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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第二章 ホラーソン村編

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千年前の事件・前

前回のあらすじ


 引き続きこの世界の話を、種族に主眼を置いて語るテティ。六つの種族を「一次種族」と呼び、晴嵐はその意味を問う。すべてはこの世界の千年前に起こった、女神の宣告から始まったと言う。種族の話を脇に置いて、彼女はユニゾティアの千年前について、語り始めた。

『神様』の単語を聞いた瞬間……すっ、と胃の底が冷えた。下らないと、反射的に斜めに構えてしまう。

 祈ったところで、願ったところで、クソッタレな現実は変わらない。

 終末世界を生きてきた彼にとって……神頼みや、神を信じる行為は『理解不能』以外の感想はない。額を擦りつけて祈った人間から死に、神を騙って搾取に走った、終末カルト宗教群の方が長生きだった記憶もある。

 その現実を見た後だと……どうも神様云々は白々しい。素直にその言葉を聞けず、つい腹の裏を考えてしまう。

 不敬な態度が滲んていたのか、テティが彼の態度を咎める。


「セイラン、聞く気ある?」

「……正直、胡散臭く思っておる」

「ならおとぎ話として頭に入れて。諸説あるから、私が全部正しいとも限らない」


 仏頂面を少しだけ緩め、改めて千年前の話に耳を傾ける。


「千年前のこの世界は『真龍種』を除く、すべての種族が対立していたの」

「何?」

「『ヒューマン』『エルフ』『ドワーフ』『亜竜種』『人魚族』。すべての種族が『自民族至上主義レイシスト』だった時代らしいわ。今の世界を考えると、ちょっと信じられないけどね」

「つまりあれか。『自分の種が一番だ』とツバ吐き合ってたのか」


 神の話云々は受け入れがたいが……こういう人の醜さは、素直に納得いく。

 唯一距離を置いていた真龍種の動向は? 彼の視線を読み取り、彼女は話を合わせる。


「でも『真龍種』は神様……女神さまの使いなのよ。この世界のバランスを保つ、天からの使者みたいなものね。下々の争いに興味は無い。でも世界を壊すような行動をするなら、勢力に対し制裁を下す」

「だから規格外の能力を持って……いや、女神から与えられているのか」

「そそ。で、何度も競り合いは起きていたけど。その度に『真龍種』を仲立ちにして、停戦して来た。でもある日、真龍種を疎ましく思った誰かが、仲介に来た真龍種を暗殺してしまう。激化する戦争と対立を目の当たりにした女神さまは宣言するの。『もう争いの調停はしない』って」


 手駒を殺されれば、身を引きたくなるだろう。しかし、少々対応がぬるい気もする。化け物ならば、報復を仕掛けそうなものだが……


「さらに……意訳だけど、こんな感じの事を言うの。『十年後、最低限環境を保全するから……好きなだけ覇権争いすればいい』って」

「全面戦争を黙認しおったのか……」


 状況を第三者として捉える晴嵐には……女神の心情は分からなくもない。

 調停しても調停しても、終わらない諍い。それどころか中立の立場にいた自分の手勢が、殺害されれば『もうお前らで好きにしろ』とそっぽを向きたくもなろう。


「各民族は宣言を受け、十年後の戦争の準備に入った。結果としてどの勢力も、その間は抗争を控えたみたいね」

「戦争の準備で争いが止まる……皮肉じゃな。じゃがこのままだと、今のこの世界に繋がらんぞ」


 もし、民族同士で全面戦争が起きていれば、絶対に禍根が残るはず。他の種族が行き来して平穏に暮らす……それが日常となるはずがない。

 的を得た指摘に、テティはニヤリと微笑んだ。


「そうよ晴嵐。女神さまが宣言した時期が、残り一年になった時……異変が起きた。突然この大陸の一点に、複数のヒューマンが空から降って来たの」

「……は?」


 意味が分からない。ぽかんと口を開けたままの彼に、少女は追加の衝撃をもたらす。


「その人たちは……言語が通じなかった。身に着けている物も違う、背格好だけはヒューマンに似ていた人々よ。落下地点は……当時人魚族の領域と、ヒューマンが鍔迫り合いしてた海岸線。先に接触したのは人魚族らしいけど、後からヒューマンが彼らを回収した。言葉が通じない事に戸惑っていたけど、ある時一人の女性が、代表者としてコンタクトを取った」

「言葉が通じんのなら意味ないじゃろ」


 恰好を崩す彼に、彼女も顔を曇らせて喋った。


「彼女の異能は、言語を必要としなくなる能力なのよ」

「? 何を言っとる?」

「その代表者は――『言語を使わずに、誰とでも誤解なく意思疎通、相互理解ができる』異能力の持主だったのよ」

「なんじゃその出鱈目は……? 魔法とやらとは違うのか?」


 テティの表情も優れない。呻くように彼女は口ごもる。


「彼女だけじゃない。この時降って来た人々は『測定不能の異能力』を、一人ひとりが保持していたの。原理もよくわからないし、未だに解明されていない謎よ」

「ふーん……」

「ともかく……彼女が中心となり、降って湧いた人達との交流が始まった。そして、急激にヒューマンが勢力を伸ばし始めた」

「どうして?」

「さっきも言ったでしょ? 降ってきた人たちが『測定不能の異能力』を保持していたからよ。彼女の『完全相互理解』もそうだし……『材料に手をかざすだけで、イメージ通りに物質を加工できる』とか『肉体をゲル状に変化させて、物理攻撃を受け付けなくなる』とか……あぁ、あと『一度でも行ったことのある場所なら、一瞬で瞬間移動できる』とかもあったかしら……?」

「どいつもこいつも規格外過ぎる。流石におとぎ話が過ぎるぞ……」

「私もそう思う。全部は信じてないし……他の異能持ちもいて、ここで上げてたらキリないわ」


 与太話にしか聞こえないが……それが『この世界の歴史』ならば聞き入れるしかない。「とりあえず続きを頼む」と促し、渋面に苦笑を添えて、語りは再開された。

用語解説


女神

 詳細不明。世界を見守り、管理する存在とされている。『真龍種』は彼女の使者であり、対立の時代に置いて、調停を行わせていたが……


ユニゾティアの千年前

 当時いた真龍種を除く五つの種族は、全員が全員『自民族至上主義レイシスト』であった。そのため対立が絶えず、その度に真龍種を仲介にして、停戦を行っていたらしい。しかしある日、真龍種の一人が暗殺されてしまい、呆れた女神は調停を放棄。「もう仲介はしない」「十年後に環境を保全するから、そんなに全面戦争がしたいなら好きにしろ」と、全ての民族に通達。準備期間に入った各民族は、その間だけ平和を維持していたが……


空から降って来た人々

 全面戦争を一年後に控えた時期、人魚族とヒューマンの中間地点に空から降って来た、謎のヒューマン集団。今でも原因は不明。


測定不能の異能力

 空から降って来た人々が、一人ひとり保持しているとされた、規格外能力。例えば代表者の女性は『完全相互理解』という異能を使用出来た。魔法ですらない、正体不明のイレギュラー能力。現在でも原理は、明らかにされていない……

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