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終末から来た男  作者: 北田 龍一
第五章 戦争編

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第五章 ダイジェスト・3

 おっかないカカシ役として、国境周辺の見張りを続ける晴嵐。古今東西スパイや有効で、ポートを潰された所で、情報の収集は必須事項だろう。同時に、防止するのも戦局を左右し得る要素と言える。だから傭兵という戦地の雑用係たちは、国境の取り締まりに駆り出されていた。

 逃げようとしたエルフをぶん縛った亜竜種が配置に戻り、見張りを続けていた晴嵐と合流する。意外とお喋りなのか、とっ捕まえたエルフの話を彼にも愚痴った。

『なんか怖いし面倒くさいから』なんて理由で、正規の手続きを踏まずに脱しようとしたらしい。それが事実ならアホだと呆れてしまう。検問が厳しくなるのは目に見えており、余計な仕事を増やさないで欲しいとぼやく。エルフの若者が『緑の国』内部で肩身が狭いのを知っている晴嵐だけど、この行動は擁護しきれなかった。スパイ取り締まりに躍起になっているのだから、ややこしい事はやめてほしい。

 反対側の『緑の国』でも、似たような事が起きているのだろうか? そんな問いに晴嵐は、城壁都市を抜けるのは難しいだろうと答える。一瞬スパイを疑われたが、少し前まで観光した際に、他種族への排他的感触にうんざりしたと答えた。


 実際の所『緑の国』でも出国に制限かけられ始め、審査も厳しくなりつつあった。城壁で外周を取り囲まれていて、抜け道が無いかと思いきや……あるところにはあるらしい。手引きをするのは悪ガキ……そう、晴嵐が関わった裏路地少年少女達である。他言無用の裏取引を進めて、陸での行動に難儀する『人魚族』の国外脱出への手引きをしていた。

 水中を主な生活圏とする彼らは、陸上での移動に難儀する。それで国外への移動が遅れたらしい。水路もあるけれど封鎖済みで、非公式な手段に頼るしかなくなったようだ。対価をしっかりいただきつつ、壁の中の隠し通路を解放して無事に脱出させる。

 その中には……すっかり大人びた様子のテグラットの姿もあった。彼女はある事件以降、緑の国の吸血種たるムンクスと繋がっており、必要な人間の国外脱出を密かに仲介しているようだ。悪ガキの中には、以前起きた事件の際に吸血種の少年に借りを作ったと感じる者もいる。その時に関わった晴嵐の現状も、彼らなりに気にしているようだった。


 そしてもう一つの国境……ホラーソン村のエルフたちにも決断の時が迫っていた。所在の確認できるエルフの若者たちを集めて、兵士長のシエラが改めて現状を説明する。これ以降の出国と行動に制限をかける、かけざるを得ないと、人情派の兵士長が申し訳なさげに伝えていた。

 根耳に水だったのか、それとも無関心だったのか……中にはしどろもどろになるエルフもいる。勢いに任せて飛び出した者も多く、まともに情報を取れずに行動も遅れ、課されてしまった制限に戸惑っているようだ。

 一応はポート越しにメッセージは送信されていたから、知らぬ存ぜぬでは通らない。けれど全体に当てたメッセージをうっかり見落とすのもありがちだ。兵士長のシエラは同情しつつも、国に所属する人員として甘い顔は出来ない。板挟みになる中、別の女性……テティ・アルキエラが最終便を用意したとのこと。これが本当に本当の最後だという。

 ただ、その物言いは厳しい。人情派のシエラが反論するが、テティの現実を見据えた言動にも理がある。気まずい空気の中、改めてエルフ若者たちに選択を迫る。ここで故郷に戻るか、制限を課されながらも村に残るか……


 いよいよ明日、ホラーソン村から『緑の国』への最終便が出る。残るべきか、祖国に戻るべきかを村の宿屋兼酒場である『黄昏亭』にて話し合う。戦争前の国境な事もあって、宿に客がいないおかげで実質貸し切りに近い。エルフのハーモニー・ニールが宿泊する施設な事もあって、亭主は快く場を提供した。

 けれど口数は少ない。若者たちは迫る期限に……まだ決断を渋っている。が、責めるのは酷だろう。戻るにしても、留まるにしても、何らかのデメリットやリスクが目につく状況だ。そのどちらかを即座に選択できる人間の方が少数と言える。そんな中、村での暮らしが長いハーモニー・ニールの決断は早かった。

 ここに愛着があるのもそうだが……猟師と名乗った晴嵐が城壁都市レジスの様子を伝えていたのが大きい。特に変化の無い空気を嫌った彼女は、彼から送られたメッセージを元に判断を下す。それを皮切りに情報共有が始まった。

 つい最近起きた事件……吸血種のレリーが陰で行っていた『血の搾取事件』が公になった事項にも話題が触れる。その直後にこちらに来た若者エルフ二人組、シリアとカーチスも意思を表明した。

 何か重い事情をうかがわせる彼らは、ほんのりと晴嵐と関わった人物でもある。親と完全に決別した彼と彼女も、ホラーソン村に残る気概らしい。そうした行動を皮切りにして、他のエルフ若者たちも自分自身での判断を始める。気前の良い酒場主人の差し入れを味わいつつ各々に決行した。

 ――そしてその一週間後、ついに戦争が始まる事になる……

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