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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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セーフティー

前回のあらすじ


晴嵐に支給された『悪魔の遺産』……彼に対し、台座に置かれたソレに触れながら、念じるように指示するレオ。そのまま試射場に向かい、レオが一通り装填を終えて、引き金を引くも発射出来ない。不良品と疑う晴嵐だが、レオは平然と彼に差し出した。

 渡された武器……晴嵐に支給する『悪魔の遺産』だが、この行動は意味が分からない。装填の手順を実演し、引き金まで引いたのに発砲されなかった銃……不良品と思しきソレに首を振って突っぱねた。


「あのなぁレオ……渡す相手が違うじゃろ。製造者につき返してメンテナンスを――」

「ふふ……やっぱり知らないのね」

「何?」

「アタシが引き金を引いて、弾が出ないのは『正常な動作』よ。そういう仕様だもの」

「どういう事じゃ?」

「おしゃべりするより、やってみた方が早いわ。撃ってみなさい」


 そう言ってレオは、装填済みで弾の出ないマスケット銃を晴嵐に押し付ける。彼女と銃を交互に見やって、半分硬直する晴嵐。何かの罠か? と邪推しかけたが、やり方が回りくどすぎると頭を振って否定した。気を取り直し、右手で的に向けて突き出して、半信半疑でトリガーを引くと――

 乾いた炸裂音がひとつ響き、照準を向けたヒトカタの肩に穴が開いた。


「……⁉」


 身構えてこそいたが『弾が出る』と予想していなかった晴嵐は震えた。咄嗟に反動を抑え込むが、元々の反動が小さめなのだろう。銃口が跳ね上がるほどじゃなくて助かった。

 銃口から硝煙が立ち上っているから、間違いなくこの銃から発射された事になる。驚き固まる彼に、どこか得意げな顔の獣人娘が笑いかけた。


「だから言ったでしょ? こういう仕様だって」

「わしは……特に何もしておらんぞ。いったいどういうカラクリで……?」

「セーフティーよ」


 何度か出てきていた、安全装置を意味する『セーフティー』の単語。目を白黒させる彼に「説明はするから、練習しときなさい」と促され、手を動かしながらレオの話を聞いた。


「職人の受け売りになるんだけどね……輝金属は使い込むと、使用者の事を『覚える』事があるらしいの」

「金属に意志や自我があるとでも……?」

「そういう意味じゃ無いわよ。魔導式であれ魔術式であれ、起動する時に『輝金属に向けて念じる』でしょ?」

「まぁ、そうじゃな」

「で、特定の人物が『念じて』『作動』し続けていると……輝金属がその思念だけで起動する現象が起きるんだって。他の人の『念じる』で『作動』しなくなっちゃう事があるらしいわ。同じ言葉を頭で思い浮かべても……人によって声色とか強さとか違うでしょ? 個人の思念パターンを輝金属が『記憶』しちゃうみたい」


 今では特に強くは意識しないが……輝金属の道具を使う時は軽く念じる必要がある。この時の思念の形に個人差があり、その個人差を記憶してしまう……と言う事か? 初遭遇の現象に戸惑うが、レオはこうも続けた。


「ま、最近は覚えないようにする加工法もあるみたいだから、この現象が起きるのって、古い輝金属か意図的に『覚える』ように調整した物だけね。さっき台座の上で、アンタに念じるように言ったでしょ?」


 この『マスケット銃』『悪魔の遺産』を晴嵐に支給すると言った時……奇妙な台座の上に置かれ、晴嵐は念じるようにレオに言われた。その意味は――


「あれで『わしの思念パターン』を、コイツに覚えさせた訳か……いや待て、輝金属なんてコイツのどこに?」

「着火用のがあるじゃない」

「!」


 外部に出た突起……熱か電気か知らないが、マスケット銃内部の火薬に着火するための輝金属。ここに『晴嵐の思念』を記憶させることによって――『この銃は晴嵐以外では発砲出来ない』加工処理が施されている? 確かにそれなら、レオが引き金を引いても撃てず、晴嵐が発砲できた理由になるが……過去に起きた事と一つ矛盾がある気がする。すぐにそれを口にした。


「海賊から奪った時は使えたぞ……」

「船によって、セーフティーつけるかどうかの方針が違うのよ。私掠船はセーフティー付ける方針が多めで、海賊は少な目ね。あるいは……ねぇ、海賊の身内いたりする?」

「……おらんはずじゃ」

「じゃあ天文学的な確率かしら? このセーフティーも完璧じゃなくてね。稀に本人以外でも反応する事があるらしいわ。親兄弟や血縁者だと、結構な割合で使えるとか。特に獣人やオークだと確実だって、マルダが言ってたわ」


 全く関係ない気もするが……臓器移植の事が晴嵐の脳裏によぎった。拒絶反応とか、予後が良いとか、なんとなしに血縁者の方が良いと聞いた事がある。確かに、親兄弟で性格や資質が似ている事もあるし、近い現象は起きる……のかもしれない。


「戦闘中敵に奪われても、相手に利用されないのは大きいな。味方のを回せないのは痛いが……ん? なら兄弟や血縁者なら?」

「アンタほんと頭回るわね。そういう私掠船や海賊もいるわ。他の理由としては……横流しの防止ね」

「あぁ……自分しか使えん武器じゃ、流用も出来んか」


 穴こそあるが『登録した人間で無ければ発砲が出来ない』機構は、近代火器と形こそ違えど『安全装置』には違いない。私掠船の方が多い理由は、この辺りも関係していそうだ。密かに治安維持をする者達が、それを乱すような武器を横流しなど……国家としては冗談ではない。それを防止するためにも『セーフティー』を備え付けた、あるいは作ったと考えるべきだろう。

 そこまでセーフティーの理解が進んだ事で……晴嵐はレオと初対面した時のことに思考が及ぶ。晴嵐とレオの初対面……銃を突きつけ、突きつけられた場面と、その後に晴嵐が引き金を引いても『発射できなかったレオのリボルバー銃』の事に。

用語解説


輝金属の性質 (追加情報)

 古い輝金属の加工法だと、使用者の思念を記憶してしまう事がある。こうなると、他の人間に使えなくなってしまう。ただし完全ではなく、血縁者であれば作動する事もあるらしい。特にオークと獣人なら確実だそうだ。

 現在は技術の発展によりこの性質を除去しているが、意図的にこれを利用して作られたのが『セーフティー』だ。


セーフティー

ユニゾティア製の『悪魔の遺産』こと『銃』に備え付けられた安全機構の事。着火を輝金属に頼った形にした事、そして古い輝金属の性質の『使用者の思念を覚える』事を利用し、登録した者でないと作動しない構造になっている。これを付ける・付けないは……私掠船や海賊ごとに方針が異なるが、私掠船は多い傾向。メリットは武器の横流しを防いだり、戦闘中に敵に奪われ利用されるのを防ぐなど。

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