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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第七章 聖歌公国・後編 ダンジョン編

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本番開始

前回のあらすじ


 突然の理不尽な死を体験したのに、何故か意識はチュートリアル空間に戻っていた。訳が分からず混乱する中、死神が説明をする。

 ダンジョン内部では、死んだ後も蘇生や救済の措置がある……迷宮内での活動がポイントとなり、それを使って蘇生や買い物が出来るらしい。外部とまるで異なる法則で動くダンジョンは、中にはここ深くで暮らす者もいると言う。

 さぁ、初回説明チュートリアルは終わった。そう言わんばかりに案内役が鎌を振り下ろすと――

 これで何度目だろうか? 空間が暗転し、ルノミと晴嵐の二人が大地に立つ。

 地面にしか見えない、土の床と……迷宮のようにそり立つ巨大な土の壁、天井も暗いのに、何故か光源はあるらしい。不思議と通る視界と突然の転送に、晴嵐は再び固まった。


「えぇい……こう何度もやられると、頭がおかしくなる……」

「なろう系では良くあることです!」

「あってたまるか」


 こんな異常現象と無茶苦茶が、なろう系では常識らしい。晴嵐の順応が鈍いと言うより、ルノミの適応速度が速すぎる。現にルノミは、今も訳知り顔で頷いた。


「ここからが本番……か。晴嵐、進みましょう」

「進むって……どこに?」

「次の階層への入り口……下り階段のようなモノを探しましょう。魔法陣かもしれませんが……ともかく、ソレを探すんです」

「あの案内役、親切なんだかそうじゃないんだが……」


 ただ、全く説明が無意味かと問われれば、絶対に違う。この『ダンジョン』が、異常な空域な事は理解できた。条件を付ければ、死んでも蘇生が可能だったり……そもそも『エネミー』はこの世界や地球基準で見ても、イレギュラーな存在が襲ってくる。あの案内役が言った通り『ここではダンジョンの法則こそがルール』なのだろう。既に順応済みのルノミは、晴嵐に「ライフストーンを開いてください」と促した。

 面倒くさいが、この場において彼の判断はおおよそ正しい。緑色の石ころが投影する映像は、日ごろと異なり先ほどと同じだ。ゴーレムの彼も同じだが、そこから先が違っていた。


「地図を開け」


 新たな操作を指示すると、立体的な地図が開く。表示されたのは、何も表示されていない画面。故障なのか、それとも……電波の悪い地域に入って、情報が外部から入ってこないのだろうか? ルノミも少し考えているようだ。


「何だこれは……?」

「んー……あー……多分ですけど、僕らが歩いたり進んだりすると……実際にやってみましょう。ついて来て下さい」


 地図機能を開いたまま、ルノミが前進を始める。晴嵐も同じようにやろうとして……やめた。文明時代での問題『歩きスマホ』を想起した男は、金属が歩く先を警戒しつつ、追従する。映像を眺めて歩行する様子は、確かにはたから見て危なっかしい。あれでは罠を踏むのでは? 止めようと手を伸ばしたのと、ルノミの静止は同じだった。


「見て下さい。これ、分かります?」

「……?」


 真っ暗だった地図の一部が、明るくなっている。これは一体? と晴嵐が問うと、ルノミは機能への見解を述べた。


「これはマッピング機能です。進んだエリアが明るくなって、未探索の空間は暗い。少なくてもこれなら、同じ場所をグルグルと回らなくていい」

「ふぅん……それはともかく、移動しながら見るのはやめた方がいいぞ。歩きスマホみたいで危なっかしい」

「あっ……確かに、そうですね」


 いった傍から、ルノミの踏みしめた足元が沈みこんだ。よくよく見れば、明らかにタイルが浮いており、感圧板の類と察しが付く。間違いなく罠だ。

 ( ゜Д゜)の表情は、誰が見ても「やってしまった!」と慌てている。どこからともなく地響きが聞こえ、嫌な予感を二人は背後を見て確かめた。

 ――巨大な土色の大岩が、二人を押しつぶそうと転がって来る……!


「やっば……!」

「走れ! 走るぞルノミ!!」


 どこぞの映画で見たようなシーンに、急いで逃走する晴嵐とルノミ。幸い速度は遅いのか、全力疾走でどうにか曲がり角までたどり着く。


「こ、これでとりあえず……」

「馬鹿者! 止まらず曲がってきたらどうする!? 広い部屋まで走るぞ!! 急げ!! 絶対に立ち止まるな!!」


 休む選択肢に、晴嵐は危険を感じたらしい。念には念をと、走った行為は吉と出た。ドーン! と曲がり角に激突したと思いきや、ゆっくりと球体は晴嵐たち側に転がり出す……


「まずいまずいまずい!」

「初手から殺意高くない!?」


 狭い道の先に、やっと見えた広間が見える。背後から迫る大岩の気配。道を抜け、広間に出た瞬間、二人は飛んで散開。頭を抱えて震えるルノ。、受け身を取って立ち上がる晴嵐。回避行動を終えた時、大岩は広間へ勢いよく侵入し――派手に壁を壊して爆散!

 激しく地面を揺さぶり、天井からぱらぱらと細かな粒子が落ちる。震度で言うなら五弱ぐらい。直近の震源を見つめつつ、お互いに顔を見合わせて息を吐いた。


「あ、危なかった……」

「全く……言わんこっちゃないな」

「で、でも……見て下さいよ! ホラ!」

「あん?」


 指さした先は大岩。衝撃に耐えきれず、ちょうど綺麗に真っ二つ。包丁で切ったような美しい断面に、なんだかなぁと晴嵐は目を細める。

 が、ルノミが見つめいるのは岩ではない。その奥にある壁が崩れ、内部の隠し部屋が露出した。瓦礫がれきの奥に一つ、チュートリアルでも見た宝箱が二つ置かれている。青ざめていた顔から一転、ルノミは(*^▽^*)と満面の笑みを浮かべていた。


「災い転じてなんとやら!!」

「おい待てルノミ! そうやって調子に乗ると……」


 かちり、とまた何か余計なモノを踏んだ音が聞こえた。

 絶望的な表情を浮かべ、ゆっくり晴嵐に振り返る。

 地面が隆起する音が聞こえ、深々とため息を吐く晴嵐。地べたからやって来るのは、泥で出来た人形ひとかたの群れ――

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