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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第一章 異世界編

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追撃を阻むモノ

前回のあらすじ

 オークの拠点を制圧し、村人たちを救出に入るシエラ。洞窟内に放置された、コブ付きの縄に違和感を覚えつつ、囚われの人々を遂に救出に成功した。

 しかし、令嬢であるヴィラーズ・キクチは、拷問を受けた状態で発見される。シエラは歯噛みしながら、彼女を洞穴の中から引き出した。

 一方その頃――軍団長率いる兵員は、敗走するオークへ追撃を仕掛けていた。

 統制に多少の乱れがあると、事前に情報を得ていたが……戦闘が始まると手ごたえが無さすぎる。以前の戦闘では敵の大半が、理性を捨てて狂戦士と化していた。

 魔法の旗をさらに先鋭化させた効果……『狂化』の影響だ。この精神系魔法は実践投入された後に、実地で暴走が多発し、国家単位での使用は禁止された。

 問題の多いその魔法は、今回何故か発動していない。まだ隠している前提で慎重に攻めたアレックスは、旗越しに届いた報に表情を変えた。


『こちらシエラ隊、捕えたオークから情報を得られました。よろしいでしょうか?』

「何か?」

『どうやら内部で揉めた際、狂化を付与するための『輝金属武器』を破損した模様。よって今のオーク達は、精神系魔法を一切使用不能のようです』


 あまりに脆い統制に、こちらに抗うオークたちは、理性を保ったまま戦っている。ただ、魔法の旗まで使わないのは、些かアレックスの腑に落ちない。


「……予備も保持していないのか?」

『えぇ。旗を一本も保有していないようで……『狂化』に依存しっきりの戦略をとっていたようです。吐いたオークが時折『脳筋長』とぼやいてます』

「なるほど……報告感謝する。引き続き任に当たってくれ」

『は!』


 意識を前線へ戻し、オークの背中を追い続ける。反撃らしい反撃が無いのは、戦略の核を失っていたからか。

 この情報があれば、最初から撃滅戦を仕掛けていたのに。口惜さを滲ませて、アレックスは全体に共有した。


「兵士諸兄へ。どうやら我々を苦しめた魔法は、奴等の手を離れたようだ。禁域に逃げられる前に、敵の首魁を捕縛しろ」

「了解!」


 旗を拡声器にして、森と兵士とオークへ声を届かせた。敵に聞かれた所で、大した影響はない。一刻も早く行動し、時間切れになる前に仕留めなければ。憂いが消えた今、ここで押し切ってしまいたい。追撃は苛烈に、突撃は果敢に、行動は迅速に行われた。

 薄暗い森の踏み進む兵士たち。斜陽に染まる森林を弓矢が奔る。

 攻める側も逃げる側も、ひたすら慌ただしく駆け回り……木々がざわめくと動物たちが逃げ出す。落伍する者が背中から矢を浴び、逃避者たちは振り向かず、真っすぐ森の奥地を目指して逃げる。

 そこは彼らの安全地帯。オークのみが使える聖域。彼らは、やみくもに駆けているのではない。この先にある領域を目指し、逃げ切りを狙っている。村の兵士たちも承知してるために、攻撃は瞬辣を極めた。

 しかし――制圧に重点を置き、殲滅戦への判断の遅れが、オーク達の逃げ切りを赦してしまう。なんの変哲もない森の一点……そこから兵士たちは、ピタリとも前進不可能になってしまった。


「くそ! 禁域の結界か……!」


 兵士たちとアレックスが呻く。このグラドーの森に、オークの部族が居座る最大の原因がこれだ。

 グラドーの森の深部には、禁域と呼ばれる特殊な領域が存在する。

 この禁域は、ほとんどの種族が『前進不可能になる結界』が張り巡らされている。知性体ではオークのみが、侵入することを許されていた。

 なので、ここを根城にするオーク部族が後を絶たない。討伐部隊を派遣しても、禁域まで逃げ込めば、追撃を振り切れてしまう。

 不思議とその結界内部には、オーク達も拠点を作らない。証言によるとその領域には……得体のしれない何かがうろつき、記憶を無くしたり、行方不明になる者が多いと言う。禁域内に拠点を作った場合『拠点ごと跡形もなく消えてしまう』らしい。

 実際正規の募集で、オークのみの調査隊や、討伐隊を差し向けたこともあった。ただ……未知の領域に何かがあるのか、ほとんどが帰って来ない。中には部族に馴染み、敵対してしまうケースまで存在する。

 だが同時に、内部には奇妙な遺跡も存在し、未知の道具や記録が、発見されることもあると言う。

 誰が何の目的で、こんな領域を作ったのかは知らないが……森に隣接する村にとって悩みの種だ。

 オークが居着くのもそう、未知の領域にロマンを求め、探索する馬鹿が絶えないのもそう。動物やゴブリン、オークに逃げられ、この村の人間は何度頭を抱えた事か。

 アレックスは歯噛みする。もう少しうまく立ち回れたと、己の判断を責めていた。部族のリーダー格を捕えたり、打ち取った報告も届いていない。そこそこ成果は得られたものの、デカい魚には釣り糸を切られた。


「やむを得ない……全軍反転、シエラ兵士長と合流するぞ」

「……了解」


 禁域からは距離を置きたい。侵入に制約がかかるのは、知性体の出入りだけだ。つまり遠隔から弓や魔法の攻撃は有効で、オーク達が安全圏から逆襲を目論むかもしれない。勿論こちらも反撃は可能だが、圧倒的に向こうに地の利がある。脇からゴブリンが乱入してくることも多く、禁域周辺では長居を避けるのがセオリーだ。


「……諸兄、気を落とすな。当初の目的は達成している」


 誰にでもわかる強がりを、捨て台詞にして踵を返す。

 結界を怨めしく睨みつつ、荒れる兵士たちは肩を落とし、オーク共を怨めしく睨んで、シエラたちと合流した。

用語解説


狂化

 立体旗ホロフラグの戦意高揚効果よりも、さらに劇的に戦闘意欲を高める魔法。ただし、理性を失うほどの効力は、実地での危険が大きく、国家単位での使用は条約で禁止されている。


輝金属ききんぞく

(まだ細かくは解説しませんが、本作の重要な要素なので覚えておいてください。テストに出ます)


グラドーの森の禁域

 オーク以外の知性体が、侵入不能になる謎の領域。この領域のため、オーク部族が拠点を作ることが絶えない。探査が不十分のため、お宝が眠っているという噂もあるが……調査隊が行方不明になったり、記憶喪失に陥ったりと、危険も多い。なぜこのような領域があるのかは不明。

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