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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第二章 ホラーソン村編

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千年前の事件・後

前回のあらすじ

 この世界を大きく変革させた、千年前の歴史についてテティは語り始める。女神云々は胡散臭く感じていたが、内容は人間の醜さが十分に満ちており、終末世界に慣れた晴嵐にも、理解と共感が及ぶ内容であった。だが……この世界の人間にもまだ判明していない謎がある。突如として空から降って来た人々……彼らが世界をどう変えたのかを、続けてテティは語り出す。

 長い話に区切りをつけて、飲み物で乾いた喉を潤す。村の兵士たちが騒がしくなる最中で、テティの千年前の話を続けた。


「ヒューマンが勢力を伸ばした理由はもう一つあるの。さらに……降って来た人たちは、独自の文化や技術、発想を持っていた。例えばだけど……戦闘中に相互通信出来る利便性。病気の原因になる病原菌や、ウイルスの存在の示唆。生態系の複雑さや管理への知識……もはや彼らの存在そのものが宝の山だった」


 情報とは、時に値千金の価値を持つ。知る者と知らない者の格差は、極めて大きい。現時点での状況を読み、率直な感想を口に出す。


「ほー……これだとヒューマンが圧勝しそうな流れじゃが……」


 ニヤリと笑って少女は、ちっちっちと指を振った。


「ところがそうはいかない。この降って来た人達が突如、ヒューマンの勢力圏からの独立を宣言して、全世界に通達するの『自分たちもこの世界の覇権争いに参加する』ってね。さらに最悪なのは……予定より半年早く、彼らが各勢力へ奇襲攻撃を実行、大打撃を与えた事ね」

「な……そしたら監督役から粛清されるじゃろ」

「実際に真龍種が攻撃を仕掛けたみたいね。でも悉く返り討ち。異能を駆使して、真龍種さえ倒されてしまった」


 何たることか……聞いているだけでも目眩がする。

 降って湧いた人々は、いわば余所者である。それが半年で戦争の準備を終え、いきなり全勢力に殴りかかるなぞ、誰が予想できよう?


「世界は混乱に陥った。突然やって来て、特別な力を振り回して、世界を我が物にしようと企む人々に。彼らは『欲深き者ども』とか『異界の悪魔』とか……ともかく今でもかなり嫌悪されてる。

 どの勢力も『一時停戦して、欲深き者どもへの対処を優先すべき』と声を上げた。けれど全く歩調が合わなかった」

「そりゃそうじゃろ……」


 約十年の準備期間で、世界を賭けた戦争の準備をしていた相手と、どうして今更和解できるのか。勿論各勢力も理性では分かっている。しかし感情がついていかない。打ち勝つには選択肢がないのに、積み上げた不信と対立が、手を取り合うことを躊躇わせる。


「『欲深き者ども』が領地を広げ、このままじゃ世界は奴等に征服される。混乱と混沌の中――また一つ、大きな事件が起きた」

「今度はなんじゃ?」

「最初に交渉を持った女性、覚えている? 『誰とも誤解無く分かり合える』彼女は、数人の仲間を連れて『欲深き者ども』の勢力から離反するの」

「なんと……いや、何故じゃ? そのまま身内に居れば勝てるじゃろ」

「意訳すると『ポッと出の異界人が、世界を荒らすことを容認できない』と……自分たちの行いを、彼女自身が許せなかったみたい。これを機に、戦局は一変したわ」


 抜けたと言っても、たったの数人で何ができる。目つきを鋭くする彼に、テティはもう一度指を振った。


「言ったでしょ? 彼女の能力は『完全な相互理解』よ。たとえそれが、戦争寸前の相手だろうとも……効果を発揮する」

「……女神でも不可能だった、異種族の調停を?」

「そう。彼女の異能が、バラバラだった世界を一つにした。不可能だった連合が、彼女の下に完成したの。今では彼女はこう呼ばれている『世界を繋いだ歌姫』って」

「歌姫?」

「元の世界では歌手だったみたい。なかなかの技量で、今でも彼女の曲は人気よ。機会があれば聞いてみれば?」


 頬杖を突きつつ、気だるそうに晴嵐は頭を動かすだけだった。正直どうでもいい。興味のある、世界の話を先取りする。


「ともかく……その歌姫がすべての民族を和解させて、乱入者をぶっ倒したんじゃな。で、その後は?」

「歌姫は戦いが終わると、一年もせずに死んでしまうの。規格外の力を、かなり無理に行使していたみたい。世界のために身を削った彼女は、死んだあと女神に召し上げられる。自分の代わりに世界を調停し、守ってくれた歌姫を……神様は拾い上げた」


 神にさえ叶わなかった、民族同士の調停。それを代行し、降って湧いた人々を撃退し、勝利に導いた歌姫……

 神様の目線から見ても、その歌姫とやらは好意的に映っていたのか。晴嵐には理解しがたい人種だが……大きな功績を残したことは間違いない。


「この戦いの後……各民族は対立を控えるようになる。彼女が示してくれた融和の可能性。別の種でも、相互理解は出来る。共に歩んでいくことが出来る……当時の人達の心に、大きな変革をもたらした。これが、千年前に起こった事件の大筋ね」


 長い昔話が一区切りつき、語り手の少女が水を要求した。適当な飲み物を晴嵐が注文し、少女は渇いた喉を潤す。

 最初こそ胡散臭いと感じた、神と世界の話。しかし蓋を開けてみれば……話の筋自体はそこまで可笑しくはない。不明瞭な点も多いが、テティ本人も「全ては分からない」と明言している。深く聞いても、答えが返ってくるとは限らない。

 それに今は、優先して尋ねるべき事がある。


「確かに重要な歴史じゃな。だが……どうしてオークが出てこない?」

「彼らはこの戦いの最中に、生まれた種族だから。厳密にはわからないけど、少なくとも……別の世界から人が来る前には、この世界にはいなかった。

 後から空から降って来たのか

 戦いの中で、新しく変異して生まれたのか

 これは眉唾だけど……『欲深き者ども』が作った種族じゃないか? なんて説まである。

 ともかく、千年前の戦いで誕生した新しい種族……これを『二次種族』と呼んでいるわ。今日はこの種族の話までで、終わりにさせてもらうわね」


 まだまだ話すべき常識はある。が、正直もう頭がパンパンだ。

 彼女の時間を、これ以上使わせるのも申し訳ない。

 もうひと踏ん張りと気を引き締め、この世界の民族について、彼は一言一句残さず、頭に刻み込んでいった。

用語解説


欲深き者ども・異界の悪魔


 元々は千年前、空から降って来た人々。受け入れたヒューマン陣営に多大な恩恵をもたらしたが、その後突如造反。『自分たちも覇権争いに参戦する』と宣言し、女神の決めた期日の半年前に、各勢力に奇襲攻撃を敢行。大打撃を与えた。

 当然、真龍種が制裁を加えようとしたが『測定不能の異能力』により、返り討ちの憂き目を見る。その所業から現在の世界においても、嫌悪されている存在。


世界を繋いだ歌姫 (略称として『歌姫』『歌姫様』などがある)


 空から降って来た人々の代表として、最初にこの世界と交流を持った女性。以前の世界では歌手だったようだ。

 欲深き者たちの所業を見て、『この世界を荒し壊すことを容認できない』と、彼女の賛同者たちと共に離反した。バラバラだったこの世界の種族を、自らの異能『完全な相互理解』の能力を用いて、全ての種族の手を繋ぎ『欲深き者ども』の撃退に貢献した。

 ただし、無理な力の行使をしていたらしく、戦争終結一年後に死亡している。世界のために身を削り、女神でも不可能だった調停を行った彼女は……女神によってその魂を召し上げられ、今は神側にいると言う。


 戦争前と戦争後

 この千年前の事変をきっかけに、各種族は融和を進め始める。自民族至上主義は、事変前と比べて大きく息を潜めるようになった。また、異界の知識や技術形態も流入し、この世界『ユニゾティア』は大きく、そして独自の発展を始める……

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