんやりある。

 これらの性能を総合的にかんがみると……『アレ』はあっという間に世界に拡散しかねないブツなのだが、現状海上だけに留まっているらしい。彼が内に抱いた疑念に答えるように、レオが続きを全体へ発信した。


『そんな激ヤバなブツだけど……外部に流出を抑えるため『自壊する装置』が取り付けられていたり、流通数自体も少なく徹底管理されているから、拡散はしていない。けれど世界に広まったらえらいことになる。アタシでさえそう思う』


 レオでさえ『危険』と断じるのだから、普通の感覚の人間であれば……その度合いは語るに及ばず。無意識に唾をのむ晴嵐だが、それを誰も茶化さないくらいに緊張が走っていた。


『アタシらの上も危惧してる。アタシ目線でもヤバい。じゃあもう潰すしかないってなったのが今回の案件。だからアタシらだけじゃなく、近辺の私掠船団も動いてる。ま、ナワバリ関係も面倒だから、遭遇する事も無いだろうけど。その辺りは気にしなくていいわ』


 非公式の国家組織、私掠船。『悪魔の遺産』を使う海賊に対処するために、同じ兵装を用いて取り締まる存在。ユニゾティアの『銃』に対する嫌悪感から、扱う組織は公に出来ないが……頭に『国』がある以上、国からの指示で共闘・連携も取るようだ。


『で、アタシらの担当だけど――荒事担当よ』


 区切りをつけたレオの言葉に、船内全体の空気が張りつめる。船全体に響く凛とした鋭い声。破天荒なレオだけど、部下を統率する力は本物らしい。晴嵐の肌にも、ぴりぴりと刺すような気迫が音越しに伝わって来た。


『攻撃目標は……ここ半年で急激に勢力を伸ばし、東国列島寄りの海域を荒らしている『ルーフェ海賊団』よ。マルダ伝手の情報源によると……コイツらが出没する区域で『新型』の被害が多発してるらしいわ』


 オークの狙撃手にして、この船の裏方をも担うマルダ。情報収集や精査まで担当しているとは、随分と器用な奴と思う。加えて狙撃の腕も確かだと、晴嵐は体験済みである。


『ただね……この『ルーフェ海賊団』は黒幕ではないわ。なんとなく分かるでしょ? 新型開発・流通をする奴らの象と、新しい武器で調子に乗って、品無く暴れるやり口の象と印象にズレがある。『新型』の力で急激に勢力を広げるのは良いけど、同時に『この規模で収まっている』オツムだから……多分ここも端末の一つね』


 ――だが、末端ではないと確信したのだろう。切り捨てられたトカゲの尻尾を、追った所で意味はない。首根っことはいかずとも、辿る価値のある相手と判断したようだ。


『アタシらの目標は、この『ルーフェ海賊団』の後方部隊……新型を輸送していると思われる艦船を狙って強襲。目的は二つ。一つは奴らの後ろにいる『新型』を生産している奴らについて突き止め、吐かせる事』


 ――晴嵐の最終目標もこいつらである。彼が頭に浮かべているブツであるならば、間違いなく大元は『地球人』であるはずだ。地球での知識や情報を元に、出回っている『新型』を不法コピーしたのだろう。それも含め、かつての地球の歴史をなぞっているのは皮肉と言えるが。


『二つ目は……この新型を何らかの方法で鹵獲する事よ。これは上からのオーダーね』


 優れた新型武器を奪い取りたい、研究したい。人であれば当然の欲求だ。危うさを感じなくもないが、人の心としては自然だろう。しかし口調からすると、難しい事なのは間違いなさそうだ。厳しく管理されていると聞いている。

 大方の説明を終えたレオだけど、最後に全体に通達した。


『覚悟の上で船に乗ってるでしょうけど……これからアタシ達は『新型』と敵対するわ。一時間後、体験者による事前説明を行うから……必要と感じる人は甲板に集合する事! この時はシフトを抜けてヨシ!』


 体感を含めた情報の共有を、一時間後にやるらしい。一応、雑な情報は晴嵐の頭にもあるが、もしも齟齬そごがあれば死にかねない。わざわざブリーフィングの機会を設けてくれたのだ。ここはしっかり受けておくとしよう……

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