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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第六章 聖歌公国・前編

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歌姫の銅像

前回のあらすじ


 異世界移民計画について、経緯から今に至るまでをルノミから聴取を終えた。やって来た神の詐欺めいた気配と、ルノミ本人の想定外。裏があったのか、それともトラブルか……迷う二人の目線に『二人とも』記憶している人物の像が映る……

 聖歌公国首都・ユウナギの一角――『中心街のポート』より、五分ほど歩いた距離だろうか? そこにはもう一つ大きな広間がある。

 ポートから太い道路で繋がっており、視力の良い人物なら、うっすらと影を見る事も出来るかもしれない。それほど大きく、立派に作られ、街の中央に鎮座する銅像は、一人の女性を祀っていた。


「あの人……くそ、名前が思い出せない。でも、見覚えがあります。第一陣にいた人です! 有名人だったような……」

「…………」


 興奮気味に、憑依型ゴーレムのルノミが話す。駆け寄る彼の背中に続き、晴嵐も動悸を抑えて歩み寄った。

 ルノミに見覚えのある人物、その銅像の人物に――晴嵐も間違いなく覚えがある。

忘れる訳がない。何せその人物は、晴嵐が一度目の死に際に見た幻影。あの滅びた世界で死を迎える際に、晴嵐を看取った幻影の人物と、同じ姿をしていた。


「えぇと何々……『歌姫の銅像』? この人が……?」

「『聖歌の歌姫』……」


 千年前の戦争……『異界の悪魔』・『欲深き者ども』との戦争で、バラバラだったユニゾティアを纏め、連合を作り上げた英雄。『誰とも分かり合える』異能力を保持しており、元は『欲深き者ども』と同じ境遇の人物だったとされている……

 こんな、こんな偶然と符号があってたまるか。胸の内に走る衝撃を必死に抑え込みつつ、晴嵐はルノミより前に出て、銅像の近くにある解説を探す。ほどなくして見つけた石板にかじりつき、内容の理解に全神経を注いだ。


『歌姫の銅像』


 この銅像は、千年前の五英傑……『聖歌の歌姫』様を祀った銅像です。

 彼女は千年前、別世界からやって来た人々の一団でした。最初こそ穏便に交流が始まりましたが、時間が経つにつれその多くは『測定不能の異能力』を使い、己の欲望に生き、ユニゾティアを破壊せんとしました。

 しかし、彼女とミノル、一部の『空から降りて来た人々』は、自分の故郷の人間とたもとを分かちます。自分たちの異能を、ユニゾティアのために用いたのです。


 特に『聖歌の歌姫』の異能は、未来を左右したと言える程の成果をもたらしました。当時のユニゾティアは異種族間での争いが絶えず、この世界の覇権を握るべく、異種族同士での戦争の準備まで進んでいました。

 ですが、歌姫様の能力――『他者と分かり合える異能』の力のお蔭で、にらみ合い、争いを続けていた『ユニゾティアの種族たち』は、一つにまとまることが出来たのです。過去の禍根もありました。許しがたい事もありました。それでも……今は、この世界を守る為に、一つになって戦うべきだと、歌姫様はこの世界の皆に訴えたのです。


 かくしてユニゾティア連合は結成され――長い長い戦争と、多数の犠牲の上に『欲深き者ども』を打ち滅ぼす事が出来ました。彼女は力を無理に使いすぎたのか、戦争終結一年後に命を落としてしまいます。

 しかし、世界の神たる『ユニティ』は『聖歌の歌姫』に深く感謝していました。彼女の魂を拾い上げ、神側の世界に召し上げる事にしたのです。

 もちろん……ユニゾティアの人々も、彼女の事を忘れません。『聖歌の歌姫』を五英傑として祀り、そして彼女への感謝と信仰心はやがて『聖歌公国』を作り上げるに至るのです。


 なお……聖歌公国首都・ユウナギの名は、彼女の名前が由来となっています。

『聖歌の歌姫』様の本名は……『ミホ・ユウナギ』だそうです。彼女はこの世界に来る前から、有名な歌い手だったそうですよ。今も彼女の歌は人気です。良ければオルゴールなど、お土産にどうですか?



 すべてを読み終えた晴嵐は、慄然と感嘆を同時に味わっていた。顔を上げて、深く呼吸を繰り返していた。

 この衝撃を、どう例えれば良いのか分からない。遥か昔に好いていた、平和な時代に愛でていた存在が、知らぬ内に有名人になった感触だろうか?

 いいや、そう単調なものでもあるまい。何せ状況は不明瞭に入り組んでおり、晴嵐もすべての謎を解いたとは言えない。


 しかし一つだけ明確なのは……『晴嵐が死に際に見た、彼が持っていたオルゴールの歌い手の女性は、千年前のユニゾティアに来ていた』事。

 名前を忘れてしまったルノミも、遅れて内容を理解し((?_?))と顔を表示させて震えた。


「どういう……ことだ……? なんで……なんで千年前に転移しているんだ!? どうして僕だけ遅れているんだ!? それに何なんですこの記述……! 何が……千年前のユニゾティアで、一体何があったんだ!?」

「ルノミ落ち着け、街中じゃ」

「っ……す、すいません」


 完全に取り乱したルノミを、どうにか晴嵐は落ち着かせる。まだ動揺が抜けきらない金属の身体に、晴嵐はそっと一つ提示した。


「どうやら――お前さんの知っている状況と、千年前のユニゾティアで起きた事には、何らかの因果がありそうじゃな」

「……………………なんで、そんな事に」

「分からない。……その様子じゃと、歴史のお勉強はまだか?」

「……はい。日常生活に慣れる方が先でしたから……」

「なら丁度良い。後日わしが、お主の歴史の授業を受け持とうか? 下手な奴よりは詳しいつもりじゃ。わしは地球の痕跡を探して、史跡を巡っておるからの」


 薄々今まで感じていた事……千年前のユニゾティアと、地球の接点。

 そして同じ感触を……いや、晴嵐以上に動揺を見せているルノミは、間違いなく真実に近い位置にいる。となればもう、疑いようがない。このゴーレムの中身は『地球人』と断じていい。

 今日は時間を使い過ぎた。それにお互い、見えた真実に動揺している。晴嵐も整理する時間が欲しい。だから『後日』と提案した。


「わ、わかりました……お願いします」

「……うむ」


 そうとは知らず……と言うより、真実に打ちのめされて、それどころではないルノミ。

 もうすぐ『千年前の真実』の一部が、明らかにされようとしていた。


歌姫の銅像


五英傑・聖歌の歌姫を祀った銅像。首都『ユウナギ』の名は彼女から取った物。晴嵐は『死に際に見た幻影と同一人物』であり、そしてルノミにとっては『異世界移民計画・第一陣にいた人物』でもある。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人格情報って在るやね、当然。 てか、流石に神々?の実利を掛けた闘争(娯楽)だったりしたら過去から連綿と続く両世界の人類?は胸糞所じゃないわなぁ… 何つうか、こうダラダラと感想?所感?(駄文…
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