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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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支給

前回のあらすじ


その後もしばらく、私掠船のメンバーとして過ごしていた晴嵐。ある日レオが『陸に行く』と言ったとたん、船員たちが歓喜の声を上げる。ほぼすべての船員にとって休息を取れる時間だが、そこでふと晴嵐の金払いについて気になり、レオに聞きに行く事に。

「セイラン! ちょうどいい所に来たわね!」


 操舵室に晴嵐が入った途端、レオが開口一番にこのセリフを彼に吐き出す。彼女も給料について考えていたのだろうか? 急かさず続きを待つと、獅子の獣人は彼に命じた。


「上陸した後の事なんだけど、アンタはアタシに同行しなさい!」

「なんじゃ? 飲みの誘いか?」


 これから私掠船は寄港し、船員たちは久々の陸を味わう。船長のレオも例外ではないと考えたが、彼女は豪快に笑って答えた。


「用事が済んだらそれもいいわね! でも別件があるの。大事な話よ」


 それは高揚からだろうか。レオの視線に真剣さが宿っている気がする。晴嵐がそれを表に出す前に、彼女から次の話題を振られた。


「ところでアンタ、なんでアタシのとこに? それとも用事あるの別の人?」

「船長であっとるよ。その、あー……給料の話で」

「そこんとこ全然決めて無かったわね。タダ働きでいい?」

「ふざけるな」

「冗談冗談! ちゃーんと一般船員と同じ金額を、陸に上がった時に支給するから!」


 まだ入れたてだから研修期間だと、給金を減らされても仕方ない……そう身構えていた晴嵐だけど、レオは特別視も軽視もしないようだ。この言いぶりだと、最初から研修期間を設けていないのかもしれない。豪放に笑う彼女を見てそう思った。


「さ、そろそろおかよ! 貴重品はちゃんと持って出なさい?」

「お前はわしのおかんか?」

「この船みんなのおかんです!」

「若作り過ぎるじゃろ」

「それ誉め言葉だから!」

「へいへい」


 軽口を交わしてから操舵室を離れ、手荷物を取りに船室へ行く晴嵐。ちょうどヒルアントも準備していたらしい。先に荷物整理をしていたようだ。

 彼は『ある武器』を預けていた。なんでその武器を……と注視する晴嵐。彼の視線に気づいたらしく、エルフの彼がガンを飛ばし返した。


何見なにみとんのやワレぃ!」

「置いていって良いのか? と思っての。使える武器じゃろ?」


 ヒルアントが収納するのは『フリントロック銃』……ユニゾティアで『悪魔の遺産』と呼ばれている武器だ。指先一つで遠隔攻撃を可能とする武器。持ち運べるなら、懐に抱えておきたいだろう。終末世界を生きていた頃も、彼はハンドガンを常に懐へ忍ばせていた。彼の抱く順当な疑問に、最初より軟化した口調でヒルアントが答えた。


「規則で置いていかんとアカン。楽に人を黙らせる手段が手元にあるのは、まぁ色々と良くあらへんからな。昔、酔った勢いで使う馬鹿がおったらしい」

「あー……」


 殺人を簡略化する道具が手元にあれば、酒の勢いでついカッとなった時、ブッぱなす事故が起きかねない……か。派手な浪費が認可されていれば、過剰なアルコール摂取で理性のタガも外れる人間もいるだろう。非公式とはいえ、国家組織の私掠船が事件を起こす訳にもいくまい。今度はヒルアントが彼に問う。


「つーかセイラン! お前は自前ンあらへんの? ワイと一対一タイマンの時に持っとったやろ」

「あれは海賊から奪った物で、その場で使い捨てたわい」

「ふーむ……」


 エルフの男が視線を泳がせる。喉に小骨が刺さっているような、何かすっきりしないような……そんな表情だ。掘り下げたい気持ちもあったが、船内からまた大きな声が聞こえる。耳を澄ませても細かく聞き取れないが……多分『陸が見えた』のだろう。


「ままえぇわ。さぁてお楽しみの上陸や!」

「お主にとっても楽園か?」

「当り前や!」


 役職関係なく、陸で派手に過ごすのは船乗りの楽しみらしい。命を削り合った相手でさえうわついている。さほど感情が揺れ動かない晴嵐でも、少しばかり期待してしまうと言うものだ。


「んじゃセイラン、せいぜいお前も楽しむとエェで!」

「そうさせてもらおう」


 が、その前に……晴嵐はレオに呼びつけられている。羽を伸ばすにしたって、彼女との用事を終えてからになるか。手荷物の整理を終え、晴嵐も久々の陸地に上がった。


***


 すっかり日の落ちた港町は、爛々と街灯に照らされて明るかった。

 視覚的な『明るい』だけではない。港は船員たちがハメを外す場でもあったのだ。彼らが陽気なのは、普段の仕事から解放されたから……その側面もあるのだろう。


「さぁてセイラン! 行くわよ! ついてきなさい!」


 レオも高揚を隠していない。彼女としても、セイランとの用事を済ませた後は休息の時間なのだろう。だからこそ彼も問わずにいられない。


「なぁレオ、わしをどこに連れて行く気じゃ?」


 彼女は休みを差し置いて、晴嵐を指名し同行を求めた。上陸後は船員が自由行動に入るから、その前に呼び出すのだから……どうしても優先したい事柄があるに違いない。内容を聞かされていない彼としては気になる。しかし彼女は意味深な事を言うばかりだった。


「アンタへの支給品プレゼントよ」

「金なら貰ったが」

「それとは別枠。仕事上必要だけど、物が物だからすぐに渡せなかったの。これから一緒に取りに行くわよ!」


 そんな勝手な……と顔に出ている晴嵐を無視して、レオはぐいぐいと港町の一角を進んでいく。

 辿り着いた先は……晴嵐に僅かな懐かしさを思い起こさせていた。

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