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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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駆け引きの妙

前回のあらすじ


初めて遊ぶ『テキサス・ポールデム』のルールでのポーカー……一度も手札交換が無いのに、読み合い心理戦を成立させているルールと理解する。初心者にやらせるゲームじゃ無かったり、地球の名称をそのまま使っている事を疑問に思いつつ晴嵐も遊んでみる事に。

 トランプで使われるカードの枚数は52枚、1から13までの数字のカードと……クラブ、スペード、ダイア、ハートの四つの絵柄がある。ゲームによっては、1から2枚のジョーカーが加わる事もあるが、このカジノの『テキサス・ポールデム』では使われないらしい。

 現在は晴嵐が開始してから3ゲーム目。プレイヤー数は晴嵐を含め6人。この間、晴嵐は一度もまともにゲームをしていない。何せ配られた初手の二枚があまりに弱すぎたのだ。正直『ゴミ手』と呼んで差し支えないレベルである。場代だけ払わされている形だが、ある意味では安心した。


(……意図的に良い手を配って、初心者をガメるようなやり口はしないか)


 ギャンブルに依存させる手法の一つ……最初だけガッツリ儲けさせて、後はアドレナリン中毒と、歪んだ学習をした脳みそで自爆させるやり方だ。機械的な仕組みでもハマる奴はハマるし……創作物の中でも、腕のいいディーラーが仕込んでいる場面を見たような気がする。それと比較すると現状は酷い有様だが、ある意味ではフェアとも取れるだろう。


(さて……そろそろ良い手が来て欲しいが……)


 6人で座るテーブルに、ディーラーが手早くトランプを配る。合計12枚を数秒で配り終え、最初のベッドが始まった。

 表情を殺しているが……晴嵐の心の底はため息が出そうだった。

 彼の手札はクラブの2とスペードの7……同じ絵柄を5つ揃える『フラッシュ』も、5枚のカードを順番通りにする役の『ストレート』も遠い。下位の役の場合、数字が大きい方や枚数で優劣を競うルールもあるから……はっきり言って、このルール上最弱の札の組み合わせと呼んで差し支えない。

 せめて弱くても同じ番号2枚とか、同じ絵柄とか、片方のカードがキングやエースなどの上位札なら救いようがある。だがこの手札は……どうあがいてもゴミ。三回連続で酷い手札を引いたが、ことさらコレは一番弱いまである。


(どうしたもんかな……)


 普通なら即、ゲームを降りるのが安定択。勝負にならない手札で、勝負に出る馬鹿がどこにいる。今まで二回もそうやって即降りして、周囲から少し白けた目線を浴び――そこまで考えた晴嵐は、頭の奥に電流が走った。

 この状況はむしろ『使える』可能性がある……まだたった二回、同卓しただけの相手だが、だからこそ逆択は通るかもしれない。順々に回って来るベットの順番を見るに、周囲は誰かの動き待ちのようで……金額はほぼ最少額。ならば仕掛け時と判断した晴嵐は、一気に三倍のチップを積んだ。


上乗レイズだ」


 他の連中が騒めく。そりゃそうだ。二回連続で降りていた消極的な輩が、今回に限って強気にチップを張る行動……これを見た相手が思う事は一つ。『コイツ良い手が入ったな?』だ。

 ……とんでもない。むしろ今までで一番酷いゴミ手である。しかし二回連続の消極的な即降りの後ならば『流石に三回連続で弱い手は無いだろう』と思いがちだ。晴嵐だって『そろそろ良い手が来てくれ』と念じたくらいである。

 その前提状況ならば――逆説的に『強気』は有効。たとえ手が弱くても、この二枚は非公開情報。ハッタリ、ブラフも、ホーカーのアクセント。現に隣の奴を含む二名を降ろす事に成功した。残り三人の対戦相手は「同額コール」を宣言。三枚のカードが場に公開される。


(……一組は出来たか)


 ハートの2、スペードの5、クラブの6……これまた弱っちいカードばかりがめくれた。3と4の二枚を持っている奴がいるなら五枚連番ストレートの完成だが……この二枚のハンドで勝負するには勇気がいる。他の連中は表情を殺しているが、多分内心で毒吐いているだろう。レートを上げた勝負に乗った以上、基本的に強いカードを1枚は握っているのが自然だ。

 晴嵐の手はクソザコだが、幸いな事に2が二枚……同じカードを2つ揃える簡単な役『一組ワンペア』が成立。とはいえ、全く安心できる強さではない。初手で上位番号のワンペアを持っている奴がいたら、余裕で負ける。


様子見チェック


 誰も掛け金を上げずに、様子見を宣言。ゲームは進み、四枚目に公開されるのはクラブの13……

 クラブの絵柄を2枚持っているなら、最後の1枚がクラブで絵柄統一フラッシュが完成し得る。あとは晴嵐の立場の場合、一枚でも13を持ってる奴がいても負ける。もう1度、様子見チェックを宣言した晴嵐だが、ここでゲームが動いた。


上乗レイズ


 二つ左隣の奴が、中途半端な量のチップを追加した。少なくはないが、多くも無い。払えなくもない範囲だけど、中々怖い賭け方である。

 ――ポーカーは役で勝つのも大事だが、それと同じくらい『相手を勝負の場に引き出す』のも重要だ。強い手が来たら強気になりたいのはそうだが、相手に降りられると言う事は、それだけ相手からチップを巻き上げられない事に繋がる。せっかくの勝てる勝負なのに、うま味が減ってしまうのだ。

 その点、半端な量の賭け方をされるのは悩ましい。勝負に乗れなくはないが、相手に誘われていると感じる。しかしそれはブラフなのでは……などなど、思考がプレイヤーの脳を焼いてくるのだ。

 タイミングも、強いカードが一枚場に落ちた時……ブラフ臭いが、ここまで臭わせる立ち回りは逆に怖い。現に追加で一名が離脱フォールドし、晴嵐含め三名が残った状況だ。


「「同額コール」」


 彼は降りない。どちらかと言えばブラフ臭いと判断。もう一人選択を迫られたプレイヤーも悩んでいたが、結局は乗ったらしい。

 最後の一枚、これ如何で全員の命運が決まる……少なからず感じる高揚感の中、最後に公開された一枚は――

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